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 番外編 素敵なお茶会。

王子妃教育が始まってから、時折、思い出したように王妃陛下にお茶に誘われる。


もちろん、私とスサナ様二人そろって。いきなり連れてこられた私たちを気遣ってくれているのかしら?王子教育の進捗状況とかが気になるのかしら?


いつもの通りスサナ様を誘って王妃殿下用の中庭に出かけると、先客がいるようだった。王妃殿下はまだお見えになっていないようだ。二人の客人はもう着席して和やかにお話されている。真っ赤な派手なドレスをお召のたいそう美しいご令嬢と、同じくらい派手なブルーのドレスをお召のご令嬢。私たちと年もそう変わらないように見える。私たちを見ているはずなのに視界に入っていないようなそぶり。

しかも、上座の王妃殿下の座るであろう椅子の両脇に座っている。


(ゴメス公爵家のパトリシア様とペレス公爵家のシルビア様でございます)

私付きの侍女のラウラが私の後ろで頭を下げたまま、小声で教えてくれる。


ふむ。


席を立つどころか、礼の一つもないご令嬢は扇を広げて、ちらちらとこちらを伺いながら二人で笑いながら何やらささやいている。もちろん、王妃陛下付きの執事も護衛も侍女もメイドも後ろに控えている。アルフォンソ様の秘書官もいるわ。


「ルシア様、スサナ様、王妃陛下は少々遅れます。先に席に着かれてお待ちください。」

いつもの王妃陛下付きの執事が、椅子を案内しようと一歩出る。


「そちらは王妃陛下の侍女ですか?」


一瞬の静寂。


侍女や女中に至るまで、もちろん当の執事も、私の発言の意図を理解したようだ。と、思う。

パトリシア嬢とシルビア嬢以外は。


「んまあ!なによ!あなたの方がよほど侍女みたいな恰好じゃないの!その地味なドレスは何?第一王子の婚約者として恥ずかしくないの?」

「そうよ。私たちはわざわざ今日のお茶会のためにドレスをあつらえたというのに、あなたのその粗末なドレスでは失礼なんじゃない?」


「まあ、私のことをご存じですのね?」


「田舎の侯爵家の娘でしょう?そちらの子に至っては、属国の娘じゃないの。ああ、いやだいやだ、田舎臭いわあ。ねえ、シルビア様?」


周りの人たちが緊張していることなどお構いなしに、赤いドレスのパトリシア嬢が扇で隠しながら顔までしかめている。


そうね。陛下の執事も侍女も貴族籍ではあるけど、このメンツで、この子たちに意見はできないわよね。お二人とも3大公爵家のうちの2つだもの。


「まあ、侍女なのに私たちのことをご存じなんですね。私は田舎の侯爵家の出ですが、先日正式に第一王子殿下と婚約いたしました。こちらのスサナ様も同じく第二王子殿下の正式な婚約者です。私、まだ王子妃教育の途中ですので…貴女方が私たちに礼を尽くさないのがよく理解できませんの。」

「……え?」

「このドレスも着回ししておりますの。婚約者のアルフォンソ様が質素倹約をうたわれておりますのに、派手な服装は婚約者としてどうかと思いまして。他には、なにか?」


そこまで言って、にっこりと笑って見せる。

公爵家の令嬢と、王子の婚約者。

どちらが格上になるか、この子たちはわからないのかしら?まあ、正式に婚約する前ならともかくとして。


「い…田舎臭いのよ!そんなんであの麗しいアルフォンソ殿下に並び立とうなんて!」

「うちの実家の領では主に小麦を作っておりまして、スサナ様の国元も同様です。貴女も召し上がるでしょう?パンとかパスタとかお菓子とか。全て小麦でできております。まさか貴女…パンはあの形で木に実っているなんて思っていらっしゃるんじゃないですよね?」

「……」

「その小麦を作るために、それは土臭くもなるかもしれませんね。決して恥ずかしいことではございません。」


「あ、貴女みたいな田舎者を、賢く冷淡なアルフォンソ殿下が相手にするわけないでしょう?」

「ああ、あの方は確かに賢い方ですが、決して冷淡ではございません。強いて言うなら、真面目?合理主義?」


よくそう言われるみたいね…冷淡、だの冷酷、だの。ただただきっちり仕事しているだけなんだけど?


形勢を読んだ侍女が、ささっと座っている二人の前の茶器を下げる。


「それとも…なんでしょう?この婚約は王命ですが、王命に反することをお考えで?」


私がそこまで言ってようやく、鼻息の荒かったご令嬢方の一人、シルビア嬢がさっと立ち上がった。

「た、大変失礼いたしました。ペルス公爵家のシルビアと申します。第一王子殿下の婚約者のルシア様及び、第二王子殿下の婚約者のスサナ様に、ご挨拶申し上げます。」

と…ようやく礼を尽くしていただいた。そそくさと自分で末席に移動していった。もちろん、私たちが着席していないので立ったままだが。


ふうっ。さあ、貴女はどうする?パトリシア嬢をじっと見る。


パトリシア嬢は赤くなったり青くなったりしながら、それでもシルビア嬢と並んで末席まで移動し、詫びを入れて名乗りを上げた。


ちょうどそのタイミングで、王妃陛下がお出ましになった。


「少し遅くなってしまったわ。今日はあなたたちと同世代の客人を呼んでおいたのよ。楽しいお話ができたかしら?」


「ええ。陛下。とても有意義な会話ができました。お心遣いありがとうございます。」











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― 新着の感想 ―
ふふふ、アルフォンスがちゃんと気づいてふるまうまで(いやきっと結婚するまでは)周囲の貴族令嬢がどんな嫌味や妬み嫉みを押し付けてるかなと思っていましたが。 自分がふさわしいのかなと思いながらも、正しく婚…
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