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貯まった運で核兵器を  作者: レイジー
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エリカ、死す

 正確に狙いを定めていなかったヨシオが放ったキャノン砲は軍防衛ラインではなく、自分に向かってくるエリカの胸を貫通してしまった。


「っあぁ…」


 一瞬の出来事に刹那、一同は時の流れと言葉を同時に失った。


「エリカァァァァァ!!!!!」


 ドレッドが叫ぶ。その声が響き渡る中、エリカの小さな体は無情に宙を舞った後、地面に葬られた。

ギム刑事、そしてギルティもその光景に声を殺されていた。


「エリカァァァァァ!!!!!」

「!!」


 ドレッドが全身の力を込めエリカの名前を叫ぶ中、ヨシオ本人も想定外の光景に驚いている様子だった。

ドレッドはたまらず防衛ラインを飛び出しエリカの元へ駆け寄る。

その小さな体を抱き抱え真っ先に防衛ラインまで連れ戻った。


「おいっ、エリカ!!しっかりしろ!!!」

「あぁっ…ぅぅ…」


 エリカの服は鮮血にまみれ、虫の息が漏れる口からも大量の血が溢れ出していた。


「お、にい、ちゃ…に、げ、て…」


 そう言い終わったエリカの瞳からはやがて生気が消え去り、微かに残っていた虫の息と共にその胸は鼓動を止めた。


「…ッッッ!!!!」

「エリカちゃん、エリカちゃん!!!」

「おのれ、なんてことをっ!」

「あららぁ~」


 ドレッドは震える腕でゆっくりとエリカの体を地面に寝かせ、開いたままの瞼をそっと手で閉じた。

悲痛に歪むドレッドの表情。次の瞬間、その表情は怒りと殺意を含むものに変貌し、近くの兵士が持っていた散弾銃を奪い取り防衛ラインを飛び出した。


「おあああぁぁぁぁぁ!!!」

「よせ、ドレッド戻れ!!!」

「このクソガキィィ、ぶっ殺してやらぁぁぁぁぁぁ!!!」


 ドレッドはデストロイド1号の至近距離まで近付き、その散弾銃を頭部操縦席に向かって乱射し始めた。

その勇気も虚しくやはりガラスのシールドにはかすり傷ひとつ付かない。

それでもドレッドは乱射を止めなかった。

ヨシオは直接自分の手で再び知人を殺してしまったという事態に少しの冷静さを取り戻し、それによって自分がしでかしてしまったことへの恐怖の感情が蘇ってきた。

しかし後戻りが許されない状況に追いやられているヨシオにとって”降伏する”という選択肢は無かった。


「っくぅ!!」


 ヨシオは再び操縦席のレバーを握り操縦を再開する。

するとデストロイド1号の極太の腕が大きく動き出し、その場で拍手をひとつ打った。

するとその風圧が竜巻を生み出しドレッドは勿論のこと、数十メール離れている防衛ラインそのものまでを吹き飛ばした。


「うあああぁぁぁぁぁぁ!!!」


 無数の叫び声と人間、瓦礫や戦車までもが宙に舞う中、デストロイド1号はその場から飛び去って行くのだった。

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