マスターを頼んだよ
あぁ、一気に書きました。
多分五分の間にもの凄い分量書きましたよ
一時間で一話半くらい書いてましたからね。
「うっ.....」
目を覚ますと、そこはマーチスの部屋へと続く廊下だった。
ゆっくり体を起こすと後ろに僕達が地下へとおりてきたエレベーターがある。
轟々という音が聞こえ、熱気が迫っているような廊下は熱さがあった。
「なんだ.....僕は」
辺りを見回すと、ランコ、レイミー、シトさんが僕の隣で横たわっていた。
「...皆!起きて!起きて!」
僕は急いで皆を叩き起こす。
幸い全員外傷はないようだ。それにしても...あれから何があったんだ?
そうだ、マーチスがスイッチを押して、自爆を図ろうとして...フムが僕に飛びかかって....。
「ん.....」
ランコが一番に目を覚ました。
「ここは....私は、何があったの?」
次に、レイミー、シトさんと目を覚ます。
「俺は、爆発に巻き込まれたはずじゃ...?」
シトさんが、きょろきょろと辺りを見回す。
「確かに....ボクもあの爆発に巻き込まれたと思っていたのだが...というか、暑いな。熱気がすごい。爆発した部屋の通りの廊下だからだろうが....部屋はどうなったんだ..あれ」
レイミーが1つの違和感に気づく。
僕も気がついていた。
目が覚めた時に既に気がついていた。
物凄く嫌な予感がして、口に出したくなかった。
「フムちゃんは?」
「私も...思ったよ。どうしていないの?」
ランコは不安そうに眉を下げ、泣きそうな顔で辺りを見回す。
「俺を後ろに突き飛ばしてアーサーを庇っていたからな...俺は物凄い爆風で吹き飛んで...その後の記憶がない。まだ部屋にいるのか?だとしたらここまで俺達を運んできたのは誰なんだ?」
僕達は立ち上がり、マーチスの部屋の方を見る。
「僕は行く。もしかしたらフムは僕達を助けて自分はあの部屋に残っているのかもしれない」
怖くない。やっとフムを助けたんだ。
フムも連れて早くこんな所でて行かなくちゃ。
「私も行く」
ランコも立ち上がり僕と並ぶ。
シトさんとレイミーは、微笑んで僕達は顔を見合わし頷いた。
「フムちゃん!!まってて!!すぐ行くからー!!」
ランコが廊下に向かって叫んだ。
僕達は、熱気が漏れ出る薄暗い廊下へと走りだそうとした。
「来なくていい」
向こうから小さな声が聞こえた。
暗闇から、ふらふらとこちらへ歩いてくる人影。
「フム!!」
フムは、右足を引きずり足をもたつかせながらこっちに歩いてきた。
僕達は走ってフムに駆け寄った。
「フム........!」
フムは、マルカを背負いこちらへと歩いてきていた。
その姿に僕達は声が出なかった。
「はい」
くるりと振り返り目を閉じて動かないマルカを下ろした。
「大丈夫マスター、この子は気絶しているだけ」
フムの綺麗な金髪の髪はチリチリに焦げていて僕を庇ったのだろう、背中は赤く焼け焦げ、肌色の肌は溶けて銀色になってしまっていた。
顔の半分は焼け、肌は半分銀色で、美しい緋色の瞳があったところは、緋色の目の玉がむき出しになっていた。
右足は、重いものが落ちてきたのか曲がってしまっている。
「僕を庇って.....そんな....フム...」
涙が溢れ止まらなかった。
爆発から僕を庇って....フムは、重傷を負ってしまっていたのだ。
「フムちゃん!」
ランコがフムに飛びついた。
「うわっ!な、何もう。ランコ....大丈夫だよフムはロボットだから。マスターこそ、無事?」
「僕は無事だよ。フムが守ってくれたからね.....ごめんな...ごめん。フム」
「謝らないで、マスター。大丈夫だよ」
フムは、優しく僕の涙を拭った。
手がいつもの冷たい手と違い、熱かった。
でも、そんなことはどうでもいい。
帰ったら、いくらでも治してあげられる。
早くこんな所から出よう。
「皆揃ったなエレベーターから早く外に出よう!」
レイミーが、声を上げる。
その時シトさんの顔が少し曇った。
「子供達はもう避難しているか上に居ると思う.....大丈夫だよ、シトさん」
「.....本当は、探しに行きたいが折角彼女に救われた命だからな。上で生きていることを祈る」
シトさんは、目を閉じ唇を噛んだ。
「さぁ!行こう!」
エレベーターに乗り込むと、突然ドゴォッという爆音がしてエレベーターが揺れた。
同時にエレベーターから一切の電気が消え真っ暗になる。
「きゃあ!!」
ランコが耳を塞いでうずくまる。
「なんだ!?」
「爆発!?」
シトさんとレイミーがエレベーターの上を見上げた。
爆発音はエレベーターの上から聞こえた気がする。
「まさか....マーチスの仕掛けていた爆弾は、自爆爆弾だけじゃない?」
レイミーは目を見開いた。
そうか...あのマーチスだ。絶対に復讐を成し遂げようとするはずだ。
この施設ごと僕達を閉じ込めて殺し、イアンビリー家の血を根絶やしにする事を考えてもおかしくない。
「エレベーターが動かない!」
ランコがさっきまで光っていた上に行くボタンを何度も押すが、もう光っていないただのボタンを押しても全く反応しない。
ランコはいろんなボタンを押しまくっているが、どのボタンも全く反応しなかった。
「どうしよう....」
ランコは泣きそうな顔で尚もボタンを押しているが、全く反応する気配がない。
「まずいぞ。システムの方がおかしくなってしまっているのかもしれないな」
こういう機会に詳しいレイミーは、焦って早口になっている。
ドゴォッ!また爆音がして、エレベーターがぐらりと揺れた。
「きゃあ!!」
「うわぁ!!」
ランコがまた叫び声をあげ、僕は今度はバランスを崩して壁にぶつかりそうになった。
フムがサッと僕を支えてくれなかったら、頭からエレベーターの壁に激突しているところだ。
かなり大きな爆発だ。
「ありがとうフム」
「マスター、手を」
フムは、僕の手をぎゅっと握った。
いつもの冷たい手と違い熱い手だった。
どれだけの高温の中にいたんだよ....。
「絶体絶命ってやつか」
シトさんが、目を細めた。
「ん」
下で丸まって横たわっていたマルカが目を覚ました。
「ここは....どこ?父さんは」
「マルカ!システム室はどこ!?」
レイミーが、起きたばかりのマルカに掴みかかる。
「!?....何よ!あんた達!ここはどういう事!?父さんは!?」
「あとでそれは説明する!エレベーターが動かないんだ。私たちはこのままだと全員ここで死ぬことになる!!」
マルカの肩をがしがし揺すり、レイミーは叫んだ。
「システム室....確かにそこなら動かなくなったエレベーターを動かす事は出来ると思うけど。前に一回動かなくなった時父さんがそこに行ってたし」
「....システム室へ案内してくれボクだったらエレベーターを復旧させられるだろう」
僕は、そこで1つ疑問が浮かんだ。
「でもさ....システム室が上の階だったら直せないんじゃ」
ランコが、目を見開いて震えている。
そうなんだ。
そしたら僕達は本当に絶体絶命だ。
「や、システム室は地下だよ」
フムが目を閉じていった。
「やった!じゃあ.....」
レイミーが一瞬顔を輝かせた。
だが、フムは無表情に残酷な現実を突きつける。
「でもそこはきっともう火の海だよ」
「....あぁ、ところで、なんで爆発が起きているんだよ...あたしがそこのロボットに気絶させられてから何が起きているんだよ!父さんは!?」
マルカは混乱して叫んだ。
「大丈夫だ......マルカ。落ち着け。落ち着いて。大丈夫だお前の父さんは....もう避難しているよ」
自分に言い聞かせるように、レイミーは、マルカの肩に手を優しく置いて目線を合わせた。
「....そっかぁ。よかったぁ。父さんが無事ならあたしはそれで...いいよ」
自分を置いて避難した父親に安堵しているマルカを見ていると、胸が張り裂けそうだった。
あいつは、マルカのことをただの復讐の道具だとしか思っていなかったのに。
そして、3回目、ドゴォッという音と共にまたエレベーターが激しく揺れ、天井から今度はパラパラと砂のようなものが落ちてきた。
本当にこれ以上爆発したら僕達は.....ここにいる全員が、それをなんとなく予感していた。
「さて、時間がないね」
しばらく目を閉じて動かなかったフムが、おもむろにそう呟いた。
「次、もしくはその次爆発したらこの建物は崩壊する。一回の爆発が大きいからね」
フムは、無表情に天井を見上げた。
そして、僕と繋いだ手を離し、僕達と乗っていたエレベーターの扉からぴょんとジャンプして飛び降りた。
「どうしたんだ?フム?何で.....」
そして、エレベーターの扉に両手をかけ、恐ろしい怪力でギギギとエレベーターの扉を押しながら真ん中へと締めていく。
「フム!何してるんだよ!」
もう人が一人通れないくらいに隙間は狭まっていた。
「何で....フムちゃん!」
ランコも隙間のフムに語りかける。
「閉めないと追いかけてくるから」
フムは、うつむいてそう答えた。
「大丈夫。マスター、心配しないでシステム室の場所は、わかる。きっとエレベーターの動かし方も、今扉の自動ドアもしまっているからそれも開けないと。安全な避難経路もシステム室にある館内放送で伝える」
「うるせえよ!何いってんだよ早く開けろよ!」
「そうよ!開けて!!」
僕とランコは泣き叫びながらどんどんと扉を叩いたり、エレベーターを開こうと手をかけてみるが、びくともしない。
「大丈夫。フムを誰だと思っているの。天才発明家アーサーの発明したフムよ。絶対皆を、マスターを救ってみせるよ。少しだけそこで、待ってて。今まで、ありがとうマスター、皆」
「フム!!待て、やめろそんな最後みたいなこと言うな!!」
「いやぁああ!!閉めないで!行かないで!フムちゃん!」
フムは、ランコの方をみて微笑み意味深に親指を立てた。
「マスターを頼んだよ」
本日も読んでくださりありがとうございます。




