堕ちた現実は巻き戻せますか?
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邪魔が増えたとしか言い様が無い。
マキナの隣を占領している彼奴も、一等可愛がられている彼奴も、元から仲間以外の関係では邪魔以外の何物でもなかった。
が、今になってあの踏み台でさえ壁になろうとする。そろそろ耐えられないと思っていたんだがな。
「レヴィア……レヴィア? 珍しいですね、ぼーっとしてるだなんて」
「ん、ああ、まあな。考えていただけだ」
「何をですか? ……って聞いても教えてくれませんものね」
「お前は俺の事をよく分かっている」
嘘。お前は俺の事なんか関わるまで微塵も考えていなかっただろう。俺が本心を剥き出しにして、やっと見てくれたくらいだ。
こちらの気も知らずに柔らかな笑みを浮かべて、まるで俺のことを知り尽くしたかの様な立ち振る舞い。
――嗚呼、駄目だ。どれだけ否定的なことを考えても、マキナの嫌な所を探しても、結局好きなのだから。
「そんなことないですよ、そりゃあノア達のことは知り尽くした感はありますけど」
「そうだな、お前らはずっと昔から繋がっていた感じだった」
「だから、レヴィアのことは知りたい、大切な人のことは知り尽くしても飽きないでしょう?」
そういう所がいけないと何回言ったら分かるのか。お前はそうやって、俺が望んで欲して仕方の無いことを的確にくれる。
毒としか言い表せないその言葉に、俺はとっくのとうに骨の髄から脳髄まで侵されている。気がついたら依存さえしていた。
「マキナ様、本当の本当に離れないで下さいね。離れたら鎖にでも繋ぎますからね」
「ヘライト様ばかりそれでは不公平なので、私は軟禁でも」
「絶対離れないからそうなるのは絶対無いよ」
え、と残念そうな顔をする二人。そもそも俺が許さないからな、その時点で確率なんか無い。
最初は俺だけの妹として独占していたはずが、俺だけの一人にしたいと願った瞬間に邪魔が入った。この世に神がいるなら殴りたいくらいのな。
「シアちゃんもきっと疲れているだけだよ、さ、行きましょう!」
「はい、マキナさんにしっかりついて行きますね!」
疲れている? 奴が疲れている訳ないだろう、だから演技という訳でもない。そう、アイツも今まで引っかかっていた物が無くなり本心だけになったのだ。
俺達からすればどんな敵よりも恐ろしくなるであろう。何せ同性と言うだけで何しても「仲良し」にしか見えない。
「あ、勿論、ヘライト達も構いますから。ヘライト、泣かないでね」
「うっ、るさい……です」
「ヘライト様の涙腺は日に日に脆くなってますからね」
「ノアもだよ、だから仲良くして」
俺を除いた愛しそうな会話。
途端に、内蔵の中心から胃や心臓の裏側にかけて何かが流れる。息が少しだけ苦しくなって、むず痒い気持ちになる。
いつもならこれだけで終わる嫉妬だったのに。
何故か今回は黒い気持ちが治まらない。寧ろ肥大化して行って、どうしようもないものへと変貌を遂げた。
これは一番駄目なんだ。これだけが、あの二人との唯一の違いだったのに。
「……レヴィアも、私にとっては大切で必要な人……って、これ、何度も言ったか。でも、言い足りないくらい愛してますから」
心が肥大化した歪な愛に溺れた。救いようがない、抗ったって仕方ない。これで俺も二人と同じになってしまった。




