顔で泣いて心で悦んで
連れていけとは言ったけどさ? ちょっと乱暴じゃね? 近衛の人達。
なんだか騎士たちに引きずられるようにして退場していったアウレリアが、ドナドナされる子牛のような目で俺を見ていたよ。
ごめん。そりゃ婚約してたのに、俺は浮気してた事になるもんなぁ。
嫌味のひとつやふたつ言いたくなるだろうし、嫌がらせのひとつやふたつはしたくなるわなぁ。
それもこれも可愛い嫉妬からだ。
愛されちゃってたのね俺。
さて、この事態をどうまとめて落としどころをつけようか?
ぶっちゃけアウレリアも本当に嫌がらせをリーシアにしてたしなぁ。
とは言え、さっきは断罪でアウレリアが仕出かした事以外の事も彼女のせいにされていたし。
一度ちゃんと調べた方がいいだろう。
そんな事を考えていると隣で俺にくっついていた(肩にまわした腕はさり気なさを装ってすでに外してある)リーシアがポツリと言った。
「可哀そう。アウレシア様」
(君、なんでまだ人にくっついて来てるの?ハシタナイよ?)
俺のそんな抗議を込めた視線をどう受け取ったのか、憂いを秘めた表情を見せるリーシア。
俺と一緒にアウレシアを断罪した男子生徒の何人かがハートをぶち抜かれたようで、文字通りよろめく。
しかし俺は見てしまった。いや見えてしまったのだ。瞳を揺らし、アウレシアにさも同情するかのような悲しげなリーシアの表情のその口角が、抑えられない悦びにかすかに上がるのを。
いやだわ。リーシア、恐ろしい子。
だから女って怖いんだよな。思ってる事と平気で違う態度を取れるんだから。
だけど、俺は散々姉と妹の嘘泣きにつき合わされてきた男だ。
簡単には騙されないぜ。
底が浅いぜ。リーシアちゃん。