セルシア様見守り隊員の回想
誤字報告いただいた方ありがとうございました。訂正させていただきました。
こんなふうに表示出てくるのですね。
ありがとうございます。
◇
いきなりだった。何かに押し出されるように俺という意識は浮上した。
それはある言葉を発した時──その言葉を口にした瞬間に前世というか別の世界から転生かな? をしたというか何というか、そんな記憶が覚醒してしまったのだ。
これが転生かって思った。俺という意識は微妙に朧げだけど。
どう死んだのかも、過去の名前とかもどう生きたかも微妙にしか思い出せない。
徐々に思い出していくのか、忘れていくのか。
ま、多分二十年近くくらいは生きたんじゃないかな。成人はしていた気がする。気がするだけかもだが。もっと生きたか少なかったかはわからない。
ま、この世界に今初めて意識が芽生え産まれたとしたら、俺は0才かな? こんな0才嫌だけど。
色々なものが転生の時に欠けたのかもしれない。
前世? の記憶を持って移動しているのおかしいけど、移動先の世界に全部は持っていけずにぼろぼろっとこぼしたのかも。
まぁゆるいけどそこそこひっそりオタクとしての知識はだいぶ守ったみたいだけどな。手に残ったのかこれか? 守ったのは。大事だったのはそれか。俺らしいわ。
ま、現在進行形で元々の意識と俺の意識が違いすぎてそれでいて同一で。混乱しすぎてめちゃくちゃだ。
まぁふたつの意識というか記憶というか、ひとりの人間の中に入ったらそりゃ色々あるよね?
なんだこりゃ? だし。
俺はそこそこゆるいオタクだった。ガチガチのガチではない。ふわっとオタク。
嗜みとして、そこそこ異世界ファンタジーは履修していた。
そんな記憶が遠いけどある。どんなのをどれだけ読んだとかは覚えてないんだけど。ざっくり記憶しかないのが口惜しい。
やっぱり好きだった。剣と魔法の世界。憧れじゃない? 浪漫だよね。格好いいよね。そう、物語ならね。読んでいるだけなら楽しいし。
自分には無理って思ってたけど。
だって俺そういうのやっぱり慣れる気しないし、普通に物騒で怖い。
モンスターとか俺戦えるか自信ない。まぁ命かかればやるしかないかもだけど。でも妄想じゃなくて、現実で自分が戦闘とか出来るか自信ない。大した中身でもないしな。ただのひ弱いオタクだからね。
もし、チートとか貰えたからってどうにかなるの? 中身は俺で。ならないよね。持ち腐れるよ。
物語の主人公達はすごいなって思う。運命も宿命も無理ゲーじゃない?
俺は無理。
ハーレムも無理。女の子いっぱい好かれる愛される。そりゃ憧れるさ。誰かれなく惚れられるの。
でも現実は無理と思う。そして俺はツンデレもヤンデレも物語ならいい。それはそれでいいものだでいい。
でも現実だと、俺にツンツンしてきたらデレに気づかず謝って去りそう。
俺が原因で病まれてもだし、気づいたら早めに、謝って去りそう。脱兎だ。
逃してくれるかは別として。
うん、全力で逃げる。回り込まれても。でもなんか逃げ切れるだろうか感あるけどさ。
そんなイメージ。あくまで今ふとわいたイメージ。
二次元はいい。平面だから。いっぱいでも平面だから。
たくさんの女の子を現実でうまくさばけるコミュ力ないよ。
まずフラれるよね? チートで惹きつける? でもさ、ひとりでも大変だと思うし。俺には荷が重い。大事な女の子がひとりいたらいいかな。いたらいいな。
女の子と付き合った記憶ないし。二次元ならあるけどさ。二次元は別でいいよな?
どうしても、どうしてもなら平和な街で平和にモブしていたい。平和を守ってくれてありがとうと勇者とかを崇めたい。遠くからすごいなって思いながら。
そんな俺だからかトラックに轢かれたり、すごい神様にチートとかあれこれ貰ったりもらわなかったり、冒険者や勇者になったり、覇王になったりとかそういうパターンではないみたいだ。よかった。俺向いてないから。
向き不向き見てくれてありがとな。
じゃあ、これは──
結局周りを見渡して、どうもこれは乙女ゲームの世界に転生パターンだと思った。
きらびやかだ。お貴族さまの集まりっぽい。学院の卒業パーティー。
一応少しだけ気になったのだけやっていたものの中のアレだったかな?
タイトル忘れた。なんとかの乙女だったか、乙女のなんとかだったか。いや、違うタイトルだったか。うろ覚えだけど、ざっくりストーリーと登場人物は覚えていると思う。
向いてるか? と言われたらどうだろ? モブならまぎれていけるかな?
このスチル覚えている。見たよ見た。
卒業パーティー、糾弾、婚約破棄宣言。静かに去る予定の美しき婚約者。
美しき婚約者のセルシアが綺麗なんだよな。悲しげだけど。憂いを秘めた表情もいいよな。絵になる。
スチルだったから絵だけどさ。
銀の長い髪。澄んだ青の瞳。美しい顔。なんで振られ役なんだよと思ったね。才色兼備なんだよね。政略結婚でもさ、婚約者のこと普通に好感持っていたのに、婚約者がひどくなっていって。傷ついていくの。
もったいないからもらえるなら俺がもらいたいよ。もらえる訳もないから、そっと遠く後ろから見守りたい。それなら許されるかな?
その美しさを崇めたい。俺は断然セルシア派だったから。
本当タイトルなんだったかな? つい宣伝を見てしまい、絵いいかも。この子好きかな。好きな声優さんが何人も出ている。よし、買おうで。
この子好きがセルシアだった。声の人も好きな声優さんだったし。
でもさ、ひどいよね? 元の世界なら学生くらいの女の子にさ、貴族って言ってもか弱い女の子にさ、大勢の前で、恥かかせるんだからひどくない? 鬼だろ?
そう、何故か綺麗すぎるセルシアが目の前にいる。めちゃくちゃ綺麗目が潰れそうに眩い。
何故か近くに寄り添っているメリサ。このゲームのヒロイン。
容姿は可愛い系。デフォルトのヒロイン名がメリサだったからか、メリサなんだろう。特に変えても変えなくてもよかったから俺はメリサでプレイしてたし。
実は婚約破棄ってなるのは、メリサの力でラルシレドってセルシアの婚約者が洗脳されているから。
メリサ可愛いけどルートによってはなんだか怖いよ。
そりゃヒロインだしさ、ゲームしている時はチート万歳だったけど、怖いよいざ対面するとチート様。魔女悪女だよ。
細かい話覚えてなくて、セルシア様綺麗美しい、そっと後ろから見守りたいだったしか頭にないんだけどね。
そんなメリサはメリサで何か叫んでいて、内容が、こいつもまさかの転生者? と思った。
人のことより自分で手一杯だったけど。
でさ、今更の疑問なんだけど、俺なんで俺が婚約破棄だって口にしてるの!
◇
そんなかんじだった。初め──
まさかさ、俺がラルシレドだなんて思わなかったよ。最低男だしさ。洗脳されても婚約者にあれはだめだ。俺なんだけどさ。
ヒロインメリサのチート力に逆らえるはずもないかもでもさ、頑張れよラルシレド。こんな綺麗で素敵な婚約者なんだからさ。
いや、洗脳前だってめちゃくちゃ好きだけど、うまく表せなくてとかじれじれした内面がめんどくさいやつって思ったけど。
ま、俺なんだけどさ。結局。
まぁなんかこう記憶融合なのか、ラルシレドの今までの記憶と俺のふわっとした記憶。なんか段々意識が混ざり合っていくのか、今は自分は元の自分でありラルシレドでもありなかんじになってきた。うまく言えないけど。
そうでなきゃ貴族なんて無理だしな。俺元々庶民なのは自信ある。あまり覚えてないけど。
侯爵様なんて絶対無理。元のラルシレドが消えてしまうパターンじゃなくてよかった。
待ってやめておいてかないでっ! て去っていく幻のラルシレドに叫んでしまっていたところだ。
大変なことになるところだった。しかも嫡男だし。ついじゃうの? 大丈夫? まずくない? 中に俺混じってるよとか思うけど、ラルシレドちゃんと貴族だし。ちょっと俺小さくなっておこうって気分になる。
貴族社会も怖いな。
同じ転生者のメリサはメリサで融合していってるみたいだった。
ラルシレド無意識に洗脳してさ、婚約破棄させるくらい惹かせて、それを無意識にあやつりながら、他の男もいて、それもどれもうまく操りながら、上にのしあがるんだからな。このルートはそういうルートだった気がする。逆ハー女め。
うん、おぼろげなこのルートのストーリーでは、婚約破棄までさせておきながら、俺はメリサの踏み台になるんだよ。結局。養分さ、養分。
セルシアが傷ついただろうから、ヒロインにはいい印象がなくなっていたんだがな。ゲームではな。
ま、今俺らはセルシア見守り隊だ。そこで意気投合した。
転生者のメリサがある程度話がわかる奴でよかったよ。チートすぎてやっぱり怖いけど。子分と思われてそうって思う時あるけど。
ヒロインするの捨てたみたいだけど、いいのかな? ヒロイン不在で。
ま、このルートでは悪女だしな。しなくてもいいっぽいか。でも他のルートいかなくていいのかな?
まぁ必要なところはチートの力でどうにでもするみたいだけどな。めちゃくちゃだよな。強いな。女性強い。彼女強い。メリサに転生した中の人すごい。
ま、俺はセルシアを見守れたらいいけどっていうか、俺さラルシレドなんだよな? 婚約破棄の破の字も亡きものにメリサが記憶操作も状況操作も調整もしてくれたから、何もなかったことになっている。
このままいけば、結婚出来るのかな? そばで見守ること出来る?
セルシア、お嫁様にとか鼻血でそうでさ。
いや、元のラルシレドも俺も虫ひとつつけるものかって侍ってるよ。セルシアに。いや、そばにいて同じ空気吸えるの奇跡だよね。
そっと微笑むセルシアなんて、最早女神様と崇めたくなる神々しさよ。
そう、当の本人に様はやめてと言われたから、なるべく様はつけないようにしているけど、やっぱりとっさに出たりするよね。
「私、ラルシレドは、セルシア様見守り隊隊員として、今日もセルシア様を見守ります」
そう跪いてセルシアを見上げると、苦笑している。そんなセルシアもやっぱり麗しかった。
end
評価、ブクマ、いいねして下さった方ありがとうございます。
そしてつたないものですが、読んでくださった方大変ありがとうございます。




