31、お酒でひゃっはー!する
着きました、ドワーフさんの国。
馬車の御者がティークだったり、飛ばし過ぎてハートがグロッキーだったり、座布団の良さに気がついた二人に、追加で作らされたり、襲いにきたクマを、ティークとハートがあっさり撃退してたりと、まあ、色々あったのだが。
とりあえずは、着いた。
馬車をかっ飛ばして、3日ということは、歩きなら更に時間が掛かるということだ。
野宿も2晩で済んだわけだし。
私は馬車の中で寝ていたが、二人は外だった。
そして、いつの間にやら友情を深めていた。
何があったんだ、何が。
まぁ、仲がいいに越したことはないのだが…。
座布団は重宝したので、売りに出してみよう。
意外と売れるかもしれない。
なんだっけ。
そうそう、ドワーフさんの国に着いたんだった。
うん、着いたのは、よかったんだけど…。
「あーひゃっひゃあ!」
「おう!もっと持ってこーい!」
これは、どうなんだろう。
もっと言えば、早々に酒盛りになるのは、国としてどうなのか。
「分かった!良きに計らえ!」
あーあ、王まで…。
「はい!そりゃもうバッチリ!」
ティークも出来上がりつつあるな…。
「アイリさまがー!アイリさまー!」
ハートもダメか…。
私もこの騒ぎに入ってしまいたい。
そうすれば、色々悩む事もなかっただろう。
しかし…私はザルだった。
よくよく考えてみれば、日本にいた頃からザルだったのだ。
体質は引き継ぐんですね!
ならば、その内花粉症になるかもしれない。
話が逸れた。
それどころじゃないのだが。
さて、どうしよう。
「あ…あの…。」
おお!これは、王室に仕えるメイドさん!
ドワーフさんだけど。
「よろしければ、お部屋を用意しましたので、そちらへ…。」
「はい!」
勿論!
「他の方は…。」
「放置しといて、構いません。」
きっぱり、はっきり。
自業自得じゃ、私はもう知らん。
そんな訳で、着いた早々だというのに、部屋に引き篭もる事になったのでした。
とほほ。
次の日。
ああ、二人はそのまま宴会場で寝たようです。
朝起きてもいなかったし。
キッチンを借りて、ベーコンに目玉焼、パンにサラダ、ミルクというごくごく普通な朝ご飯を食べた後。
あ、ベーコンは持ち込みです。
パンの酵母も持ち込みです。
珍しがられたので、レシピと共に、ベーコンと酵母は提供しました。
二日酔いのティークと何事もなかったかのようなハートと合流した。
そのまま王の元へ…は行かず。
聞けば、王も二日酔いなんだって。
流石だ。
政治絡みの難しいお話は、ティークに丸投げして、私はハートと街を見て回ることにした。
街は、何処も変わらない。
当たり前の話だけど、人の暮らしがある限りそうは変わらない。
違うのは、細工の細かい物が、たくさんあることか。
木から作ったお皿にしても。
土から作るカップにしても。
一番気に入ったのは、フォークとスプーンだった。
この街で売りに出している物は、木ではなく銀で作っている。
いいなぁ、これ。
でも、この国のお金無いしな。
交流が始まったら、仕入れてもらおう。
ドワーフさんて、手先が器用な種族なんだなぁ、と。
そう思わずには、いられなかった。
花の彫刻が細かくされた箱なんか見ていると、欲しくなってしまう。
魔力針を入れとくのにいいなぁ…。
街から戻ると、ティークも話し合いが終わったようだった。
だいぶグロッキーだったけど。
「お…終わった…。」
そう言いながらベッドに倒れこんでるティーク。
「はいはい、お疲れ様。」
終わったなら、後は帰るだけだね。
空気の様なハートが、実は二日酔いだけどがんばっていたのを知ったのは、その後だったけど。
流石に二日続けて宴会とはならず、その夜は大人しく食事をし。
その次の日に、帰る事になった。
「素晴らしいですな、このパンは。」
教えたメイドさんの吸収力も素晴らしいと思いますが。
一回教えただけなのに、再現出来る所が凄いよ。
「…ん?」
これは…パスタ?
パスタにパンって組み合わせ…。
「この、麺は?」
「これは、この国の主食じゃ。このベーコンとやらになかなか合うの。」
そりゃ合うだろうな。
これも仕入れしよう。
こうして、仕入れる物ばかりを考えながら、ちゃんとした食事会は終わった…。




