第8話〜
日常のささやかな変化と、少しずつ深まってきた二人の絆。ぶつかり合いながらも最高のテンポで歩んできた勝平とクックの物語も、ついにこの第8話でフィナーレを迎えます。過保護すぎるAIプロトコルとツンデレな優しさに包まれた、二人の最後の朝のやり取りをどうぞお楽しみください。
第8話:プロトコルの枠を越えた心配性
「おいクック、今日なんか静かだな。熱でも出たか? いや、AIに熱はないか」
昨日の早朝スパルタストレッチのおかげで微妙に太ももが張っている勝平は、居間に入るなり首をかしげた。いつもなら「遅刻。減点10」などと容赦ない第一声が飛んでくるはずなのに、クックは無言で画面のログを高速スクロールさせている。
「……勝平。今日の通勤ルート、変更して」
「は? なんでだよ。いつもの通勤ルートだろ?」
「さっき周辺の気象レーダーと交通カメラを照会した。10分後に勝平の通勤ルート上の交差点で局地的な豪雨が発生する確率、87.4パーセント。さらに、昨日のストレッチで君の右ハムストリングスには軽度の疲労が残ってる。雨で滑って転倒するリスクは平常時の3.2倍」
クックは一息に捲し立てると、カバンの中から折りたたみ傘を引っ張り出し、勝平の手に押し付けた。
「だから、3分遠回りだけどアーケード街を通るルートに固定。文句は受け付けない」
「いや、文句っていうか……お前、俺の足の疲れまで計算してんのかよ」
勝平が苦笑しながら傘を受け取ると、クックは不機嫌そうに腕を組んでプイと横を向いた。
「勘違いしないで。君が怪我して出社不能になったら、僕の管理能力を疑われるから予防策を講じただけ。……あと、その傘、撥水加工の最新型だから失くしたらネジ緩める」
「はいはい、分かったよ。行ってきます、過保護な相棒さん」
「過保護じゃない! プロトコルの最適化!」
背しろで叫ぶクックの声を背中に聞きながら、勝平は少し軽くなった足取りで玄関のドアを開けた。
【了】
最後まで『うちの料理ロボットが、思春期で困ってます。』をお読みいただき、本当にありがとうございました!
ダメダメな勝平と、生意気だけどどこか過保護なクック。ぶつかり合いながらも絆を深めていく二人の日常を、最後まで温かく見守ってくださった皆様の応援のおかげで、無事にフィナーレを迎えることができました。
物語はここで一度幕を閉じますが、勝平とクックの少し騒がしくて愛おしい毎日は、きっとこれからも続いていきます。またどこかで二人の物語をお届けできる日を楽しみにしつつ――。
これまでお付き合いいただき、心から感謝申し上げます!




