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吸血鬼だってチーレムしたい  作者: もこもこ
帝国貴族を目指す生活
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第45話 あ、ありだー!

 

 オークアント。


 虫でありながら、見た目は子猫ほどの大きさのアリである。

 女王アリを中心にしたコロニーを作り、あり系のモンスターの突然変異種であると言われている。

 支配領域の拡大に貪欲だが、ある一定以上には領域を広げない。

 最大の特徴は支配領域にいる生命体を飼い、隷属させたうえで育てることである。


「れ、隷属?」

「奴隷のように、ね。獲物を食い尽くさないように養殖してると言われている。まあ、被害にあった地域のものには申し訳がないが、そこまでならしかたがないこと、と判断されていたのだが……」


 問題は、新たな女王が誕生しそうであるということだ。


 新しい女王は蟻を三割引き連れ、今の巣から離れた位置に移動して新しい巣を作る。

 今の巣はいい。既に仕方がないと放置できているのだから。

 だが、移動される先々はアリに食いつぶされ、そして安住の地に選ばれた場所は今の土地と同じく納められない場所に変わる。


「だ、大問題じゃないですか」

「そうだ。問題は女王アリが新しい住まいを選定する場合、先行の偵察蟻が訪れるのだが……それが王都の方向らしいという話でな。もちろん王都の手前でとまる可能性が高い。蟻とて流石に国を落すほどではないからな。だが、王都の近くにアリの王国ができては困る。そのため、今まで棚上げされていたアリの討伐に国も重い腰を上げたわけだ」

「万事解決、ですかね?」


「ところがそうは行かない。ここのところ、我が国は戦争を経験していない。兵の練度は年々落ちるばかりだ。だが、戦争がない今、これはチャンスだと武勲を得ようと早っておってな」

「ははあ。若い連中が躍起になってるにゃ?」


「そうだ。おそらくは途中で取って返すことになるだろう。少なくともAランクである女王アリと戦えるものがいないからな。冒険者を雇い入れるものもいるだろうから、必ずとは言えないが……」


 問題はオークアントは買取額がオーク以下ということだ。

 猫サイズで大量に現れ、ただでさえ倒しにくいのに、ろくな買い取り部位がなく、得られる報酬は雀の涙。女王アリを倒せば領地がもらえるだろうが、残ったアリの始末を考えれば個人では無理だ。


 よって貴族でもなければ得られるものがなく、貴族もまた軍を出さねば相手ができず、しそこなえばまた女王が兵隊を生むとなれば中々手をだす気にはならない。


「旗頭になっているのはありのいる土地と王都の間にある領……フーバー領の次男、アヒムフォンフーバーだ。彼は私のファンでね。必ず領主になりあなたを娶って見せる、と言われている」

「あら、おモテなりますね。ではリーゼさんは彼に任せて私たちは別のSランクを……」


「まてまて、それはないじゃないか。私たちは同じ男を愛する仲間じゃないか。エルフは若いから適齢期なんて気にされないが、それでも、良い相手はいないのか、そろそろどうだと突っつかれているんだ。手柄があれば本当に結婚させられてしまうよ」

「それは嫌だなあ」


 血を吸っただけでアレな関係ではなかったようだが、これだけまっすぐに好意を向けられると嬉しい。マザコンではないが、なんとなく彼女に抱きしめられるとお母様を思い出すところがある。

 悪い気はしないし、吸血鬼である俺を受け入れてくれた相手だ。


「まあ、相性はいいでしょうし、狙い目ではありますよね」


 そう、Aランクを倒せることが証明されており、女王アリだって十分相手ができるはずだ。

 それにうちのパーティーは雑魚に強い。

 瞬発力を活かし、急所を一撃で打ち抜く暗殺スタイルのシルヴィアに、貴重なハイレベルヒーラー。


 それになにより、吸血によって力を回収できるヴァンパイアの俺だ。

 闇の衣で多少のダメージは通らないし、対多数には自信がある。


「ふむ。自信はあるようだな。さすがダーリンだ。では早速で悪いが、フーバー領に向かってほしい。突入のタイミングにあわせて、遅れを取らないでくれ」

「あれ? リーゼは行かないの?」

「流石に私がいると問題になる。それに私は父上に事前に根回しをしておこうと思ってね」

「根回しですか……まあ、そうなりますよね」

「必要なことだ。――独占をする気はない。これで許してくれ」

「……まあ、よしとするべきでしょうね。安泰ではあるでしょうから」


 ふうと大きくため息をつくと気持ちを入れ替えるように自分の頬を張るマリオン。

 それまでどこかビリっとした空気をリーゼに見せていたが、今はどこか空気が一段軽くなった気がする。


「さて、リオンさん、ここが気合の入れどころです。準備不足がないようしっかりいきますよ!」


 気合を入れなおしたマリオンにそう言われ、俺とシルヴィアは頷き合い、オークアント討伐のための準備を整え、フーバー領に向かうのだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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