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第38話 捜索そして、分断

 翔と朔夜、ゆうの3人は1階から探索を始める。


「いいか、僕ら以外の生徒と教師は全員、体育館に避難している。コウは天邪鬼が制服を着てると言っていた。だから校舎(ここ)で僕ら以外に誰かにあったらそれが敵だ」


 朔夜はそう言いながら、周りを見回して警戒している。朔夜の後ろを歩きながら翔は後ろから浮いてついてきてるゆうに話しかける。


「物理攻撃は効くのか?」

『一応効くとは思うが、訓練していた管理人だったからな』

「そうか、最悪机や椅子を投げつければなんとかなるか?」

『物理が思った以上に物理だな、少年。……さや』


 ゆうが翔の問いに答えながら、何かを思いついたように手をポンっと打ちながら朔夜に話しかける。翔もつられるように朔夜を見た。


「何?」


 朔夜は教室の扉を開けて中を確認しながら、耳だけをゆうに向けている。何を言い出すんだろうと、翔はゆうと朔夜は交互に見る。


『護身用で持ってる久遠作の武器何個か持ってたよな? 少年に渡したらどうだ?』

「……そういえばあったな。使うの事がないから忘れていた」


 朔夜はそう言うと胸元からペンダントを取り出して、ロケット部分を開ける。すると明らかにペンダントより大きなポーチが出てくる。


「君、銃か弓ならどっちがいい?」


 ポーチの中に手を入れながら朔夜は翔に聞く。翔は首を傾げながらも昔、縁日で射的をしたことを思い出す。弓は触ったことすらない。


「銃の方が、使い方はわかる気がする」


 正直に翔は伝える。朔夜は頷いてポーチから手を出す。するとそこには銃が握られている。それを翔の方に渡す。


「何、その物理法則無視したやつ」


 翔は朔夜の持っているポーチとロケットペンダントから目が離せない。見た目はただのポーチとペンダントだ。しかし、どちらもそれよりも大きなものが出てきた。どうゆう仕組みになってるんだと目を見開く。

 朔夜は早く受け取れというようにもう一度、翔の前に銃を差し出す。


「早く受け取れ。これは久遠作の四次元収納だ。久遠のところに出入りするならそのうち渡される」


 翔は銃を受け取る。思ったよりも軽く、まるでおもちゃのようだ。素っ気なく朔夜は言葉を返す。そしてまたポーチをロケットの中にしまい、ペンダントを首から下げなおす。


「本物の銃じゃないが、妖を麻痺させることのできる弾が自動装填されるそうだ。弾切れの心配はない。使い方は簡単で、相手に向けて引き金を引くだけだ」

「わかった。ありがとな」


 朔夜が武器の使い方を説明する。しかしその視線は周りを警戒しており翔を見てない。翔は右手に銃を握り、人差し指を引き金にかける。そして、左手で銃身を支えて胸元に持っていく。銃の正しい持ち方はわからない。しかし、ドラマや漫画では警戒している時はこんなふうに持っていた気がする。

 

「なぁ、銃の効果は妖? だけなのか? 幽霊は?」

『……少年、冗談にしても味方を撃とうとは笑えないぞ』


 ゆうが少し、翔から距離を取る。翔は慌てて否定する。


「撃たねぇよ。もし、敵と入り乱れた時に誤射で当てないように気をつけたいけど、万が一があるだろ」


 翔はゆうに小声で怒鳴る。ゆうは『なるほどな』と納得した様子だ。朔夜はそのやり取りにため息をついたが、視線は変わらずに周りを見ている。


「久遠が作ったんだから、多分妖限定だと思うよ。僕も試したことないから断言はできないけど」

『よし、少年、誤射は気をつけよう』


 朔夜の返答を聞いたゆうが食い気味に当夜に言う。朔夜はそんな2人を無視して、進んでいく。それに気付き、翔はゆうと目を合わせて、慌てて後を追った。


 そして1階には天邪鬼がいない事を3人は確認して2階に上がる。2階に到着するとちょうどコウが3階から降りてきていた。


3階()にはいなかった?」

「ということは1階にもいねぇってことだな?」


 朔夜とコウは短く意見交換をする。その話を聞き、翔も思った。天邪鬼は2階(この階)にいると。無意識にごくりと唾を飲み込む。緊張からか口の中がパサパサに乾燥してきた。


「ガキ、大丈夫か?」


 翔の顔色が緊張で少し悪くなったのだろう。コウが心配そうに尋ねてくる。翔は首を横に思いっきり振り不安を打ち消す。


「大丈夫だ、武者震いみたいなもんだ」

「いや、震えてはいねぇぞ」


 翔が左手を銃身から離し、拳を握りながら伝えると呆れたようにコウがため息をつく。

 探索組が合流し、戦力が増えたからか翔達は無意識に油断していた。先程まで周りの警戒をしていた朔夜も、少し気が緩んでいる様子が見て取れた。

 しかしこのフロアに敵はいる。気を引き締め直そうと翔は思った。


 朔夜が1階の探索の時と同じように近くの教室の扉を開けようとした。しかし、朔夜が扉を開ける前に内側から(・・・・)扉が開いた(・・・・・)


「えっ?」


 そして、中から手が伸びてきて朔夜の手を掴み中に引き摺り込み、すぐに扉が閉まった。


「ーーっ、チカ!?」

『さや!!』


 あまりにも一瞬のことで何が起きたのか把握できたのは扉が閉まった後だ。慌てて扉を開けようとするが、まるで鍵がかかっているかのように開かない。隣でゆうが壁を通過しようと、体を近づけるも何かに阻まれるように、扉に近づくゆうの体は弾かれていた。

 その様子を見てコウはもう1つの入り口まで走り扉を開けようとしていたが、同様に開かないようだ。


「ちっ」


 コウが舌打ちをして神獣の姿に戻り、扉や窓を破壊しようとするが、ゆうと同様に何かに阻まれるように弾かれていた。


『くそっ、この教室だけさらに空間が隔離されてやがる』


 コウが忌々しそうに呟きながら人型に戻る。そして手を扉の前に向けてどこからか水球を出す。そして、それを扉に投げるように手を振るが、やはり阻まれ、霧散する。


「間違いなく、あいつを中に引き摺り込んだのは天邪鬼だ。何が狙いだ」


 中に入れない焦りからか、コウが教室とは反対の窓ガラスを拳で殴る。ガシャンと音を立ててガラスが割れる。


『……さや』


 ゆうが唖然とした様子で扉を見つめていた。その場に残された3人は敵の居場所はわかったが、どうすることもできずに教室の前から動く事ができなかった。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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