プロローグ
新月の夜、そこは一切の光がなく辺りは夜の闇に交ざり、紛れていた。そんな静かな闇の中に石造りの階段が、浮世の物ではないように浮かび上がって己の存在を主張していた。
その階段は両脇を鬱蒼と茂った木々に挟まれており、どこか人が踏み込んでは行けないような雰囲気を醸し出していた。長い階段を上がると広い境内をもつ神社が建っている。この辺りだとそれなりに有名で歴史のある由緒正しい神社だ。
闇が支配して人どころか生き物の気配すら感じられず、浮世離れをしている印象を抱かせる境内の本堂の裏にある1本の大木の神木に1つの影がもたれかかっていた。小柄なのはわかるが、あとは夜の闇に溶け込んでいて性別すらもわからない。
そこには、その影以外は見当たらない。しかし、影はまるで自分以外にも誰かいるかのように口を開く。
「それで僕にどうしろと? 何度も言ってるだろ。僕が動くのは最悪の場合だって。………は? いや、知らないし。………そこをなんとか? イヤ、無理。………んでだって? 君らは僕を頼りすぎなんだよ。少しはなんとか……できる問題じゃないもんな……」
そう言うとため息をついた。
そして、考え込むように小さく唸る。
「はぁ・・・・・・。君ら、うるさい。あー、もうわかったよ。やるよ、やればいいんだろ!?」
自暴自棄になりながら叫ぶと、木から背中を離した。
「はぁ、僕は面倒事が死ぬ程嫌いだって言ってるのに、君達は本っ当に人の気持ちを考えないよね」
まぁ、当然だけどさと、小さく呟くように付け足して、そのまま境内を後にした。
影の姿が闇に飲まれ見えなくなると、ガサガサと木々を揺らす大きな音が響いた。そして、境内は先程までの出来事が嘘かのように不気味な沈黙と夜の闇が支配した。




