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吸血鬼だってチーレムしたい  作者: もこもこ
月の教団と対決する生活
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第62話 幸せな今と未来と

 

 月の教団との戦いは、ミハエル、ガブリエル両名死亡で終わった。


 親愛なる、教主の死は、けれどその犯人が同じ教団の幹部であったことが原因で、怒りは外ではなくうちに向かい、小規模の争いを何度も起こし、でも、教団の軸であった不老の天使、ガブリエルを失い、次第にばらばらになり、解散した。


 もちろんすべてが自然にそうなったのではなく、王国の思惑もあった。


 穏便な形でなくなった教団。

 そして、俺もまた、元のアルカードの家に戻る事もできるようになった。

 けれど、俺の名前はリオン・フォン・アルムガルトのままだ。


 まあ、領を納めだして、そのままにするわけにも行かないし――


 お互いの気持もあって、俺はリーゼとマリオンと結婚をすることになった。

 後ろから支えてくれるリーゼに、手を引いてくれるマリオン。


 どちらも俺にとって大切な相手だ。


「いやあ、おめでたいにゃあ」

「そうね! ふたりとも綺麗たったわ!」


 結婚後も、シルヴィアも、エヴァもずっと俺達と一緒にいて、離れる気配もないし、なんだか普通に血も吸うし、いつの間にか一緒に過ごす時間が増えてる。


「いいにゃあ」

「まだできないわ」


 まだって、なにかな……?

 裾を引っ張るシルヴィアに、腕をつなごうとするエヴァ。

 押しに弱いなあ。

 いつか、結婚式をもう二回あげることになってしまうかもしれない。


 --


 結婚してからは、時間がゆっくりと、でも、振り返るととても早く過ぎるようになった。

 徐々に成長していく村や街を見守りながら、満たされた日々を過ごしていく。


「どうした。浮かない顔じゃないか」

「ぼうっとしてただけだよ。リーゼは元気そうだね」

「ああ、先を越されていたからな。ようやく追いつくと思えば、気持ちも浮かび上がるというものだ」


 リーゼはだれとも仲良くしていたが、それでも最近はマリオンを羨ましそうに見ることがあった。

 愛する人との恋愛結婚を特に希望していた彼女だけに、その証拠になる物を人一倍に求めていたのかもしれない。


 でも、それに追いついたというのなら。

 リーゼは俺の手を取ると、そっとお腹に当てる。


「どうだ? ここに私と君の宝物が入っているよ、愛しい人」

「……二人目なのに、なんだか不思議だな」

「なんだかすごいな。どんどん大切になっていくんだ。楽しみで仕方がない。この子はきっととても良い子だよ」


「リーゼに似たかわいい女の子がいいな」

「そうか? 私は男の子にいろんなことを教えてあげるのも言いかなと思うんだ」

「どっちでも楽しみだ」


 穏やかな家族との生活。

 突然失われたものと、吸血鬼に変わって得たもの。


 今は、新しく増える家族が、家族になってくれた彼女たちがとても愛おしかった。

 リーゼをギュッと抱きしめる。


「なんだ、甘えてくれるのか?」

「リーゼには抱きしめられてばっかりだからね」


 お母様はいつもこうやって抱きしめてくれていて、照れくさかったけれど、お母様もまた、今の俺みたいに幸せで心が膨れていたかもしれない。


「リオン」

「なに?」

「愛してるよ」

「……俺も」


 唇を合わせる。触れ合うことに幸せを感じるようになった。


 --


「どうしたんですか? たそがれちゃって」

「マリオン」


 満たされている生活。かけるものがないどころか、どんどん積み上がっていく幸せは、何処まで増えるのかわからないくらい。


 だからきっと戸惑っているんだ。幸せすぎるって。


「なんでもないよ」

「なんでもないならそんな顔しませんよ」


 マリオンは小さな小さな男の子を抱いていた。

 子供は王国貴族のクレーフェ公爵家の娘、マリオンの子供ということでもある。


 だからなんだろう。大きくなってからは王国で、アルカード領を継ぐことになっている。

 正直気が長い話だな、と思っているが、父様にとってはそれが待ち遠しくて仕方がないみたいで、生まれてからずっと何度も暇を見ては会いに来ている。

 もてもしなさそうなのに、小さな剣を作って持ってくるんだから困ったものだ。


「マリオンは母親の顔になったね。俺はまだまだ父親の顔してない気がする」

「でも、領主らしくなってきたと思いますよ。女は、お腹にいるうちからお母さんになる準備してますから、リオンさんよりずっと長く経験してますからね」

「じゃあ、そのうちなるのかな」


「何が不安なんですか?」

「幸せすぎて――いつか、この幸せがなくなった時にどうなってしまうんだろうって。

 孤独に耐えられなくなったり、一緒に死んで欲しいなんて思ってしまうんじゃないか」


 自分に近い者たちが辿った最後だからこそ、自分にだって無関係とは思えなくなっていた。

 なんだか、吸血鬼である自分が怖くなってきていた。

 人間なら、年を取れば衰えて、誰かが止めてくれるに違いないのに。


「結婚して、子供が生まれて、子供がいつか領を継ぐことになって。私は夢を叶えられたと思いますよ。自由で、幸せです。

 ――昔、長い付き合いになると言いましたよね? 私は私の人生ずっとのつもりで長いと言いましたがもっと延長しませんか?」


 成長したマリオンは、少女からいつのまにか母になっていて、何処までも綺麗で、心をいつだって掴んで離さない。


「一緒にいてくれるの?」


 マリオンはボタンを開けて、首筋を晒す。月の光に輝く肌はいつもより更に白くて美しかった。


 俺はマリオンに近づき、血を吸った。

 彼女からこうやって血をもらうのは最後になるだろう。

 誰よりも美味しい血で――でも、それが全然惜しく思わなかった。


 血を吸いきったマリオンはぐったりと倒れ真っ青だ。

 でも、段々と生気を取り戻し始め――目を開ける。


「結婚式で誓った言葉を覚えていますか?」


 それは、一緒にいてくれるかという問いへの答えだ。


「死が二人を――」

「分かつまで」


 お互いの顔を見て笑い出す。

 死なない俺達にとっての、今から未来ずっと一緒にいるという誓いだった。

 いっしょなら――


 きっと寂しくなんて思わない。

これで『吸血鬼だってチーレムしたい』完結になります。

数日更新できない日はありましたが、62日、2ヶ月ちょい、毎日お付き合いいただきありがとうございます。


短編を一本か二本書いてから、また新作を書きたいと思います。

応援となによりここまで読んでくださりありがとうございました!

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