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5話 ゲームの達人

「やったー!取れたー!」


景品を落とすとともに切り替わる獲得画面をわたしは真剣に覗き込む。


「最近はパソコンでもクレーンゲームが出来るからいいね」


引きこもりになってからクレーンゲームとは縁が無くなっていてもうすることは無いだろうと思っていたけれど。

ここ数年ネットのクレーンゲームが続々と開発されたおかげでこうして家に居ながらにしても遊べるようになったのは

ありがたい・・・

私は早速発送依頼をしほかにすることも無いのでパソコンをシャットダウンする。


そして・・・

パソコンのすぐ横に置いてあるスマホの画面をひらき

今日の日付を確認し深呼吸をする。

8月4日で明日があおいさんとお出かけをする日。

・・・緊張する。

会う日を約束をしたメールを最後にあおいさんから連絡は来ていない。

どうしたんだろう、あおいさん・・・。

少しだけ心配しながらも私の方から連絡することも無かった。

そういう積極性を持っていないから。うーんなんという簡単な理由だろう・・・。



その日のまだ深くない夜。録画していたアニメを見ていると

急にチープなメールの着信音が部屋に鳴り響く。

もしかして・・・もしかしなくとも


『エレナちゃん、こんにちは!久しぶり。元気だった?

ずっと連絡できなくてごめんね・・・。

明日会えるの楽しみにしているね^^』


パソコンのそばにさっきから移動せず置いたままになっていた

スマホを起動。

するとやっぱりあおいさんからだった。

メールが来なかった具体的な理由は書いてないのがちょっと気になる。

けれど何事もなそうだから良いか・・・な?


『はいげんきですわたしも合えるのたのしみです』


私はまた時間をかけてメールを打ち終え送信。

そういえばメールの文章の下に漢字一覧とかいろいろ出てから押してみたけど・・・うーん

一部しか変換されなかった。・・・・しかも間違ている気がしてならない。




8月5日


寝転がったまま時計の針を見るとまだ10時だった

なんだぁまだ2時間も寝られると私はもう一度眠い目を閉じる。

あれ・・・そういえばあおいさんとの約束の時間何時だっけ・・・

11時・・・あーそうかまだまだ

うん・・・!?


「もう一時間しかない!」


私は慌てて飛び起きベッドから降りて

どうしよう・・・何をするかもわからない。

とりあえず深呼吸。

そうだ・・・とりあえずお洋服に着替えよう!


もたもたと着替え終えて・・・

次は・・・朝食(ラーメン)はいいか。あまりお腹もすいてない。

そのままカバンを持ち玄関へと向かう。


玄関での身支度もすませていよいよ扉を開け放つ!

と同時に帰りたくなった・・・

とっても暑い。

この前よりも暑い。夏ってこんなに暑かったかな。長年家にいたからわからない。


蝉の声が鳴り響くなか引きこもりなのに夏を身体と心でそこそこ感じながらも

わたしはゆっくりと公園へと歩いてゆく。


夏休みだからところどころ小さい子たちが歩いていたり

草木を眺めたりして喜んでいる。


私は小さい子も苦手なので傍を通るたびに脅えた。

・・・小さい子達はまったく私の事は気にも留めていなかったけれど・・・。



苦難を超えて~公園へとたどり着いた私は

時間を確認しようかなぁなどと考えかばんからスマホを取り出し・・・。


「エレナちゃん!」


「うあ・・・っ!」


びっくとしながら慌てて振り向くとあおいさんがいた。


「ごめんね、びっくりさせちゃった?」


「い・・・いえ大丈夫です」


正直すごくびっくりしたけれど申し訳なさそうなあおいさんを見て

大丈夫なふりをする。


「良かった!改めて、エレナちゃんおはよう。今日は来てくれてありがとう」


「お、おはようございます」


しばらくなぜか私たちは見つめあってしまう。

笑顔が可愛いですねなんて心の声を言えば会話が弾むのかもしれないけれど

・・・いや弾まないかな?


「早速だけど、出発しよっか?」


「は・・・はい」


公園へを出てわたしたちは街へと歩いていく。

さっき歩いた疲れも出ていつもよりペースが落ちる・・・けれど

となりにはあおいさんがちゃんといる。

今日も合わせてくれてるのかな・・・?


「そういえばエルヘヴンのコミック買ったよ~」


「え、あっそうなんですか?」


そういえば前に買いたいっていってたなぁ。本当に買ってくれたんだ。

ちょっと嬉しい・・・!


「うん!まだ3巻までしか読んでないけれどイラストが綺麗だしすごく面白いなと思った!

エレナちゃんは好きなキャラいる?」


「あーえーとロシイちゃんが好きです」


「いいね~!水子ちゃんみたいに強いからエレナちゃんが好きそうな感じしたよ!」


「強い女性は憧れます・・・」


あおいさんとお話ししていると街へとたどり着く。不思議な事にいつもより早く感じて、疲れもあまり無かった。

もしかして魔力があがったのかも。

自分が間違いも無く人間界の人間なのも意図的に忘れそうになりながら少しテンションがあがってしまう。



「うーんどうしようか。そうだっお昼だしご飯でも食べようか?」


「はい・・・おねがいします」


「ドーナツ屋さんで良いかな?」


「はい・・・それで」



今回もまたあおいさんにほぼ行き先をおまかせして

私たちはいつも行くドーナツ屋さんへと入店。


夏休みだけあってやっぱりすごい人がいる・・・

あまりはっきりと確認することは怖くて出来ないけれど制服来た人なんかもいる。

多分あおいさんと同じぐらいなので・・・まぁ小中学生よりは・・・なんとか。


「・・・エレナちゃん?どうかした?」


「あっ・・・なんでも」


座席を確認する私をおかしく思ったのかあおいさんが不思議そうに尋ねる。

今はおおいさんとの事に集中しないと・・・。


「そっか・・・エレナちゃん何が食べたい?」


「えーと・・・以前と同じの」


「わかった!じゃあ買ってくるね。座席で待っててくれる?」


「はい・・・」


座席手前の方もあいてるけれど・・・人が多くていやだな。

私はわざわざ人気が少ない奥の席を選びそこへと座るなり

こんな些細な事でもあおいさんにおかしく思われないか心配になる。

なんか・・・ちょっとつらい・・・。

言ってしまった方が良いのかな・・・

ふとそう感じた時

ドーナツをトレーに乗せてあおいさんが席へとやってくる。


「エレナちゃん・・・?どうかした?」


「えっ・・・?」


「あーえーと・・・哀しそうに眼をつぶっていたからどうしたのかなぁって?」


あおいさんは心配そうに見つめる。

おかしく思われないか心配になりながらまたそんな行為をしてしまった。

気を付けないと。


「いえ・・・大丈夫です」


「そっか・・・。ドーナツチョコレートといちごので良かった?

飲み物はオレンジジュースで」


「はい・・・ありがとうございます」


あおいさんは私の前にお皿を置いてくれた。

小さなお皿に頑張ってのっているドーナツは今回も相変わらずおいしそう。

早速、一口・・・


(うんんんんんんんうまぁあああ)


「美味しい?」


「あ、はい」


絶頂中の私を見ている、あおいさんが笑顔で見ている、いや苦笑いかなぁ。

そしてリアルだとそっけない私も相変わらず・・・。


ドーナツをまだ一口も食べないであおいさんはカバンから何かを取り出している

なんだろう?


「そういえばエレナちゃんにお土産買ってきたの~」


「え・・・?」


ようやく取り出したファンシーな袋を戸惑いながらも受け取る。

あおいさん何処かおでかけしたのかな?


「気に入ってもらえるかわからないけれど・・・良かったら開けてみて」


「あ、ありがとうございます」


開けてみるとお魚を加えたねこのストラップだった。

か、かわいいいい!


「気に入ってもらえたかな・・?この前ねお友達と旅行に行って来たの」


「はい。そうなんですか・・・」


いいなぁ・・・

・・・あれ?引きこもりなのになんでうらやましがってるのわたし!


「エレナちゃんは夏休みどうしてた?」


「あーえーと・・・とくに何も」


ひたすらアニメ見て、ゲームばっかりしてた・・・とは

あおいさんは同士だけれどなんだか言いづらい。

どちらかといえばあおいさんはリア充なヲタクみたいな感じだし・・・。

現に夏休みに友達と旅行なんていうイベントもこなしているじゃない。


「そうなんだ?・・・もし良かったら今度一緒にどこかにお出かけしない?」


「それは・・・えーと・・・今とは違う感じで?」


「うん、エレナちゃんと旅行したい」


なんと・・・・!

うらやましいという気持ちが伝わってしまったのかなぁ。

うん・・・・でもやっぱり。


「ありがとうございます」


引きこもりという事を考えたらどうがんばっても無理と感じ

私は誘ってくれたお礼だけを言い具体的な承諾や不承認は告げなかった。


「楽しみにしてるね」


「はい・・・・え」


私は無意識に返事をしてあとから静かにあおいさんの言葉の意味を頭で繰り返し

目の前の笑顔のあおいさんを見る・・・。可愛い・・・いやそうじゃない!

承諾してないよ・・・わたし?

もしかしたらありがとうって言うのが良いよの意味にとらわれたのかもしれない。


「この近くにゲーセンがあるのだけれどエレナちゃんはゲーセン好き?」


あおいさんはようやくドーナツを食べ始め次の話題へと突入する。

ゲーセン・・・今現在はネットのゲーセンなら。


「はい・・・好きです」


「じゃあ、食べ終わったら一緒に行かない?」


「いいですよ・・・」


ゲーセンなら薄明りだしあまり人の姿はわからないかな?

それにちょっと・・・行きたい。



少し歩いたところにこじんまりとしたゲームセンターがあって

そして外から見たところやっぱりちょっと暗い・・・

懐かしい気持ちになると同時に切なくもなる。

あのころは・・・しあわせだったから。


「じゃあ入ろうか・・・?」


「はい・・・」


応えつつあおいさんを見上げる

あおいさんはどうなんだろう・・・・なんてまた自分で何もしないで期待するのは

辞めよう。


店内に入ると薄暗い明かりと賑やかな音楽が流れていて

あーやっぱり変わらないとまた懐かしい気持ちになる。


「じゃあエレナちゃん見てまわろっか?」


「あ、はい・・・!」


見て回ると当然ながら景品がたくさん並んでいた。

なんかわくわくする・・・!

おお、しばにゃんデラックスセットがある!ネットキャッチャーですぐ品切れになって取れなかったのだ。


「しばにゃんかわいいね・・・!」


「欲しいです」


私は財布を取り出し素早くワンコイン投資する!

そして・・・


「すごいね、エレナちゃん!」


「ありがとうございます」


箱に爪をひっかけ持ち上げ物騒な音を上げながら

獲得口へ景品が落下。


あおいさんは感心したような表情で褒めてくれた。

ネットでも獲得おめでとうございますぐらいの表示は出るのだけれど

生の人間に言われるとちょっと新鮮な気持ちなる。


「エレナちゃんうまいんだね・・・!」


「いえ」


再び見て回りながらもあおいさんはまだ興奮が冷めていないのか

わからないけれどとても楽しそうだった。

そうだ・・・・。


「あ、あおいさん・・・」


「うん、どうしたの?」


「あ、あの好きなキャラとかいますか」


私は恥ずかしがりながらも頑張って告げると

あおいさんは少し迷ってから


「そうだねぇ、ゆるっくまかなー。エレナちゃんは?」


「わ、わたし・・・は。よすみぐらし・・・」


「いいね~可愛いね!」


ゆるっくまが好きなあおいさんは可愛いなー

なんとなくあおいさんのイメージと合って・・・

まぁそれは置いといて。

えーと・・・

私は並んである機体を素早く観察する。


「あ、よかったらあれとります」


私は少し遠くの方にゆるっくまの特大ぬいぐるみがいれてある

機械を指差した。


「え、いいの!?」


「はい迷惑でなければ」


「迷惑なんてそんな!嬉しい。でも無理はしないでね」


「はい・・・!」


ゆるっくまのぬいぐるみが置いてある場所へとあおいさんと

移動しワンコインを投入!


そして・・・


「エレナちゃんありがとう・・・!」


1発で獲得したゆるっくまを取り出しあおいさんへと渡したら

嬉しそうに抱きしめてお礼を言ってくれた。

か、可愛いな・・・・。


「いえ・・・私多分何処にもいかないのでおみやげのお礼も出来ないとおもうので」


この発言はちょっと引きこもりっぽいかなー

と焦ったけれど


「そっか・・・。ありがとうね、エレナちゃん」


あおいさんは何とも思わなかったのか深く尋ねられることはなかった。




解散場所の公園へと向かう途中。

大きい袋にいれてもらったゆるっクマをあおいさんは持ち歩く。

なんだか・・・


「すいません、荷物になりますよねそれ」


気になってしまい私は思わず問いかける。


「ううん、そんなことないよ~!持ってるだけで幸せ」


ゆるっくま本当に好きなんだ


「それにね・・・」


「はい・・・?」


「エレナちゃんがとってくれたから幸せな気持ちも大きいと思うんだ」


・・・・どきっとしてしまった。それも嬉しさの方で。



「今日もありがとう。またね・・・」


「はい・・・それでは」


また・・・まだあるのかな。


「また会えるよね・・・」


意味深なあおいさんの囁きに私は振り返れず歩き出す。




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