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魔王ゼアルその5

『新しい魔王は一人の同胞も殺す事無くアルヴヘイムを開放した』


 この分かり易くもインパクトのあるフレーズは瞬く間に国中に広がり、僅か十日後にはほぼ全ての国民がこの事実を知る事になった。

 総統府改め魔王城には、新しい魔王の姿を一目見ようと連日大勢の人が詰めかけ、英雄にして魔王であるゼアルの姿をこぞって探した。ゼアルもこれを好機とし、イハサとヴァルナの二人を伴って故意に衆目に晒させることで、今後アルヴヘイムがヒト族と融和していくことを印象付けていった。またアルヴヘイムの支配体制にもメスを入れると同時に、新たな部下からの大掛かりな聞き取り調査も行い、特に評判の悪かった者を放逐していくと言う行動に出た。


「ゼアル様、このように面倒なことをなさらずとも、ヒト族を一気に放逐してしまえば楽だったのではありませんか?」


 魔族であるゼアルが本来魔族のみが住む地、アルヴヘイムの支配体制にヒト族を残した事が不思議なのだろう。ヴァルナがそんな疑問を口にする。


「そうだな、だが要職についている人族を一度に放逐してしまえば、必ず機能不全を起こす。それは他でもない、魔族の為にやってはならないことだ。それに彼らの多くは本来ミッドランド人だろう。有能な人材をわざわざ返してやる必要もあるまい」

「では放逐したのはあくまで無能の者のみ、と?」

「そういうことだ」

「なるほど、御見それしました」

「ところで最近体調が良くなかったようだが、改善はしたのか?」

「いえ、残念ながらこれはそういった類のものではないんです。むしろ半年先までどんどん悪くなっていくでしょう。ですからこれから少なくとも半年、お暇を頂きたいのですが……」

「さらりと大変なことを言っている気がするが……、心身に危険はないんだな?」

「はい、以前の私であればいざ知らず、ゼアル様の眷属となった今では何も危険はないでしょう」

「分かった、ではイハサも付ける故、先にレシエに戻っていなさい。我もここでの仕事を終えたらすぐに戻ろう」

「その事なのですがゼアル様、地下牢に捕らわれていた耳長族の少女はご存じでしょうか?」


 ふとヴァルナがそんな事を言い出す。


「耳長族の少女……、確かクレアと言ったか。別に悪事を働いて捕らわれていた訳ではないのだろう? そういう者は解放していいと伝えたはずだが」

「はい、ですが本人に聞いたところ、解放されても行くあてがないと言うので、私の侍従として召抱えようと思うのですが、構わないでしょうか?」

「侍従か、そうだな、病気だというのなら身の回りの世話をする者も必要になるだろう。構わないぞ」

「ありがとうございます。ところでゼアル様、先ほどレシエに戻ると仰いましたが、ゼアル様はここに残られないのですか?」


 アルヴヘイムはゼアルの故郷であり、父ゼトの治めていた土地でもある。故にゼアルはこの地に留まるのだと、ヴァルナはそう思っていた。


「はは、確かにこの地を取り戻すことは我の悲願でもあった。状況によっては今後この地に留まることもあるだろう。だがだからといってレシエを放り出すような真似はしない。アルヴヘイムは当分の間、ロアンに代理として治めてもらおうと思っている」

「ロアンさんに……?」

「ああ、レシエとアルヴヘイムの間には結構な距離がある。気軽に行き来する事もできまい。立場や能力から考えて彼に治めてもらうのが適任と判断した」

「承知しました。では申しつけの通り、私たちは先に帰っておきますね」

「うむ、似たような事はレシエでもやっている。あの時は四ヶ月ほどかかったが、今回そこまではかからないだろう。我が戻るまでラクリエ達と共にレシエを守っていて欲しい」

「はい、ゼアル様もお体に気を付けて」


 そう言ってゼアルに別れを告げ部屋を後にする。後ろ手にドアを閉めたヴァルナは、どこか愛おしそうに自らのお腹を撫でたのだった。

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