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Silver Pendulum  作者: 迦月
5/11

a cog in machine of the world−III

 ―23時41分 I.J.H医療健康保険機関研究室―



 宿麻の死体の横には、銃を持って見下ろす双子がいた。

榎璃「殺した…の?」

鴻「うん…。」

万里「殺すのは…ナシだったのでは?」

祥「鴻は、言い出したら聞かねーからなぁ。」

 ため息をつきながら言う祥。

榎璃・万里「!!」

 素早く祥の首に腕を回し、万里が祥を部屋の隅へ連れて行き、榎璃が後をついて行く。

万里「…やっぱアレ、鴻ですよね?」

祥「ん?ああ。いつもは、あんな感じに本性隠してるんだけど…。やっぱ、キレるとどうも…」

榎璃「最初の声…男だったわよね?」

祥「あれは、声音を変えてただけだよ。色々と叩き込まれたからさ、俺たち。」

万里「だが、俺らが知る鴻と雰囲気が変わってるような気が…」

祥「あれが、あいつの素だよ。」

榎璃「…二重人格?」

鴻「なんか言ったか、jet-black head。」

榎璃「なんでそれなのよ!」

万里「しかし、こうしているうちに騒ぎを聞きつけて誰か来るんじゃ…!」

祥「それはないよ。ここは『博士』の支配下だからさ。俺らを殺すつもりはないらしい。…今は。」

榎璃「今は、って…。」

鴻「祥、データの確認しないと。」

祥「おう。榎璃、そのCD-Rいい?」

榎璃「ええ…。」

 榎璃からCD-Rを受け取る祥。

 そして、それを祥から渡された鴻は、パソコンにデータを 表示させた。

祥「…やっぱ、ダミーだな。」

鴻「こっちがソフトを使うのを予想してたんだろうね。」

 そう言って、鴻はキーボードを叩く。

 『ビーーーーーーーーーーーーー!!』

 しかし、その作業は室内に設置されたスピーカーから発せられた音で遮られた。

卯木『やあ、初めまして。佐藤 万里、阿部 榎璃。そして、やってくれたな。祥、鴻。』

 スピーカーから卯木の声が流れる。

榎璃「なんで、あたし達の名前を…!?」

万里「…橘 卯木か。」

卯木『その通り。察しがいいね、佐藤サン。』

万里「名字はやめろ。虫酸が走る。」

卯木『だろうね。じゃあ、次から名前で呼ぶよ。榎璃もいいだろ?』

榎璃「なんであたしは最初から呼び捨てなのよ!」

鴻「ずっと、見てたの?」

卯木『ああ。もちろん、音もばっちし。』

榎璃「無視すんなー!」

祥「榎璃、五月蝿い。データ、ダミーだけど?」

 祥に一喝された榎璃は、しゃがみ込んで床にのの字を書きだし始めた。

 しかし、祥達は気にすることなく話を進める。

卯木『うん。もういいよ。こっちのパソコンにしか入ってないから。まあ、君達を呼んだのは力量を測るためだしね。』

鴻「何が『もういい』だよ。私達は、盗るよ?」

卯木『…無理だね。』

祥「…お前も知ってるだろ。鴻は、言い出したら聞かない。」

卯木『そういえば…博士が連れ戻すだとさ。そのうち、だけどな。』

万里「橘…連れ戻すって、どこにです?」

卯木『俺も名前でいいよ。つーか、二人から聞いてない?その双子、ここの博士―アレックス・W・ウェールズ博士の兄を殺すために創った殺し屋養成組織の学園から逃げ出したんだよ。トップだったにも関わらず、ね。』

榎璃「は!?」

 いつの間にか復活した榎璃が、思わず声を上げた。

卯木『あれ…お二人さん、止めないんだ?』

鴻「どのみち、いつかバレるんだし。」

祥「そーそー。それに、騙し続けるのも罪悪感が―なぁ?」

卯木『じゃあ、これも言っちゃうかな。その四人の中にこっち側―古い言い方だと、『スパイ』かな?いるんだよね、一人。そいつのおかげで情報は全て―』

鴻「それは二人に関係無いでしょう!」

卯木『なに言ってんのさ?そいつ、この二人を殺しちゃうかもしんないよ?』

万里「なっ…!?」

卯木『ちなみに、そいつは―』

 『バン!』

 鴻がスピーカーを撃つ。

 穴が空き、壊れたスピーカーからは、もう卯木の声は聞こえてこない。

鴻「そんなの、私ら双子は知ってるよ。」

祥「それに、二人には知られたくない。」

鴻「祥、作業続けよう。」

祥「了解。」

 再び、キーボードを叩き始める鴻。

万里「データは、卯木の言う部屋にしか無かったのでは?」

鴻「ハッキングのガードは、外部者に向けてかけてある事が多いから、内部からは簡単に取れる………んだよ。」

祥「もっとも、俺らみたいな技術がないと無理だけどな。」

榎璃「へぇー…凄いのね、二人とも。」

 鴻「五月蝿い、jet-black。」

榎璃「!!…祥!」

 榎璃が再び部屋の隅に祥を連れて行く。そして、今度は万里がついていく。

榎璃「ねえ、祥……あたし、実は嫌われてる?」

祥「実はも何も…」

万里「めっきり嫌われてるよな。」

榎璃・祥(めっきり…?)

榎璃「……。」

鴻「祥、やっぱガード固いわ!至急応戦よろしく!」

祥「わかった!今行く!」

 そう言って鴻とは別のパソコンのキーボードを叩き始める祥。

祥「準備OK!」

鴻「サーバー22で合流!」

祥「了解!」

榎璃「何!あたしらは何すりゃいいの?」

鴻「うっさい!そこらで遊んでな!」

 半泣きで部屋の隅で落ち込む榎璃。そして、その肩を万里が叩いた。

 一方、双子はというと。

鴻「目標はサーバー17からの64番回路37番。ウィルスプログラム自F−92が有効。」

祥「いや、ここは一旦、他L−20で回線をまとめてから。他L−20そちらよろしく。」

鴻「了解。」

 その後も会話が続く。

 どうやら、二人はウィルスを扱っているようだ。

 そんな二人を見て、榎璃が万里に問いかける。

榎璃「ねえ、万里…たった四年だけど、あたしたち一緒だったよね?」

万里「…のはずだがな。」

榎璃「あたしは、何かできるようになったのかな…?」

万里「大丈夫。榎璃もちゃんとやってるよ。」





 ―同時刻 ???―



 一方、卯木。

卯木「くそっ―!」

博士「どうした?」

卯木「いえ、奴らがこちらに攻撃を仕掛けてきまして―。」

博士「ふぅ…知恵がつき過ぎるというのも困りものだな。」

卯木「…プログラムは守ってみせます。逃げ出したあいつらに負けを認めたくありませんから……。」





 ―同時刻 I.J.H医療健康保険機関研究室―



鴻「ヤバイ!回復されてる―!」

祥「鴻!どうする!?」

鴻「…Z−9を使って。後はこっちでやる。」

祥「…後処理は?」

鴻「卯木にやらす。」

祥「じゃ…」

鴻「始め!」

 一度止まりかけた二人の手が、再び動き出す。

鴻「別のサーバーから仕掛ける!全面的にやれ!」

祥「了解!」

 返事を返して、祥がEnterを押す。

 すると、祥のパソコンが『ブツッ』という音とともに真っ暗になった。

祥「完了!」

鴻「こっちのサーバーで補助頼む!」

祥「了解!」

 他のパソコンに移り、画面を出す祥。

鴻「GαX成功!そっちも広げといて!」

祥「データよろしく!」

鴻「データ10確保!」

祥「待ってあと85秒!」

鴻「20、30、40、50、58、66…」

祥「あと30秒!」

鴻「84、93、99………完了!早く切って!ツけられる!」

祥「了解!」

 『プツンッ』という音がして、すべてのパソコンの電源が落ちる。

 そして、双子は座り込んだ。鴻の手にはCD−Rが握られている。

万里「終わり…ました?」

鴻「ぅん………」

祥「ぁあ、行こう…プログラム盗ったからには、あいつも死なない程度に攻撃してくるだろうな。」

鴻「わかった。」

 祥に頷いて、万里の袖を引っ張る鴻。

祥「ほら、行くよ。」

榎璃「う、うん。」

 祥も榎璃に近づく。

祥「早く立ってってば。遅れるよ。」

 『ゴツン』

榎璃「痛ッたー!」





 ―0時2分 ???―



卯木「くっそ……!」

 拳で机を叩きつける卯木。

博士「データは、安全なんじゃなかったか…?」

卯木「…申し訳ありません…」

博士「…処分は後で考えよう。まずは、あの双子の確保からだ。期限は一年。それが出来たら…まあ、昇進も考えよう。」

卯木「…了解しました。」





 ―同時刻 I.J.H.医療保険健康機関研究室前―



万里「…どうしましょうか。」

鴻「どうしようねぇ。」

祥「どうするかな。」

榎璃「…どうするのよ。」

 四人の、今の状況はと言うと―

 四人は研究室を出た。

 しかし… そこは、研究所のSP達によって完璧に囲まれていたのだった。

榎璃「ど、どーもー…こんちわー……」

男「データを返せ!」

 四人の前にいる…たぶん、リーダー格の男が言った。

鴻「ゴミにやるようなもんは無いね。」

男「んだと…!」

 男が鴻に向かって銃を構える。

 それを合図にしたように、周りの男達も銃を持って四人に襲いかかってきた。

鴻「万里。」

万里「はい?」

鴻「殺し、認めるよ。」

 どこか嬉しそうな表情をする万里。

 しかし、男達の方を向いた瞬間、目の色が変わった。

 万里は愛刀である『青麻いちび』を抜き、手当たり次第に男達を切り捨てていく。男「なっ―!?」

 SP達は、四人を『所詮は子供』と見くびっていたらしい。

鴻「どこ見てんの?」

 鴻が、いきなり自分の着ていたスーツを男に覆いかぶせる。

鴻・祥「余所見注意w」

 祥が三節槍『九曜くよう』で貫き、鴻が両手に持った円月刀『金木犀』『銀木犀』でブッた切る。

 男は、勢いよく血を噴出させながら倒れた。

鴻「さぁて…次はだぁれ?」

 ニヤリと笑って言ってのける鴻。

 その三人の近くにいた男達が引いた。

 そんな中、狙われているのが一人。

 …榎璃だ。

榎璃「ちょっ、鴻!助けなさいよ!」

 榎璃は武器を出す暇もなく、しきりに攻撃してくる男達から逃げ回っていた。

鴻「…阿部の能力使わないの?」

榎璃「あたし、何でか一族と違うらしくて小っさいときから解ってないのよ!…ぅわッ!」

 飛んできたクロスボウの矢が、榎璃の左頬を掠める。

 榎璃は完全に囲まれた。

榎璃「くっそ…!」

 何を思ったか、榎璃は壁に向かって駆け出した。

 ざっ、と男達が包囲の輪を縮める。

 どうやら、榎璃は壁を蹴ってSPの壁を飛び越えるつもりらしい。

榎璃「っりゃ……ッ!」

 思いっきりジャンプし、壁を蹴る榎璃。

 榎璃が頭上に来たため、包囲した男達は急いで身を屈める。

 しかし、何秒経っても榎璃が着地した音が聞こえてこない。

 男達が恐る恐る上を見上げると…

榎璃「…あれ?」

 榎璃はコンクリート張りの何もない天井に、手だけ付けてぶら下がっている。

榎璃「あ!?ちょっと、双子!コレ何!?何かやったの!?」

祥「何で俺らなんだよ…」

鴻「あ、それなんじゃない?榎璃ちゃんの能力って。」

万里「くっついてるが…あれが榎璃の能力?」

榎璃「うっわ使えな!」

鴻「そうでもないと思うけど。」

 そう言いながら、榎璃に銃を向ける鴻。

 男達の輪が一層広がる。

榎璃「え!?ちょっ、待っ―」

鴻「避けろ。」

 『パン!パン!』

 鴻の銃が火を吹いた。

榎璃「うぉっ!?」

 思わず榎璃は足を上げる。

 すると、その足も天井にくっついた。

榎璃「お…おお!?」

 榎璃は手を離し、恐る恐る逆さまに立ってみる。

榎璃「あたし…立ってる!?」

万里「すごいな榎璃!」

祥「スカートじゃなくてよかったな。」

 全員が見上げる中、榎璃は天井を駆け回った。

榎璃「お…おおおおおおおおおおおお!!」

祥「遊ぶなよ…。俺ら、逃げ出さないといけないんだから。」

万里「そうですねぇ…俺的には、あいつらを片付けたいんですけど…」

鴻「そうだね。あんな有象無象、いても何の価値も無いし。」

男達(鬼!?)

 男達の心の叫びも微塵と知らず、二人は武器を構えて突っ込んだ。





 ―3分後―


 二人の傍らには大量の野郎の山。

祥「…行こうか。」

榎璃「……だね。」




 ―00時31分 I.J.H.医療健康保険機関玄関―



 四人は、I.J.H.医療健康保険機関の正面玄関まで辿り着いた。

 見張りも先程の収集で呼ばれたらしく、今はいない。

榎璃「やっと、終わったー」

祥「じゃ、帰ろか。」

万里「そうですね。」

鴻「右に同じー。」

 四人は月明かりの下に走り出した。

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