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6 セオドア王子様の訪問…そして断れないヤツ

「お嬢様、お休みのところ申し訳ございませんが、緊急のため失礼いたします」


 アメリアの安らかな眠りはドンドンと響くノックの音で不快に破られた。

 慌ただしく入室してきたイオナや他のメイドたちが、ベッド上のアメリアを起こすと髪を整え、夜着の上にレースのケープを羽織らせ始めたのだ。


「… どうかしたの? どなたかお客様かしら…?」


 まだ目覚めたばかりで目が覚めていないアメリアはされるがままになっていたが、イオナの『セオドア王子様がお見えです』の一言に驚き、一瞬で眠気が吹き飛んだ。


「今は客間で旦那様と奥様がお話されていますが、お嬢さまのご意思も確認しておきたいと旦那様がおっしゃっておられましたから、直ぐにこちらにお越しになられるかと…お支度が整いましたわ」


 イオナは満足そうにアメリアの全身に目をやるとベッドの羽毛布団を掛けなおしてくれる。ベッドに座った状態ではあるが、なんとか体裁は整えられたようだ。

 セオドア王子様… 私に何のお話があるのかしら…? 王宮図書館で無作法に倒れてしまったことへのお咎めだったらどうしよう…。

 不安ばかりが膨らんでいく、その時『コンコン』とノックの音が響き扉が開かれた。


「こんにちは。アメリア・エゼル・グレイソン嬢、お加減はいかがですか?」


 セオドア王子様はにこやかに入室してくると、ベッド脇の椅子に座り足を組んだ。

 元気そうではあるが、昨日セオドア自身も倒れたことを思うとカラ元気に見えてくる。今も頬はバラ色に上気し、見つめてくる瞳も潤んでいる。 …きっと熱のせいだろう。


「昨日、私の目の前で倒れられた時には本当に心配しました。今はお体が辛いということは無いですか?」


 口調からも本当に心配してくれていたことが伝わってくる。それよりも …セオドア王子の方が、いつもの状態ではない。

 もしかして具合が悪いのにお見舞いに来てくれたのではないか?昨日目の前で倒れたばかりに、自身の不調を隠してお見舞いに来てくれたとしたらあまりに申し訳ない。


「セオドア様、昨日は大変なご迷惑をお掛けし申し訳ございません。あの… 王子様は今もご気分が優れないのでは? ご無理をなさらないでください。私はもう大丈夫ですから」


 アメリアが必死に訴えるとセオドアは益々顔を赤くして嬉しそうにほほ笑んだ。


「私のことを心配してくれるのですね。やはり貴方しかいない… 決めました」


 何を? まあ、幼馴染であり臣下の娘としては心配していますけれど…?

 首を傾げるアメリアを余所に、セオドアはいきなり片膝を床につくとアメリアの右手を取り甲に口づけた。


「私、セオドア・フォン・オールヴァンズはアメリア・エゼル・グレイソン嬢に婚約を申し込みます」


 え… 何言っちゃっているのですかこの王子様は…??

 突然の求婚にアメリアの脳内はパニックに陥っていた。


「あの… 私魔力もありませんし、王家と婚姻を結ぶなど到底許されることでは…」

弱弱しく抵抗を試みるも、お父様とお母様の間でもすでに決定事項らしく嬉しそうに頷いている。あ… これ、断れないやつだ。


「昨日、私も自身の魔力暴走のせいで危険な状況だったのです。あのままでは周りを巻き込み、王宮を壊滅させていたかもしれない… 貴方と王宮図書館で出会ったとき、私の精神はギリギリの状態だった。」


 王宮図書館に飛び込んできたときですね? 確かにあの時の王子様は普通じゃないと感じました。

 …でもそこまで危険な状態だったとは思ってもみませんでしたけれど。


「その時、貴方は危険も顧みず私のことを抱きしめ暴走を食い止めてくれた。その身をもって魔力を受け止めてくれたおかげで私は助かり、代わりに貴方が危険な状況になってしまった… それを知ったとき、本当に迂闊だったと自分を呪いました」


 …確かに死にかけはしましたが、そんな大事になると思っていませんでしたから。

 それに人の魔力を吸収できるなら、とっくに魔力0のダメ令嬢では無くなっているはずですが? 何か勘違いをなさっているのではないかしら…?


「私を救い、王宮の危機も救ってくれた貴方の命がけの行動の前には魔力の有無なんて小さな問題です。私の命を救ってくれた貴方は、幼いながらも称賛されるべき人物であると国王もこの婚約を既に承諾しています。勿論グレイソン公爵にも承諾はいただきました。あとは貴方に良いお返事を頂くだけ…。

 私 セオドア・フォン・オールヴァンズは貴方を生涯愛し続けることをここに誓います。婚約していただけますね? 」


 えええ… そんなにキラキラした瞳で見上げられても、王妃になるの嫌なんですけれど… お断りしますとは言いづらい雰囲気だ。

 …ああ、お母様もお父様まで涙ぐんでいる …イオナ、あなたまでウットリした顔でこちらを見ないで… 本当にどうしよう。

 途方に暮れているとベッド脇の小机… そこにある「モノ」と目が合った。

 確か、あそこには謎の赤い卵のような物を置いておいたはず。周りには殻のような破片も飛び散っているし…。

 しかし、そこに卵は無く、赤い色をしたヒヨコのようなモノがデンっと座っていたのだ。しかもふてぶてしい顔つきでこちらを睨んでいる。

 あれは… 何? ヒヨコ…? でも赤い色をしているし、全体にぼうっと光っているし、何よりヒヨコってピヨピヨ鳴いて動いているわよね…?

 動揺しつつもヒヨコから目が離せないでいると、ヒヨコがいきなり口… クチバシかしら? を開いて「おい! そこのお前、俺様が見えているんだろう?」としゃべったのだ。


 このヒヨコ… 人語を話している⁉ どういうことなの??

 色々なことが同時に起こり、アメリアのキャパシティはいっぱいいっぱいだった。

 そこに「おい! どうなんだ! 本当は見えているんだろう?」なんてヒヨコに男性の野太い声で恫喝されたのだから、前後の話も忘れて「はい‼!」と返事してしまったことも無理はない。

 …そう、アメリアは返事をしてしまったのだ『はい』と…。


 そのとたん、部屋中から『おめでとうございます』と盛大な拍手が贈られた。

 しまった… と思ったときには手遅れだったようで、周りは祝賀ムードに沸いている。


「婚約を受けてくれてありがとう。ずっと大切にするからね」


 嬉しそうに笑うセオドア王子に、もう一度右手の甲に口づけされ、アメリアは婚約を受けてしまったことをどこか他人事のように悟ったのだった。


やっと王子様が出せました。一応ヒーロー…?の予定です

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