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冒険者ギルドへ 4


「これで審査は終了ですが、オブザさんはこれからどうしますか?」


 一息ついたヴァネッサがそう聞いてくる。

 俺は苦労人と勝手に印象づけたヴァネッサを見ながらこう答えた。


「奴隷を買いに行こうと思っている。それが終われば必要な物を買ってダンジョンに出発する予定だ」


「なるほど。では準備が出来ればこちらに声をかけてくれると嬉しいです。あなたの迷宮都市の監察官を共に向かわせたいので」


「分かった」


 会話が終わると俺は席を立ち応接室のような部屋を後にした。


 =========


「ありゃあ、何かあるな」


「そうですか? 私には至って普通の愚かな冒険者に見えましたが」


 私、ヴァネッサはギルドマスターが言った言葉に対してこう返事をした。


 私があの冒険者に対して抱いた印象は、一言で言うと阿呆だ。

 確かにあの人物の冒険者としての限界はこの辺だと思う。無論Cランクまで登りつめたことを見れば人並みの人物よりも強いのだろう。


 だがあの冒険者には所謂、というものが感じられない。

 そういう冒険者はBランクから上に上がることはほとんどない。


 故にオブザが言っていることは正しいと思う。

 私が阿呆だと思ったのは出来たばかりのダンジョンで迷宮都市を創ろうとしている点だ。


 確かに迷宮国バルバで未だ未クリアの6つのダンジョンの迷宮都市はかなり発展していて、その領主代行にもその恩恵がかなり来ていることは間違いない。


 だがそれはほんの一握りのことだ。

 新しいダンジョンそのものは二か月に一個単位で見つかっているが、そのほとんどがおおよそ3年以内に討伐されるのだ。


 魔剣も手に入れたのだから、その金を使って裕福な暮らしをすればいいのに、なぜ新たな権力を求めるのか。私には愚かとしか思えない。


 だがギルドマスターが抱いた印象は違うようで、私を見ながらこう口にした。


「そりゃ俺だって直に会ってなければヴァネッサと同じことを思ったかもな。だが俺にはどうもあのオブザってやろうには違和感を感じた」


「……違和感、ですか?」


 そんなものあっただろうか。


「まず第一にどうして迷宮都市領主代行になりたいと思ったと思う?」


「それは新たな金や権力が欲しかったからじゃないですか?」


「新たな金が欲しい? そんなに金を集めて何をするってんだ。30億リエルもありゃ普通に暮らす分には贅沢しまくっても余るほどのレベルだぜ。権力? 領主代行になったって貴族様みたいな権力が手に入るわけじゃねぇぞ」


「それを理解していないだけでは?」


「その可能性も無くはないが、領主代行はどういうもんかを知ってから普通来るだろ。思いつきでやることじゃねぇんだぞ。それにオブザにはそういう金や権力に狂ったようには見えなかった」


「……では、彼はなぜ領主代行になろうと言い出したんですか?」


 私が意を決して聞くと、ギルドマスターはため息をこぼしてから私に諭すように答えた。


「それが分かってたら苦労しねぇよ。分からねぇから違和感なんて抽象的な言葉で表したんだろうがよ。とりあえずオブザの監視にはミュディガの奴をつけとけ」


「……ミュディガですか」


 正直顔を合わせるのも嫌な相手だ。

 Lv80を超えているだけありかなりの実力者で、元Aランクの冒険者なのでダンジョンにはかなり慣れている。


「お前があれを嫌いなのは知ってるが、この件に関しちゃあいつが適任だ。それじゃあ伝達頼んだぞ」


「……分かりました」


 私がしぶしぶ了承の意を伝えると、ギルドマスターは部屋を後にした。


 =========


 冒険者ギルドを出た俺は、巷で一番と言われている奴隷商へと足を向けていた。

 あの後ギルドの職員が紹介状を書いてくれたおかげで、奴隷商の店長が俺の前に来ている。


 ここで奴隷について少し説明しよう。


 奴隷とは隷属魔法をかけられた人物のことを指す。

 奴隷は隷属魔法で自由を奪われ行動を制限され、持ち主に反抗することは出来ない。

 奴隷には人権が無く、物として扱われる。

 奴隷は契約主が死ぬと、隷属魔法で共倒れするようになっている。


 以上のことから奴隷とは人の形をした物として扱われることが多いが、奴隷そのものがそこそこ高いため、使い捨ての道具として使われることは少ない。


 やはり奴隷の主な用途は、仕事をやらせたり、性奴隷にしたりなどといったものだろう。

 ちなみに俺は仕事をやらせるつもりだ。


 俺の目の前にいる奴隷商の店長が会釈をしながら自己紹介をする。


「私はこの店の店長のクレムと申します。以後お見知りおきを」


「冒険者のオブザだ。奴隷を買いに来た」


「はい、どのような人物をお求めで? ちなみに予算も聞きたいのですが」


 クレムは俺にそう尋ねてくるが、その目は俺を値踏みするような色を浮かべている。

 俺は龍硬貨を2枚クレムの前に出してこう言った。


「これだけ出せる。欲しいのは内政が出来る者、女で見た目がいい者、力仕事が出来る者、そこそこ腕がたつ者、このくらいか」


「……なるほど。人数はどのくらいですか?」


「内政が出来る人物は1人でいい、5千万まで出す。それと腕がたつ者だがBランクほどの実力が好ましい。これは1億出す。力仕事が出来る者は5人ほど。女は3人ほどでいい。5百万ほどまで出すから適当なの見繕ってくれ」


「了解しました。しばらくお待ちください」


 そう言って少しの間クレムは席を外し、しばらくして戻ってきた。

 その横には全部で10の奴隷が並んでおり、その全員に奴隷の証である首輪がついていた。


「では紹介します。まず内政が出来る者とのことですが、これに関しては没落貴族の娘を手配させていただきました。若くて女ですが中々に優秀で、更には容姿も優れております。値段は4千500百万です」


「……イネアです」


 イネアと名乗った少女は10代後半ほどだと思われる顔立ちで、髪は紅葉のような色で、顔立ちも整っており、確かに容姿も優れていた。

 正直見た目はどうでもいいが、まあ優れていて損はないだろうと思いつつ、クレムに確認をとる。


「本当に仕事は出来るのか?」


「当店の名にかけて誓いましょう。私もギルドからの紹介に不良品をあてがうつもりはありませんよ」


「……そうか。ならば他の奴隷の紹介も頼む」


「ええ、次に腕のたつ者とのことですが、これには元Bランク冒険者のスミギナを手配しました。種族はエルフでLvは56のオールラウンダー型です。魔法は炎、水、風の三属性を操れます。値段は9千8百万ほどです」


「鑑定してもいいか?」


「構いませんよ」


 許可も取ったので俺はスミギナを鑑定する。


 =========


 種族:エルフ

 名前:スミギナ

 性別:男

 Lv:56

 HP:1960

 MP:1524

 STR:312

 GRD:260

 AGI:292

 DEX:276

 INT:362

 MPR:326


 スキル


 魔法槍術

 魔法棒術

 魔法付与

 戦闘術

 炎魔法

 水魔法

 風魔法

 鑑定

 偽装


 称号


 奴隷

 元冒険者


 =========


 魔法槍術


 槍術、並行詠唱、の統合スキル。


 =========


 魔法棒術


 棒術、並行詠唱、の統合スキル。


 =========


「偽装は解かせておりますので、偽りのステータスが表示されることはありません。ご安心を」


 クレムがそう付け加える。


 中々悪くない。

 そう思った俺はクレムにこう言った。


「悪くないな。これでいい」


「ありがとうございます」


 クレムはこう言って他の奴隷を紹介し始めた。

 他の奴隷は可もなく不可もなくといったある程度こちらの要望を満たしている者で、値段は全て400百万だった。


 俺は全て即決で金額を払った。

 値段は全てで1億7千500百万だったが、値引きしてくれて1億7000千万となった。

 クレムの中では俺は上客認定されたのか、そこそこおいしい菓子とお茶を出され、少し話をしていた。


「いやはや、あなたとは今後とも付き合いを続けていきたいものです。また奴隷をお求めの時は是非ともうちの奴隷商にお越しください。安くしますよ」


「ああ、いい買い物が出来たよ。それじゃあな」


 俺はそう言って奴隷を連れ、奴隷商を後にした。

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