32、ついでにもう一歩
ガラガラと馬車は走る。
御者席に、今回は私も座っている。
ハートは、荷物に挟まれながら目を閉じている。
寝てるんだろうか。
「結局、どうなったの?」
風の音に負けないよう、大声で聞いてみる。
「そうだな、ほぼ成功。」
成功ということは、和平は成立ということか。
「お互いに交流を持とうということになったよ。こっちからは、主にお酒の輸出。向こうからは、武器や防具。もちろん、人の行き来も可能だから、それ以外の物も流通するだろうね。」
やっほい、パスタと銀食器。
「通貨がどうとか、商人は誰とか、まだまだ詰める所はあるけど、そこら辺は、ダニィに丸投げ。」
可哀想なダニィさん…。
と言うか、有能なんですね。
「纏まれば、国王の名で告知がされるよ。」
飲んだくれて、潰れただけに見えた王とティークだが、ちゃんとそんな話はしてたらしい。
「ボクは、話をつけるだけ。最初に会った時に、話したよね。種族の研究をしてるって。」
うん…?そんな話をした気もする…。
「それを生かして、こういう風に話をつけるのが、ボクの仕事だから。」
なんという役回り。
「ドワーフ族は、温和な方なんだ。ノッピィがいい例だろ。ちょっといかついけど、お酒が好きで、賑やかな事が好きで。だから、今回の件は上手く纏まると思ってたんだ。」
そして、空を仰ぐ。
「まだまだ種族はある。竜種、エルフ族、獣族、魔族…。ボクが確認してないだけで、他にもいるのかもしれない。」
確かに、世界は広い。
確認出来てない種族もいるのかもしれない。
「ま、それはおいおい分かって行くんだろうけどね。」
それはまた、旅をしながら探すよ、と風に消えそうな声で、ティークは呟いたのだった。
旅をするのに、私は邪魔になるだろう。
自分に問いかける。
力もない、身を守る術すらない私が何の役に立つ?
仕事場であるサクラ亭からの、行き帰りで襲われた時でさえ、私は自分を守れなかった。
自分の身を守ることさえ出来ない
。
それは、足手まといなだけだ。
せめて、と思って習った剣術は、身に付かず。
むしろ教えてくれたダニィさんが、お手上げだと匙を投げた。
この先も期待するだけ無駄なのだ。
じゃあ、どうすれば。
その思いは、私について回る事になるのだが。
思い出して、久々に見るカード。
神様(自称)にもらったあれである…。
『学校とか、作ってみる?』
軽いな!おい!
しかも疑問形ってどうなんだ⁈
でも学校…悪くはないかも。
幸い、お金は稼げている。
そこで雇う人たちの教養が、偏っていることに気がついてはいた。
読み書き、四則演算。
出来るのは、大概ちょっと裕福な家庭の人だった。
家庭教師を雇うかららしいが…。
学校は、ないのだ。
これはハートと相談だな。
ティークも暫く動かないと言っていたし。
「ねぇねぇ、ハート…。」
思った事は、即実行。
それで失敗したことも、数知れないのだが…。
「はい、アイリさま。」
当たって砕けろ。
いや、砕けたら、困るのか。
ま、いいや。
「あのね、…。」




