悲劇
ヨシオはこの世の破壊を心に誓いデストロイド1号に乗り込むとすぐに5つの街を破壊し尽くした。
そして今ヨシオはドレッドが住む街に舞い降り破壊活動を再開し、今まさに対峙というかたちでギム刑事、ドレッド、ギルティの3人と再会を果たしていた。
「あの焼殺事件、ヨシオ君の犯行だったのか…」
「脅かすだけのつもりだったんだ…。殺すつもりじゃなかった…」
「いじめの復讐のためにそんなやべぇもん買ったのかよ。ったく見た目通り陰気な野郎だぜ」
「やめないか!下手に挑発するな!」
ギム刑事はドレッドに注意を発した後、ゆっくりとヨシオの方向を見上げた。
「ヨシオ君、落ち着て。事情はよく分かった。私が力になる、警察としても全力を挙げて君を守ると約束する!だからまずそのマシンから降りて来てくれ!」
「…騙されない、今更人間なんて信用しない。先生だって警察だって同じだ。力も権力も持ってない弱い奴なんてどうでもいいに決まってる!」
「そんなことはない!」
「ウソをつくな!!じゃあなんでこんなにいじめが原因で自殺する人が多いんだよ!僕だってあと一歩だったんだ。オットロさんが助けてくれなかったら飛び降りてたんだぞ!」
「ヨシオさん…」
「どうせ一通り形式的な聞き込みして表向きには”きちんと調査しました”とかなんとか言って世間体を保てればそれでいいんだろ?中身なんて一切ない、TVの記者会見で頭下げればお終いだとか思ってるんだろ??」
「それは違う!」
「違わない!!変に疑って訴えられるのが怖いから、実際はいじめじゃなかった時に自分のミスを責められるのが怖いから、そもそもいじめの実態なんて曖昧でうやむやにしやすいからな。弱くて影響力の無いガキ一人自殺して終わってくれたらそれで胸を撫で下ろすんだろ??人間なんて自分さえよければいいんだろ??」
「…」
ギム刑事はヨシオの怒涛の剣幕につい口籠ってしまった。
「だーめだありゃ。説得が通じる様な状態じゃねーぞこりゃ」
「当然だ。奴は世界を破壊出来る力を持っている。手を引いたり交渉に応じる理由が無いんだ」
そしてヨシオはデストロイド1号の両掌を4人に向けた。
「や、やべぇ!あの野郎、またぶっ放すつもりだ!!」
「一旦引け!この場はどうしようもない!作戦を練るしかない!」
「ヨシオ君…」
4人の背後には軍隊の防衛ラインが間近まで迫っていた。
4人がヨシオに背を向けその場所まで走り出そうとした瞬間、ヨシオがオットロに向け声を掛ける。
「オットロさん、そこどいて下さい。自分の世界に帰って下さい」
「え?」
「あなたのことは殺したくない。恩人ですから」
「…」
ギム刑事はヨシオの言葉を聞いてオットロに説得を頼み込む。
「オットロさん、お願いします!彼を説得してください!この星は貴方にとても重要顧客なんでしょ?このままこの星が壊滅してはこの星から客を取れなくなりますよ!」
「え?えぇ~っと、そうなんですけど、規則で他世界の事情に口出ししたりすることは出来ないんですよぉ~」
「そ、そこを何とか、お願いします!!何十億人の命がかかってるんです!!」
「そ、そんなこと言われましてもぉ~…」
「おいテメェら、さっさとしやがれ!」
ドレッドとギルティは一足早く軍隊の防衛ラインの中に隠れていた。
するとそこへ一人の少女の声が届く。
「お兄ちゃん!」
「!!?」
ドレッドが振り返ると、そこにはエリカの姿があった。
「お前、出て来るなっていっただろぉが!!」
「ごめんなさい、でも心配だったの…」
「ったく…」
そこへギム刑事とオットロも合流した。
「エ、エリカちゃん!なんでこんな所へ?」
「あら~、エリカさん!どうもですぅ~」
「刑事さん、どうなってるの?ヨシオのお兄ちゃん、なんであんなことするの?」
「そ、それは…」
ギム刑事が言葉を詰まらせていると突然爆音が鳴り響いた。
全員が耳を塞ぎたくなる様な破壊音が鳴る先を見ると、デストロイド1号が再び破壊活動を再開しており、横にあったビルをパンチ一発で破壊していた。
「おいおいおい、マジかよ?このままじゃあこんな防衛ラインなんざぁデコピン一発で吹き飛ばされちまうぞ!」
「ギム、ひとまず軍を後退させろ!太刀打ちできるレベルではない!」
「し、しかし、そうすれば市民の犠牲が拡大する!」
「ここで私達が犬死にしても同じことだ!取り合えず作戦を練るために一旦引け!」
「そうだ!ヨシオ君はオットロさんのことは傷つけたくないと言っていた。ひとまずここに留まってもう一度説得を試みる!オットロさん、ここに居てくださる分には構いませんね?」
「え?えぇ、その程度であれば。危なくなったらすぐ逃げますけど~」
「よし!!」
ギム刑事が向ける視線の先にはより一層凶暴さを増し縦横無尽に建物を破壊し続けるデストロイド1号の姿があった、それは刻一刻と防衛ラインに近付いて来る。
「バカか?ここに留まるってのかよ?あんなハイな状態のガキ、本当に説得出来ると思ってんのか?」
「やるしかないだろ!!」
「はっ、勝手にしろ!俺ぁゴメンだぜ、とっととずらからせてもらうからな!!」
「悪いが私も退散させてもらう。どう考えても自殺行為だ」
「あぁ行け、これは警察の仕事だ!」
「おーおー、ご立派なことで。せいぜい墓の中で名誉勲章でも貰うんだな。おいエリカ、行くぞ!」
エリカはドレッドの呼びかけには反応しなかった。
「…?おいエリカ、どうした?」
ドレッドがエリカを見ると、エリカはデストロイド1号が暴れている近く、崩壊したビルの隣で一人の少女が地べたに座り込み泣き叫んでいる姿を凝視していた。
「…」
エリカは瞬きひとつぜずその様子を見つめ、その表情は悲壮に満ちていた。
「ママァァー、ママァァーーーー!!!」
泣き叫ぶ少女の隣には巨大な瓦礫の下敷きになっている一人の女性が居た。
その女性は大量に血を流し一切動く気配を見せない。
「やだ…やだよ…」
「おいエリカ!どうしたってんだよ?」
魂が抜けたかの様に独り言をぼやくエリカの肩を正面から抱え問い掛けるドレッド。
しかしエリカの目の焦点は合わず一切反応する様子を見せない。
エリカは思い出していた、自身が内戦で親を失った時のことを。
親を失い泣き叫ぶ少女の姿に自分の過去を重ねていた。
ドレッドがエリカの体を揺さぶり続け、やがてエリカの瞳に生気が戻ると、次の瞬間エリカはドレッドを払いのけ、防衛ラインを突破しデストロイド1号の元へ駆け出して行った。
「エリカ!!!待て!!!」
「エリカちゃん!!!」
「エリカ!!」
3人の呼びかけに一切振り向くことは無く、エリカは全力で駆けながらデストロイド1号を操作するヨシオに向かって大声で叫び出した。
「ヨシオお兄ちゃん!やめてよ!何でこんなことするの?みんな、みんな死んじゃうよぉ、お願い、やめてぇぇ!!」
「ばっかやろぉぉ!!!エリカァァ、戻れぇぇぇ!!!」
エリカの言葉は勿論、ドレッドの声もまたデストロイド1号が織り成す建物の破壊音にかき消されていった。
ヨシオはエリカが自分に向かって来ることすら気付いていない。
するとその様子を見ていた軍の指揮官の様な男が手を上げ、銃を構えていた兵達に指示を出した。
「標的、頭部操縦席、撃てぇぇ!」
「ま、待て!!」
ギム刑事の制止が届く前に兵士達は発砲を開始した。
無数の銃弾がヨシオが座るデストロイド1号の頭部ガラスシールドの部分に命中していくも、そこにはかすり傷ひとつ付かなかった。
ヨシオは軍防衛ライン向かって右の建物を破壊している途中だったが、被弾していることに気付き横目で防衛ラインの方向を見た。
「うっとぉしいなぁぁぁ!!!!」
ヨシオはデストロイド1号の体の向きを変えぬまま左手の平を軍防衛ラインの方向へ向けた。
そして次の瞬間、
「消えろ!」
”ズキューン”
「!!!」
「!!!」
「!!!」
「!!!」




