7 はじめの一歩
更新サボりスギィ!
人々は冒険をこう想像するだろう。
―町中で仲間と出会い、ともに協力し合って強大な魔物を倒したり
―各地の迷宮を行き渡って強い武器を手に入れ、さらなる力を求めたり
―周囲に名を挙げ、英雄と呼ばれて富や名声を得たり
―しまいにはパーティーの女の子といい関係になる
ああ俺だってそんなことを思い浮かべてたさ。
旅に出る前の俺の計画としては平原を駆け抜けて王国の町中を歩き回り、魔法使いや重戦士とかを仲間にして各地を探索しまくりそこそこ有名なパーティーになってデンの親のところに突っ込んで俺の要求を吞ませてデンの夢をかなえさせる。最終的にいろんな美女たちとイチャイチャするというものだ。
なんて典型的なものだろう。だがそれでいいのだ。
別に俺はなんかすごい事を成し遂げようと思わないし英雄だなんてそんなたいそうなもの求めてない。ただ普通に仲間たちと冒険できればそれでいいのだ。
本当にそれで良かった、
いや、そうなりたかった。
「ギィアアアアア!」
「ひぃ!すいませんすいません調子に乗って剣なんてものを当ててすいませんでしたあ!」
俺は今ゴブリンから逃げている。
バックの中に入っていた地図を頼りにここから近くのカリーという街を目指して平原を駆け抜けていたが、途中でゴブリン一匹を見つけこれを自分のデビュー戦にしようと剣を抜いて斬りかかったがなかなか上手くいかず、逆に怒り狂ったゴブリンによって殺されかけていた。
俺は為す術もなくただ逃げ回っていた。ゴブリン一匹にだ。
どうやらゴブリンは魔物の中で最弱らしいがどうやらそれは冒険者にとってだったらしい。
俺は冒険者志望の人間だが、駆け出しも駆け出し。
今の俺は平原を駆け回る一般人といっても過言ではなかったのだ。
(ヤバイヤバイヤバイ、このままじゃ殺される!こんな終わり方絶対に嫌だ!)
とにかく必死に逃げ回ったが運悪くこけてしまい、
あっという間に追いつかれてしまった。
(ここで死ぬわけにはいかないのに、腰が抜けて動けない。どうすれば)
ゴブリンが俺にめがけて飛びかかった。
死を覚悟したその時だった。
「―――っふん!」
ザシュッという音が聞こえて恐怖のあまり閉じていた目を開いた。
そこには先ほどまでに襲いかかってきたゴブリンはおらず、その代わりに白く腰あたりまで伸びた髪の人が剣を右手に携えて立っていた。
「あの、先ほどまで襲われていましたけど、大丈夫ですか?どこか怪我は――」
その人はこっちに振り向いた。
身長は俺と同じ10代後半あたりで雪のような長髪、透き通った青い瞳、人形みたいな小柄な顔に白い肌、男なら間違いなく一目惚れするであろう。
そんな容姿の彼女がまとう防御に向いてないシンプルな軽装の鎧にに下のスカートは裾が膝あたりの長さでそれが彼女の魅力を増していた。
現に俺も彼女に夢中になっていた。周りの音が聞こえなくなるくらいに。
「リアーナ、急に竜車から降りたら変な方向に走り出してどうしたの…ってこの人は?」
後ろから女性の声が聞こえた。誰なのだろうと振り返るとそこには黒い帽子の下から伸びるアホ毛が生えた赤い髪に胸にリボンの付いた黒のローブをまとった、まさに魔法使いと分かる外見の女性が女剣士の元に駆けつけてきた。
どうやら俺のことについて聞いているようだ。
「その人?ああこの人はさっきここでゴブリンに襲われててね、危ない状況だったから助けに行ってた」
「はあ、まったく相変わらずのお人好し、まあそんなリアーナのことが私…あっいや、なんでもない!
えーっとつまりリアーナはここで襲われてたその人を助けたって訳ね!」
「?えっうん」
リアーナという女剣士と魔法使いは仲良さそうに会話をしていた。途中魔法使いは何かを言おうとしていたが何かとごまかし帽子のつばを下げて顔を隠した。
それに対してリアーナという人は不思議そうな顔をして返事をした。
「ところでだけど、ここで人が襲われてるのが分かったのってもしかして…」
「うん、また私の頭も中から悲鳴が聞こえてきて、それで思わず行っちゃった。ごめんね」
「はああやっぱり、まあそんなのたくさん見させられたからなれてるけど、でもやっぱり急に頭の中から近くの悲鳴が聞こえるって大変じゃない?私だったらそんなの耐えられないわよ」
魔法使いはなぜ俺が襲われているのが分かったのかをリアーナに問い詰めていた。どうやら彼女は近くでの悲鳴を脳内で聞くことができるらしい。
すごい能力だな。母ちゃんと同じだ。
「確かに急に悲鳴の声が聞こえてくるのは驚いちゃうけど、でもやっぱり驚くより先に助けに行かなきゃって身体が勝手に動いちゃうんだ」
「あなたって人は…でも流石に次からはみんなにしっかりと伝えてよ!気づいたらどこかに行っちゃって私たち大変なんだからね」
「あはは…ごめんね。でもそんな私に付いてきてくれるレイア…いや、みんなのことが大好きだよ」
「ちょっ!大好きってあんた…///そうやっていっつも私たちを口説くのやめてよ!///
……みんなじゃなくって私だけを見てよ」
「?」
仲良さそうに話し合っている。
レイア?と思われる魔法使いはリアーナに対して叱責をしたが申し訳なさそうに謝ったあと自然に流れるかの如く口説き始めた。これには驚きだ。
それに魔法使いはまるでのぼせたかのように顔が赤くなりあたふたしていた。これを見たら流石にチョロいなと思ってしまった。
(それにしても仲間か…)
最初はカリーの街にいってそこで仲間と出会い、共にパーティーを組んで各地を巡って酒を飲み今までの旅の思い出を語り合うなどと言うことを望んでいた。
だが今はどうだ。上手く剣も扱えずしまいにはゴブリンに殺されかけるというみっともない姿をさらしてしまった。
あんなに胸を張って村から出て行った自分がこんなみっともない姿をさらしてしまったことが何より悔しかったのだ。たとえここに村の人がいてもいなくてもその感情はきっと変わらないだろう。
自分の夢がこんなににも簡単なものでなく当時の俺はとても浅はかな考えだったことを身をもって知ったのだから。
外に出て早々最弱の敵に殺されかけた俺に仲間ができるのか不安になってきた。
こんな思いをするくらいならいっそのこともう村に戻ってしまおうか、なんてことが一瞬頭によぎってしまった。
そんなことはしない、あってはならないのにそんなことを思ってしまった自分が憎い。
「そうだ、ところであなた名前は?あと出身地も教えてくれたらそこまで送ってあげる。流石に一人で野外にいるのは危ないし」
「えっ?ちょっと目的地は?」
女剣士に名前と出身地について聞き、魔法使いは元々の目的から離れたことを聞いている女剣士を凝視しでる。
答えようとしたがある約束を思い出した。
それは、外に出る前母ちゃんに言われた約束を。
自分の名前と村について話さないことだ。そのことを秘密にして質問に答えようとしたとき、母ちゃんとの約束をした場所でのあの光景を思い出した。
今まで俺の行いを見て笑っていた村人たち、旅に出ることに反対していた親、村から脱走するのを手伝ってくれた友達が応援していたのを。
そうだった、俺はなんてことを忘れていたんだ。そんな自分を殴ってやりたいくらいだよ。
こんな程度で俺の夢が砕けるものか、俺の意思は決まった。旅に出て冒険し、絶対に夢を叶えるのだ。
「ああそうですね、失礼ながら個人の事情で話せるのは自分はただの旅人だと言うことです。
送っていただかなくて大丈夫です。自分には成し遂げなくてはいけないことがあるので」
「はあ?ちょっとあんたリアーナが質問を聞いてるでしょ、助けてもらったんだからそのくらいしっかり答えなさいよ」
「落ち着いてレイア、確かに他人のことに首を突っ込むのは良くないことだ。あの人は何も悪くないよ
だから、ね?」
俺が質問をあやふやに答えたことに魔法使いはキレていたが女剣士が俺をかばってくれた。それには申し訳ない気分だ。
「うう…分かったわよそうね、わたしがわるかったわごめんなさい」
彼女は女剣士にがかばったことで勢いが落ち、申し訳なさそうに謝った。
「まあそういうことで、さっさと竜車に戻りましょ。あそこでずっとリッタが待ってるわよ」
「あっそうだった、人助けようとするとすぐ周りのことを忘れちゃう。後で謝らないと」
もともと彼女たちが乗っていた竜車にはリッタという人がいるようだ。俺を助けに言ったせいで忘れていた女剣士は申し訳なさそうに顔をしおらせていた。
「それじゃあ早く乗ってカリーに向かいましょう。行こうレイア」
まて、今カリーといったか?どうやら彼女たちは俺の向かう先と同じようだ。これはまた奇跡と言うべきか運命か…
とにかく、この人たちについて行かせれば安全にいけると感じた俺はともにカリーまで着いていかせるよう頼むことにした。
「すいません、実のところ俺もカリーに向かってたんです。ですのでどうか一緒にそこまで連れて行ってくれませんか?
一人じゃここは厳しいので」
俺の冒険は始まったばかりだ。




