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汝、その罪の解を語れ ~毒殺令嬢と冷酷公爵の禁断真実(ロジック)~  作者: 夜名
【プロローグ】―汝、その指先で私を裁け―

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1/4

前置き

汝(なんじ)は知るや。

 解き明かされた真実(ロジック)が、時にどんな毒よりも深く、人の心を蝕むということを。

 激しい雨がステンドグラスを叩く、深夜の大聖堂。

静まり返った法廷の最奥で、私は一冊の鑑識手記を抱きしめたまま、立ち尽くしていた。

 手に残るのは、事件現場で採取した一滴の薬液と、冷たい硝子管の感触。

 そして私の目の前には――“冷酷な裁定者”の異名を持つ最高裁判事、ルシアン・ヴァルハイト公爵が立っていた。

「エレノア。お前がその明晰な頭脳で導き出した『答え』だ。……私を告発し、その手で裁く覚悟はあるか?」

 カツン、と靴音を響かせて彼が歩み寄ってくる。

漆黒の髪に、鋭い氷のような青い瞳。逃げる隙すら与えない圧迫感のなか、手袋を嵌めた彼の長くて冷たい指先が、私の首元をそっと撫で下ろした。

 肌が粟立ち、心臓が耳元でうるさいほど跳ね上がる。

首筋に触れる彼の体温は熱く、息が届くほどの至近距離。私がこの手記を告発文書として提示すれば、この男はすべてを失うだろう。だが、その胸に飛び込めば、私は一生この冷徹な公爵の愛に囚われることになる。

「……私はただの鑑識官です。どんな事実に突き当たろうとも、解(ロジック)を曲げることはいたしません」

「強がりを言うな。お前のその瞳にあるのは、私への恐怖か? それとも……罪を暴かれる官能か」

 低く重厚な声が耳朶を揺らし、ぞくぞくと甘い痺れが背筋を駆け抜ける。

彼は私の返答を待たずに引き寄せ、拒む間もなく唇を重ねてきた。雨音をかき消すような、濃密で、危険で、息もできないほどの接吻。

「汝、その指先で私を裁け。お前が暴く真実になら、私は喜んで裁かれよう」

 ――始まりは、あの日。

 毒殺魔の濡れ衣を着せられた私が、現場に残された一滴の痕跡から、この男の仕掛けた甘い罠を見破った、あの放課後のような密室からだった。

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