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王子は逃げ出した  作者: 相川イナホ
婚約破棄と俺
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混濁する記憶

 これは記憶が戻った事と関係あるのか? 

 軽い記憶の混濁がある。


 一体なぜ記憶が戻ったのだろう?



 俺はハーメルン国の第一王子アレックス。

 顔が良いだけの不出来な王子だ。


 俺のすぐ下には優秀な弟であるフェルナンドを含め10人も兄弟姉妹がいる。

 俺がいなくても跡継ぎには困らない環境だ。


 こちらの記憶ではたしかに、アレックスだという生まれてからの記憶がある。

 だが、一方では、違う世界の日本という国で生きていたという記憶もある。

 

 そっちの記憶では俺はいわゆるゲームや小説などの好きな、普通の青年だった。消極的で覇気がなく、「めんどくせー。だりぃ」が口癖だったと記憶がある。

 そして何をやっても平均的で取り立てて目立つ所のない人物だったような気がする。


 家族は五月蠅い姉と要領のいい妹がいて、あれこれ世話を焼いてくれたり使い走りに使われたりしていたが、両親は共働きで忙しく割と俺のことは放置気味だった。


 同級生の女子からは


 「優也君って草食系だよねー」


 と言われていた。


 だってねー。女兄弟がいると、イロイロ夢も見れなくなっちゃうっていうか。

 スッピンで眉毛ない所とか手足の無駄毛処理してる現場とか見ちゃうとねー。

 

 他にも女のいろいろと嫌なところとか怖い所を見ちゃうわけですよ。


 ああヤダ。女怖い。


 かと言っても、恋愛対象は同性って訳でもなく、彼女欲しいなーとか漠然とは思っていたりした。


 だからそんな草食で無気力気味な俺が、人前で、女の事で喚き散らすとかありえない訳なんですよー。


 あの最初に感じた違和感は、そこだと思う。


 それになんかデジャブ感じるんだよねー。


 檀上から見下ろされる金髪ドリル頭の少女。


 イケメン、つまり俺の腕に抱きかかえられつつ怯えている可憐な少女。


 断罪する男子生徒達。


 この後、金髪ドリルが、可憐少女に激高して掴み掛って…


 って、ぼやっとしていたら、金髪ドリルが本当に掴み掛って来たよ!


 「いい加減にしろ! アウレリア、 観念するんだ」


 騎士団長の息子、マーカスがリーシアを庇って、アウレリアの腕を逆手に捻って組み伏た。


 おいおい女の子に何しちゃってんだよ。


 とりあえず、この場を収めないといけないな。呆けてる場合じゃあなかったわw


 「連れていけ」


 俺は短く、俺の警護にあたっている近衛の騎士に命令した。


 だって俺王子だし?


 「……皆にもすまなかった。見苦しい所を見せてしまったが、もう終わった。是非残りの時間をパーティを楽しんでくれ」


 会場に集まった生徒達に詫びて退場する事にする。

 

 でなきゃ他の人がパーティを楽しめないからね?




 

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