追い込まれし復讐鬼は破壊神へと変す
気絶する様に眠りについたヨシオが目を覚ますと夜が明けていた。
「夢…だったのかな?」
ヨシオは自分の横に倒れている小型化されたデストロイド1号の姿を見て暫く考え込んだ。
悪い夢であったことを強く祈りつつ家の階段を降りリビングに向かうと、母親がソファに座りTVを見ていた。
「あらヨシオ、起きたのね」
「う、うん…」
次の瞬間ヨシオは驚愕した。
「え…ウソ…!!」
TVにはとある殺人事件のニュースが大々的に報道されていた。
その現場として映し出されていたのは昨日ヨシオがデストロイド1号に乗って不良学生3人を焼き殺したあの公園だった。
ヨシオは今にもしりもちをつきそうなほど足を震わせながらTVのニュース映像を見ていた。
[昨日未明、こちらの公園で3人の男性が焼死体となって発見される事件が発生しました。警察は殺人事件との見方を強め捜査に乗り出しております]
「えぇ!?近所のウチの公園じゃない!」
「…」
ヨシオは必死に冷静さを取り繕いながらも抑えきれない動揺に脂汗を噴き出していた。
[検視の結果、被害者の3人は近くの高等学校に通う男子生徒と判明しました。具体的な死因としては焼死、生きたままの状態で莫大な量の劫火に焼かれ即死の状態だったと見られております]
「うそ!?この学校ヨシオの高校じゃない!ヨシオ、この子達知ってるの??」
「…」
「ヨシオ?どうしたの?」
「えぇ!?あ、いや、う、ううん、知らない」
ヨシオは今にも母親に届きそうな程の心音を胸に必死に考え始めた。
(ど、ど、どうしよう、どうしようどうしよう。3人の身元はばれてる、あんな大騒ぎしたんだから絶対目撃者もいる。一度デストロイド1号から降りちゃったから姿も見られてるかもしれない…)
[尚、現場には粉々になったベンチや大きな足跡などの痕跡はあるものの、凶器と思われるものや指紋などの情報はなく、他にもいくつか不可解な状況が残されております。警察は今回の事件の早期解決のため、捜査本部を設置することを発表致しました]
(つ、つ、捕まる!?そしたら刑務所に入れられる。一生?いや、それどころか3人も殺しちゃったんだから、も、もしかして、し、死刑に!?嫌だ、そんなの絶対に嫌だ!!)
ヨシオが自身の末路に絶望を抱いている最中、TVの映像はアナウンサーから警察の記者会見へと切り変わっていた。
[この史上比類なき残虐な犯行に関して、現時点犯人の目星や動機は一切不明ですが、我々警察はこの凶悪犯を逮捕するにあたって全力を尽くして参ります]
「…」
続けて街の人々のインタビュー映像へと変わった。
[怖いですねぇ…。早く犯人が捕まってくれることを祈ってます]
[生きたまま焼き殺すなんて、本当信じられないです。遺族の気持ちを思うと…]
「…」
[人間のやることとは思えないです。早く捕まって極刑になってほしいですね]
「…まって、待ってよ…」
[私たち地域団体も情報収集に協力します。こんなことは絶対に許されるべきではありません。また高校生だった彼らの無念は計り知れません]
「…っ!」
「ヨシオ?どうしたの?」
ヨシオはリビングを飛び出し階段を駆け上がると自分の部屋へ飛び込みドアの鍵を閉めた。
ドアにもたれかかりながらずるずると腰を落とし、三角座りで膝の上に額をうずめた。
そしてぶつぶつとぼやき始める。
「…なんだよ、ふざけんなよ。全部僕が悪いみたいに言いやがって。あいつらが僕に何したか知らないくせに好き勝手言いやがって…」
言葉を重ねるにつれ、ヨシオの拳は強く握られていく。
「僕が辛い時には誰一人助けてくれなかったくせに、こんな時だけみんなで寄ってたかって…」
やがてヨシオの小さな体は小刻みに震え始めた。
「いつもそうだ。僕が弱いから、助けても意味ないから。見て見ぬふりして僕だけを悪者にして丸く収めようとして、自分達だけ助かればそれでいいんだ、それが世間なんだ、それが人間なんだ…」
ヨシオは再び部屋にある小型化されたデストロイド1号を見つめ、その表情に強みを増した。
「でも、もう僕は弱くない!世間がそうなら、僕だってそうするまでだ!!」
そのヨシオの顏には暗い影がかかり、その表情は恨みと殺意に満ちていった。
「どうせ死刑になるなら、この世界丸ごとぶっ壊してやる…。思い知らせてやる、僕を怒らせたことを後悔させてやる…。こんな腐りきった世の中、丸ごとぶっ壊してやるんだ!!」
そしてヨシオは立ち上がりゆっくりと家の階段を下り裏庭で巨大化させたデストロイド1号に乗り込み、空へ消えて行ったのだった。




