弱気って山の麓に捨てられますか?
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「誰につけられた」
「虫刺されじゃないですかね」
「ここら辺に虫は出ないぞ」
「どこかに打ったとか」
「そうだったらもう死んでるだろう」
「口紅が着いたのかも」
「お前は化粧道具は持ってないし、そういうのはしない奴だった」
「する奴になったんですよ」
「嘘だな、あれだけ面倒臭いと言っていたのに」
「さあせん」
この人に嘘は通じない。心に刻んでおこう、今後何かの役に立つかもしれない。
ノアの仕業だと分かっているであろう兄様は口元に微かな笑みを浮かべ、目には暗闇を映している。
こんなの、初期装備でラスボスと対峙している気分だ。
「誰がつけたかなんて大体の予想はつく、それよりも経緯だ。いつの間にそんなに親密になったのか」
「レヴィア、あの、では……レヴィアも……つけたら? なんて」
あの真面目兄様のことだからこんなことする訳――。
と思っていたせいなのか、前を向けば結構やる気な兄様の顔。あれ、予想と違うな……これも心に刻んでおこう。
「腕を出せ」
「どっちの」
「どちらでもいい、早く出せ」
あれだけやる気な割には脳の隅っこに恥ずかしさが引っかかっているらしく、頬に薄らと朱が走っている。
それが何でか無性に可愛く思えて、つい笑ってしまう。怒られるから直ぐに止めるけど。
「え、本当にやるんですか」
「ああ、そうでもしないと……」
最後まで言わずに、左腕に血色のいい唇を押し当てた。
そこまではよかった……のだが、ノアよりも強く後に吸い付いてくる。突き刺すような痛みが腕にきた。
唇が離されるとそこにはくっきりと赤い跡がついていた。これは暫く消えそうにないな。
「結構……本気ですね」
「駄目だったか?」
「いや、こういう面もあるんだなあと」
「兄妹の関係は複雑だからな、何も出来ない」
何もできないのにこれはいいのか。
恋人繋ぎはやらないけど人前でキスはできるようなものだよね、きっと。そうだよね、それが挨拶の所だってあるんだもんね。
「せめて、これくらいは許してくれ」
「言っていいか分からないけど、最近弱気ですね」
「焦っているだけだ。ゆっくり溺れさせてやろうと思っていたのに」
ミイラ取りがミイラになるってやつ? 違うか。
とにかく、私は跡が消えるまで長袖の服しか着ない。それしか着れない。今の所、私が一番恥ずかしがっている。
「……ああ、でも……捨てないでくれ」
今の所、兄様が一番弱気になっている。




