神の文句と神への文句
3人がヨシオに近付きその姿を見ると全員が言葉を失った。
ヨシオの胴体には鉄パイプのような物が貫通しており口からは大量の吐血が嗚咽のたびに溢れ出ていた。
「うぅぁあぅっっ、あぁっ、あうぅっ、うっ、うっ、うっ!!!」
「ヨシオ君…」
「…」
「…」
3人が彼の哀れな姿を見下ろす中、ドレッドが口を開いた。
「よかったじゃねぇか、テメェ死にたかったんだろ?願いが叶うな」
「うぅっぁぅっ、あぁっ、あぁっ…」
ヨシオは何かを訴えようとしている様子だった。
そして途切れ途切れではありながらも、断末魔としての言葉を紡いでいった。
「な、なんで、何でだよぉ…何で僕が…こんな目に遭うんだよぉ…、神様は、ぼ、僕に復讐させてくれるんじゃなかったのかよぉぉぉ…」
「…」
静かに見守る3人。
「ち、ちっくしょぉ…。け、結局、僕の人生ってなんだったんだよぉぉ。ただいじめられて、ただ不幸になるためだけに生まれて、き、きたのかよぉ…。何で?何なんだよぉぉぉ…」
ギムは吐血と共に涙を流すヨシオを見つめ、諭す様に言い始めた。
「…この”運”とやらの正体や神の意図とやらは謎だらけだ。偉そうなことは言えないが、私は君が神の意図に反したことが原因じゃないかと思う」
「…?」
「君は折角与えられたこの機会を復讐なんかじゃなく自分の幸せに当てるべきだった。それが今まで忍耐で”運”を構築してきた君への神の恩恵と意図だったんじゃないか?少なくとも、私はそう思うよ」
「ぅぅっ、がっ!!がはっ、がはっ、がはっ…」
次第に吐血の量を増していくヨシオ。
3人は手遅れであることを悟っているのか、誰一人助けを呼んだり介抱をしようと動かなかった。
「し、し、知るかよぉ!やられたからやり返したんっだぁ、そ、そ、それのどこが…悪いんだよぉっ!あ、あ、あいつらはお咎め無しで平然と生きるつもりでいやがったんだぁぁ。そんなことってあってたまるかよぉぉ…」
「…」
「か、神ってやつに、文句、言ってや…る…」
最後の断末魔を放ったヨシオはそれ以上の言葉を発することはなかった。
ヨシオの息が完全に途絶えた瞬間、ギルティはあることに気付く。
「おい!見てみろ!」
「!?」
辺り周辺にバラバラになって散らばっていたヨシオのデストロイド1号が突如その場から風化されていく様に消えていった。
「購入者が死ぬと消えちまうのか…」
「そうらしいな」
ヨシオの死と1号の消失を見届けた3人は自身の怪我や疲労を思い出し、その場にどかっと腰を落とした。
「…終わったな」
「…あぁ、終わった」
全身の力が抜け落ちるかの様に呟くギムとギルティ。
そしてドレッドはそんなギムに問い掛ける。
「…よぉ」
「ん?」
「テメェみてぇな石頭が随分なことしでかしたじゃねぇか。核の強奪たぁよ。晴れて前科者になった気分はどうだ?」
「…」
ギムは一度頭を落とし、そして少し角度を戻すと静かに語り始めた。
「最初オットロさんに連れられ昔の自分に会った時、あの言葉を聞いて思い出したんだ」
「あの言葉?」
「”賢く、果敢に聡明に。全ては誇りある正義のために”」
「あ~、あの反吐が出そうなやつか。聞いてるこっちが恥ずかしくなるぜ」
「時代が決めた規律や正義に惑わされること無く、己が正しいと思うことを貫きたい。そんな思いを込めた言葉だったんだ。刑事という職業柄、どうしても忘れがちで自分の信念を長く見失っていたが、さすがに自分本人に思い出させられると心に染みるものだな」
少し照れくさそうにほくそ笑みながら語るギム。
「…それで今回はルールに縛られず”賢い”決断をしましたってか?」
「あぁ。自分でも”果敢”な行動だったと思う」
「…”聡明”な決断でもあったわけだな」
そしてドレッドとギルティにもギムが作り出した笑顔が伝染し和やかな雰囲気が作り出された。
しかしそんな勝利の美酒は長くは続かなかった。
「…これからどうする?」
「さぁな。取り合えず世界を救ったってことで国から報奨金でも貰うか?」
「意味あるのか?そんな金を貰って」
「あぁ?」
「我々は被爆したんだ。どれだけのものかは分からんが、放射線の影響で…」
「あー、そういやぁそうだな。ここいら一体は死の街か」
「…ギム、家族は無事なのか?」
「あぁ。16ブロックの避難場所で会えた。あの場所なら安全だ。私が使ったミサイルは上空爆破だったし、ギルティの使った核兵器は1号同士の機体に挟まれたお陰で被害が大きく減少されたみたいだ。ドレッド、本当によくやってくれた」
「うるせぇ」
「ギム、被爆したお前自身のこと、家族にはどう伝える?」
「…」
ギム刑事は少し考えた様子を見せたが、吹っ切った様な表情で答えた。
「正直に伝える。いずれは伝えなければいけないことだ。心を裂かれそうだが、まだ死ぬと決まったわけじゃない。希望は捨てないさ」
「…そうか」
「…そういやぁ、あの姉ちゃんはどこいった?」
「あぁ、そういえば、オットロさんは…?」
ギムがその存在を思い出した時、いつもの陽気な声がその場に響いてきた。




