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貯まった運で核兵器を  作者: レイジー
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勇気が作り出した数秒の奇跡

 ギム刑事が突然始めた尋問に対し指令長の男はその目を大きく見開き言葉を詰まらせた。


「…一体なんの話だ?」

「そう言うと思ったよ。悪いがさっきも言った通り時間がない。強硬手段を使わせてもらう」

「…お前が何者で何を根拠に言っているのかは検討もつかんが無駄だ。いくら拷問されようがありもしないものを教えることは出来ん」

「確かに。あんたは訓練を受けてる、いくら痛めつけても吐かないだろうな」


 するとギム刑事はポケットから"トルトーネの涎"を取り出し指令長の男に吹きかけた。


「むっ!?な、なんだ?」


 指令長の男は何かしらの催涙スプレーの様な物だと思い咄嗟に顔を背けたが、特段自身に変化がないことに気付くと不思議そうな表情を見せた。

するとギムは徐に尋問を再開し始めた。


「核兵器はこの基地にあるな?」

「ある。…っな!?」


 自身の意図しない発言に驚く指令長の男。

続けるギム。


「どうやって発射する?」

「さ、最上階にある管理室で発射コードを入力する必要がある。そうすれば、核ミサイルを搭載した戦闘機のロックが解除される…」

「その部屋にはどうやって入る?」

「わ、私かそれ以上の階級の人間が持つIDと指紋認証でドアを開ける…」

「よし…」

「なっ、なんだこれは!?一体どうなって…?」


 困惑する指令長の男をよそにギム刑事は指令長の男に手錠の鍵を渡し自身で外させた後、再び拳銃を向けた。

指令長を人質にしながら核ミサイルの管理室に連れて行き戦闘機を乗っ取るギム。


「待て!貴様は一体何者だ?何が目的だ?」

「刑事さ。家族を守る」

「自分のしていることが分かっているのか?これがどんな事態を引き起こすのかを?」

「…分かっているさ。だか今回ばかりは時代が決めた正義の形じゃ家族を守れそうにないんでな。初心と信念に従わせてもらうよ」


 そう言い残しギムは飛び立った。

そして戦慄の戦場へ辿り着き、今まさに無線通信でドレッドに作戦を伝えていたのだった。


「…この国は核持ってねぇんじゃなかったのかよ?」

「表向きの公表ではな…」

「ウソってこと知ってたのか?」

「刑事の勘さ」

「あー、俺ら悪党がよく困らせられるアレか…」

「そいうことだ、お前もいずれ捕まえてやる」

「核の保有を内緒にするのはルール違反じゃねーのか?正義のギム刑事さんともあろうお方が黙認か?しかもそいつを奪った上に盛大に打ち上げ花火たぁ、だーいぶハイなんじゃねぇのか?」


 嫌味を並べるドレッドだったが、ほんの僅か、逆転の兆しが見えたことに笑みをこぼしていた。


「…心情的にはしこりはあったさ。だが確信のなかったことだ。それに核云々の話は警察の管轄じゃない。管轄外のことに首を突っ込むのはそれこそルール違反だからな」

「屁理屈野郎が…」

「今日、ほんの一瞬だが家族を失った絶望を味わった…。あんなのは2度とごめんだ…。どんな手段を使ってでも、必ず守ってみせる!」

「…テメェがそんなことまでするってことは、俺とギルティが失敗すると思ってたんだな?」

「念のためさ」

「そーかよ…」

「無駄口叩いている暇はないぞ、ドレッド!もうすぐ射程圏内だ!出来るのか?」

「あーあー、うるせぇな、言われなくてもやってやらぁぁぁぁ!」


”ブォォォォォーン”


 活力を取り戻したドレッドが操作する1号は残りエネルギーを全開にし、各通気口からジェット噴射を出しヨシオに向かって突進して行った。

片腕ながらヨシオの1号を捕らえようとするも、ヨシオの1号はそれを上回るスピードで交わし続ける。


「無駄無駄無駄!そんなガタガタな状態で僕を捕まえられるわけねーだろーが!」

「ぐっ…!」


 上空を逃げ回るヨシオ1号の機体を必死に追いかけるドレッドの1号だったが、片腕をもがれ、いたぶられ続けた機体はすでに殆どの力を失っていた。


「ドレッド、急げ!!あと10秒だ!!もう時間がない!!!」

「ちっ、ちっくしょう!!!」


 誰がどう見ても惨敗を喫する鬼ごっこだったと思われた、その時、


”ドッカーン”


「うわぁぁっ!!」

「!!?」


 ひとつの砲弾がヨシオの1号に命中し、ほんの数秒だがその動きを止め体勢をよろめかせた。


「だ、誰だ!?」


 ヨシオの1号が見た先には1台の戦車、その操縦席に座っていたのは先ほど重傷の兵を助けることが出来ず断腸の思いで涙を流した衛生兵だった。


「ど、ど、どうだ!!!」


 その衛生兵は恐怖と勇気を入り交えたような表情でヨシオの1号を睨み、震える手で操縦レバーを掴んでいた。


「あ、あのやろぉ!!」

「今だ!!!」

「!!!」


”ガッキーン”


 勇気ある衛生兵が作り出したほんの数秒の隙を突き、ドレッドの1号はヨシオの1号の背後に回り込んだ後、残った片腕を相手の首に回した。


「し、しまった!!」

「ギム!!!今だあぁぁぁぁ!!!!!」

「よし!!!みんな、すまない!!!」


 ギム刑事は操縦レバーの蓋を開け、現れた赤いボタンを親指で力強く押した。


「!!!」

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