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夢桜  作者: 空亜
第1章
16/22

15. 采花の場合②



「………ここ、どこ?」


目を開けると空があった。

視界いっぱいの青い空。

雲は1つもない、快晴。


こんな広い空を見るのはいつぶりだろう。

電線も電柱も、高いビルも見えない。


「大丈夫?これ、飲んで?」


側にいた見覚えのある金髪の少女が、プラスチックのコップを目の前に差し出した。

受け取って中を見ると、透明な水のようだった。陽の光でキラキラして見える。


「ありがとう」と言って飲み干した。

なんだか少し、甘い味がする。クラクラしていた視界が少しずつハッキリしていくのを感じた。貧血だったのだろうか?


「あはっ」


声にびっくりして見れば、金髪の少女が笑いを堪えているようで、堪えていなかった。


「ど…うしたの?」

「ううん、ほんと、聞いてた通りの人だから」


愛らしい笑顔にキュンとした。少女の笑顔の破壊力はすごい。


「聞いてた通りって?」

「んーとね、ほら、会ったでしょ?こんな目の、ポニーテールの女の子!」


少女は指で目尻をきゅーと上に引っ張った。つり目を表現しているらしい。死神さんのことかな?


「あの子が言ってたの?あの子はどこ?」

「さっきまで一緒にお姉さんが起きるの待っていたんだけど、今は別の用事に行っちゃった。また顔出しにくると思うし、気長に待と!」


「此処で待つの?私、帰らなきゃ」

「どこに?」

「家にだよ。」

そうだ、きっと私を探してる。

「置いて死のうとしたくせに?」

「!」


置いて?

そうだ。私は確か、包丁で胸を…

思い出した途端に胸が痛みだした。

胸に手をやって抑えると余計に痛い。


「傷口、まだ塞がってないから抑えない方がいいよ。」

「!傷口…わた…わたし、どうなって…あの後…どうなった…の…?」

「包丁ね。心臓を少し傷つけたよ。血がたくさん出て…お姉さんの身体はもうダメだったの」

「…えっ…?」


どういうことだろう。でも私は今此処にいるのに。やはりあの少女は死神で、此処は死後の世界なのだろうか?


「それでね。こっちの世界だと治るみたいだから、連れてきちゃった」


…ん?やっぱり死んでない?


「…あなたは、死神なの?」

「ううん。私は魔女。ただの魔女。

私と、私の仲間たちで作ったこの世界は夢の世界なんだ。だから不思議なことがたくさん起きるよ。これから少しずつ、治していこうね。」


頭が追いつかないが、どうやら私を生かすためにこの魔女である少女は自分達の作った世界へ連れてきてくれたらしい。


身体が治るまで此処にいなければいけないようだ。


「いつ、帰れる?」


少女は目を伏せて答えた。


「ごめんね…もう戻れないよ」

「…え?」

「あのね、お姉さんには魔力がほとんどなくて…魔力がない人間が世界を何度も行き来するのは身体と魂に負担がかかりすぎてダメなの。こっちに無事連れてこれただけでも安心してる。」

「…そっか…なら仕方がないね。でも、助けてくれてありがとう」


方法や結果がどうであれ、助けようとしてくれた事は素直に嬉しい。例えそれが私の意に反している事でも。


「お姉さんは本当に…、。」


少女は切なそうに最後まで言わずに、笑った。








「ねぇ、家はどうする?どんな家がいい?あまり大きかったり細かかったりすると大変だけど、希望のお家をみんなでつくったげる!」



金髪の少女、アクアはそう言った。

…作るってどういうことなのだろう?


「うーんと…

明るくて、暖かくて、寂しくないお家が、いいな」


私がそういうとアクアは難しい顔をする。


「ふむ…」


---困らせてしまった。

「ごめんね、やっぱり、なんでもいいよ」


「ううん!今はまだこの世界に生き物って少ないんだけど、待っててね!!必ず、お姉さんが寂しくないおうち、作るからねっ!!」


アクアはそういって、私の手を取り指切りをするかの様に小指を絡めるのだった。




少し歩くと、風が吹いた。

ぶわっと髪が揺れる。

思わず目を閉じて、開いた頃には目の前に1人の少女がいた。死神の少女と同じくらいの歳だろうか?緑の瞳がキラキラとしている。


「おねーさん、だれ??」


びっくりした。いつのまに来たんだろう。


「えっと、采花、です。」



「采花ちゃん!」

ぱあっと明るくて笑った。

---なんて人懐こい笑顔なのだろう。


「あたし、風呼。風を呼ぶって書いて風呼だから!風の子供じゃないよ?」


漢字にこだわりがあるらしい。


「はじめまして、風呼ちゃん」


挨拶をすると、風呼はえへへと嬉しそうに笑った。


「風呼、何かあった?」

「あ、そうだ!もう〜アクア、探したんだよ〜!島を一周してきちゃったよ!人がね、流れて来たよ!青い髪の男の人だよ!すっごい、濃い顔なの!ルーブル美術館にある…なんだっけ?ミケランジェロ?みたい!!」



アクアの問いに、風呼が興奮気味に答えた。

その早口で大きめの声に、自分に言われたわけではないのに圧倒されてしまう。


「最初はね、ここの崖に流れてきたんだ!だから引き上げてー、そしたら、ちょうど海斗が来たから、一緒に塔に連れてったよ!!」

「言葉は通じるの?」

「それがね!通じないの!ファミと同じとこから来たのかなぁ〜〜?でも顔の感じとかが全然違うから、国は違うっぽいんだけど!!」

「今はどうしてるの?」

「なんか怪我沢山してて、すごく弱ってて、リビングのソファに座らせたら、寝ちゃったよ!」

「そっか〜。風呼、采花のことお願い!」

「はーい!塔まで連れて行けばいいんだよね〜?」

「うん!采花、風呼について、ゆっくり来てね」

そう言うや否や、アクアはふわっと何かに座るような仕草をして、「せーのっ」

掛け声とともに勢いよく、地面を蹴り…


そのままロケットのように少女は飛んでいってしまった。


「わ、わぁ…すごい…さすが魔女さん」

「そうだよ、魔女っ子アクアだよ!!ロマンだよね!!でも箒に跨って欲しいよね〜〜っ」

風呼はうっとりと、姿が小さくなっていくアクアを見送った。


「風呼ちゃんは、魔女さんじゃないの?」

「あたしは魔女じゃないよ!人間でもないけど!

「そっかぁ。」


頷くと、風呼はキョトンと采花を見る。


「…どうしたの?」

「あ、いや、それだけ?って思って!予想外の反応だったから!魔女でも人間ないならなんなんだよって言われるかと思った!!」

「えーっと…」

あまり考えてなかった。

魔女でも人間でもないという事が分かって満足してしまっていた。


「聞いてもいいの?」


聞いた方がいいのか悪いのか分からなかったので、直接尋ねてみることにした。

すると風呼はあははっと笑う。


「えーっとね。聞いてもらってもいいんだけどね、あたし、あんまりうまく説明出来ないんだよね!簡単に言葉で言うことは出来るけど、それで言葉の印象で変なイメージ持たれると嫌だし!この世界では、そーゆー種族?的なのがない存在でいたいなと思ってて!種族は風呼〜みたいな!!」

「なるほど!!それいいね!!」

「えへへ。ありがとう!!」


偏見とか、思い込みとかはどうしようもないと思う。なのでやはり、私自身が風呼ちゃんと関わって、風呼ちゃん自身を知って行こう。


采花は風呼の照れた笑顔を見ながらそう胸に決めた。






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