出発
奴隷を買った次の日。
雷は迷宮都市建築に必要な物資、その他奴隷たちの装備や服などを買いに行った。
お金は未だ28億以上残っていたので、高級、とまではいかずともそこそこに良質な物を買い与える。
大体の買い物は午前中に終わったので、雷は明日出発する旨を伝えて、その場で解散。1万ほどのお小遣いを与え、自由時間とした。
昨日の態度を取った人物とは思えないような対応に、奴隷たちは皆目を丸くしたが、最後になるかもしれない自由な時間を精一杯満喫していった。
一応スミギナが、
「おいおい、俺達を自由にしていいのか? オブザ様。もしかしたら逃げ出しちまうかもしれねぇぞ」
と少しへらついた表情で聞いてくるが、
「隷属魔法をかけてある。もしこなければ一生苦痛を感じながら生きることになるだろう。それに奴隷という身分では、主人がいなければ公共施設の利用すらままならん。お前たちは戻って来るしかないんだよ」
と答えればスミギナが「……そうかよ」と言い、町の中に向かった。
雷は、昨日のことがあったのによくそんな態度が取れるな、とある意味スミギナの度胸に感心するが、こんな時でも雷にはやることがある。
荷物を運ぶための荷馬車の購入。
現在の香辛料や砂糖の相場調査。
ダンジョンと迷宮都市の情報のばら撒き。
そして念のためロービン王国の動向の調査といった、奴隷がいないときの方が都合がよく、今後のために必要なことをして、二日目を終えた。
そして三日目。
時刻は午前九時で、俺達は今、ラビリンスタウンの門の前にいる。
そこにいるのは俺、奴隷たち、そして冒険者ギルドのヴァネッサとキャップ帽を目深に被った人物が一人いた。勿論鑑定する。
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種族:人間
名前:ミュディガ・ジークリンス
性別:男性
Lv:88
HP:??
MP:??
STR:??
GRD:??
AGI:??
DEX:??
INT:??
MPR:??
スキル
偽装
称号
元冒険者
ギルド職員
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偽装
鑑定を無効化するスキル。
指定したステータスを隠すことができる。習得していないスキルを表示させたり、本物以上のステータスを表示することができない。上位鑑定以上の鑑定スキルに見破ることが可能。
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見た目は線が細く、あまり荒事に慣れていなさそうな美少年だが、中身は全然違うようだ。
纏う気配もメフォール、スミギナとは比べ物にならない。今の俺が全力で戦っても勝てないかもしれない。
まさかここまでの実力者を出してくるとは思わなかったが、特に問題はない。
鑑定を終えるとヴァネッサが挨拶してくる。
「おはようございます、オブザさん。こちらがあなたの迷宮都市に向かう監察官、ミュディガ・ジークリンスです」
「これからよろしく~」
ミュディガの間延びした声を聞いて、ヴァネッサはため息をつく。前の審査の時といい、この人本当に苦労してそうだなぁ。
「……少し不安になるかもしれませんが、これでも彼は元Aランク冒険者です。滅多に不覚を取るようなことはないでしょう」
「そうか、だがミュディガだけで大丈夫なのか? 人手的な意味で」
「ああ、それについては後日、ギルド職員を数名向かわせます」
「どうして一緒に来ないんだ? 昨日確かにダンジョンは確認されたと、他の冒険者ギルドから通達があったんだろう?」
ちなみにその冒険者ギルドはアコアンやメフォールが所属していたギルドだ。昨日出発の時刻等を伝えに向かった時に確認が取れたと言っていたので、俺が言っていることは本当だと伝わったはずだが。
「私たちもダンジョンの存在は疑っておりません。ですがその規模や内容といった詳しい調査が済んでおりませんので、どのくらい人材を派遣すればよいか分かっていないのです」
「なるほどな」
「オブザ様! 準備できましたよ!」
ヴァネッサと話をしていると、荷馬車の準備をさせていた奴隷から準備完了の報告が届いた。
俺は奴隷に了承の意を示すと、ミュディガに確認を取る。
「ミュディガは馬か何かあるのか? そこそこ距離があるし、ないなら荷馬車に乗せてやってもいいが」
「そこは大丈夫~。一応僕も馬持ってるし~」
「そうか」
「ではこれでお別れですね。幸運を祈ります」
「ああ、またな」
ヴァネッサに別れを告げ、俺達は俺のダンジョンに向かった。




