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25、驚き、桃の木、桜の木

あれから、だいたい一ヶ月が過ぎた。

こっちの世界の一ヶ月は、百日だ。


一年が三ヶ月で終わるのは、早過ぎやしませんか?


もっとも、そんな期間の括りがあるのは、偉い人たちだけであって。

ほとんどの人が、そんなことは気にしてないけど。


さてさて、私の店であった、サクラ亭はどうなっているかといいますと…。


「店長!来月から、小麦の仕入れを増やして下さい!」


「魚の仕入れはどうなってる⁈足りないぞ!」


「すいません、マドレーヌの在庫は、これで終わりですか⁈」


えらいことになっていた…。



確かに流行った。

物凄く流行った。


商売のノウハウがない私に代わって、ティークが色々していたらしいが。

もうそれでは間に合わないらしい。

勿論、私が料理を作るだけでは間に合わない。

何人にもレシピを教え込み、私はもはやキッチンには立たなくなっていた。


激動の百日だったのである…。


サクラ亭は一軒だけではなく、二号店が出来た。


こうなってくると、もはや私には、何がなんだか皆無である。


もう全てを人に任せた。


私が関わるのは、精々新作を作る時だけであり、全ての店のトップというだけである…。


その代わり、泡立器を作ったり、発酵の仕組みを教えたりして、私がいなくても出来るようにはしたのだが。


「アイリさま。」


「なぁに?」


彼は、ハート。

なかなか有能で、店の管理から、仕入れから、その他諸々まで。

私の代わりに、店の一切をやってくれている。


決して某覇者に出てくるようなおデブではなく、すらっとしたイケメンさんです。

量産品のズボンとシャツという、ラフな格好だけども。


そんな自分は、ゴスロリが入ったようなワンピースですけどね。

ゴスロリ、好きだったもので。


開放するつもりだったサクラ亭の二階は、今や私の部屋と、在庫置き場となっている。


「また何か、新しい物をお作りですか。」


「だって、一号店の制服化は済んだから、今度は二号店を…と思って、」


ミスル銀は、魔力を通すことが出来る金属だった。

なので、少し魔力を込めたら、勝手にチクチク縫ってくれることが判明した。

なので、部屋いっぱいに布を広げて、あっちでもこっちでも、チクチクと針が縫い物をしている。


あ、このミスル銀針は更に増やしてもらいました。


服は、別事業で売りに出されている。

これまた商売上手なハートが、針を作れる鍛冶屋を増やし、手縫いで服を作る人を雇い入れ、一大事業に仕上げてしまったのだ。


あ、ハサミの作り方も、流したな。


こちらは流石にサクラ印ではなんだったので、ハート印にした。

ハートには泣かれたけど。


こっちは、さらに簡単だ。

型紙だけ引いておけば、あっという間に量産品が出回る。

もっとも、粗悪な模造品も出回ってるらしいが、そこまではどうこうという気はない。


一号店の制服は、メイドさん風のシックなワンピース。

なので、二号店は着物風にしようと、作っているところ。


「それでしたら、型紙を引いていただけたら、工房でやりますが。」


「うーん、いいや。」


今の私は、ぼーっとしていても、とりあえず稼ぐことは出来る。

でも、それだと、身の置き場がないのだ。

忙しいの経験しちゃったしなぁ…。


そんなこんなで、チクチクされている布の周りを回っているわけだ。

ハートは、顔を覗かせただけなんだけどね。


「あ、そうそう、アイリさま。今度王都から、王妃様が来られるそうですよ。その打ち合わせを…っ!」


盛大に縫いかけの布に突っ込んで行った私を、慌てて引き戻すハート。


王妃…王妃と言うことは…。


「ははっ…ティークのお母さん…マジで…。」


「ちょっ、アイリさま!しっかりしてください!」


私がぶつぶつ呟く声が、部屋に木霊する。

思わぬ事態に、針はみんな止まってましたよ、ええ。


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