ランコの居場所
2日ほど体調を崩してお休みしてしまいました....
また体調を見て休んだりするかもしれません。
その時はごめんなさいです。
入れ替わったってどういう事なんだよ。
ランコにそっくりな少女は、ツーンとそっぽをむいていたので、ほっぺをムニムニ引っ張ってやった。
「い、いひゃい!なにすんだてめー!」
絶対ランコはこんな事言わない。
僕は完璧に確信した。
こいつは偽物だ。
ただ、ランコと見た目は本当にそっくりだ。驚く程に瓜二つなのだ。
「双子みたいにそっくりだな。実はハゲのおっさんの隠し子で、ボクの妹だったり?いや、口が悪いから弟?」
じっくりランコの偽物を観察してレイミーは真剣に言っているが、隠し子ってかなり大きな事実なんじゃないか?
「でもそっくりなのに全然ランコっぽくないよ」
フムとレイミーは、じっくりランコの偽物を観察している。
偽物の周りを二人でぐるぐるいろんなところから観察している。
「や、ヤメロォ!ジロジロみんな!」
バタバタ暴れる偽物を、僕は逃がさす腕をがっちり高速でしている。
「ところでもう一回聞く。お前は誰だ」
「...........」
僕の問いかけには、無言を貫き通している偽物。
だが、沈黙の刹那ぐうとお腹の音が鳴った。
「あ」
偽物が、恥ずかしそうに顔を赤らめ僕を見た。
「お腹空いてるのか?」
僕が聞くと偽物は、黙ってこくりと頷いた。
「可哀想に。ボク達もお昼ご飯にしよう。朝ごはんをバスで済ませてから何も食べてないしね。一緒にお話ししようえーっと、君名前は?」
レイミーが優しい笑顔で僕がひっ捕らえている偽物に目線を合わせ声をかける。
「マルカ」
偽物は、優しそうなレイミーに安堵した。
アホだ。
この子、さっきまで沈黙を通していたのに偽物って事をあっさり暴露しちゃってるよ。
いやほとんどバレてたけどさ。
「そうかそうか。マルカちゃんか〜サンドイッチでも食べてボク達とお話ししよう」
流石のレイミー。
にっこり笑って偽物...いやマルカと手を繋いでレストランへ入っていく。
「マスター、いこ」
フムが僕の手をとってレストランへと導く。
ランコの行方をしっかりあの偽物から聞き出さないとなぁ。
レストランでは、ハムと卵のサンドイッチ、カボチャスープ、ハンバーグ、オムライス、チキンライス、パエリアなど、様々な料理をがっついているランコにそっくりな少女マルカ。
ここ一ヶ月くらい何も食べていないんじゃないか?と思う程の食欲だった。
「はから、ひれかわっはんはっへ」
「口に物をいっぱい詰めて喋るんじゃない」
ハムスターみたいに口いっぱいに食べ物を詰め込むマルカに、注意すればごっくんと飲み込み水を胃に流し込みトンと机に置いたマルカは、
「だから、入れ替わったんだって」
ぷはーと膨らんだお腹を抑え満足そうだが、言っていることは理解できない。
「入れ替わったってなんだよ!ちゃんと説明しろよ」
「まぁまぁ、アーサー。女の子には優しく声をかけるものだよ」
レイミーは、にっこり笑ってマイカの口についたケチャップをハンカチで拭き取った。
「大丈夫。ゆっくりでいいからマルカちゃんに起こった事ボクに色々教えてほしいな」
レイミー....僕より紳士でイケメンなのかもしれない。
「.....あぁ、いいぜ...と言ってやりたいところだがやっぱりだめだ。あんたはそこの鬼みたいなやつと違って優しくていいやつだけどこればっかりは約束してるからな」
「誰が鬼だよ」
「あはは、まぁまぁ」
「マスターは鬼じゃない。マスター」
むっとしてじっとマルカを見つめるフムに、クリームのついたフォークを食わえたマルカはきょとんとした。
「ちっこくて可愛いなお前」
「やめなさいよ.....あたまなでないでよ!フムの頭を撫でていいのはマスターなんだから!」
ニッと笑ってフムの頭をくしゃくしゃ撫でるマルカにフムも押されていた。
喋り方からしていつもの冷静なフムとは違い取り乱している。
「あはは、まぁまぁ」
レイミーは相変わらずお姉さんらしく僕達をなだめてくれる。
レイミーがこの輪の中からちょっとトイレに立ってみようものなら、僕達は2対1のキャットファイトをレストランで行うことになるだろう。
「話を元に戻そうか。マルカちゃん、ランコと入れ替わった時ってどんな感じだったの?」
さらっとランコとマルカの話に戻してくれるレイミーに、僕とフムは口をつぐむ。
「んとなぁ....あたしがそのランコを見つけて入れ替わってくれって頼んだんだ。そうして....って!はっ!やばっ!話しちゃった!」
スラスラと話してくれたマルカだがすぐに顔を真っ青にして口を両手で抑えた。
チョロすぎるかつアホだな。
これならもうちょっと質問していけばランコの居場所も話してくれるかもしれない。
いや、話させなくてはいけない。
「誰かに隠すように言われてるのかい?」
「.......うー...だめだって」
言えない言えないと首を振って口を抑えるマルカに、レイミーはニッコリ笑った。
「大丈夫だよ。ボクは絶対に君の秘密をバラしたりしない。内緒にすることを約束する」
「うー....でも、でも」
「大丈夫だよ。ボクを信じて。そもそも君の話をすぐ人に話してしまうような悪いやつがお腹の空いた君にご飯をこうしておごってあげるかい?」
「......たしかに」
いいぞ。頑張れレイミー。
「ご飯代だと思ってさ。それだけ聞いたらボクはもう君とは関わらないし君とこうして話した事さえも墓場まで持っていくよ」
「....そ、そうだな。ご飯を奢ってもらったし」
眉を曲げてパクリとエビチリを食べたマルカはしぶしぶ口を開いた。
「イアンビリー家の次女を連れてくるように言われたんだ。見た目はそっくりだからすぐわかるだろうって」
マルカの口から語られたのは恐ろしい事実だった。
「......どういう事だい?」
流石のレイミーも笑顔が崩れる。
「あんたら、あのランコっていう女の子の友達かなんかか?」
「あぁ、そうだ。大事な友達だ」
「そっか.....あたし、マルカ・イアンビリーってんだ」
「マルカ.....イアンビリー?」
レイミーが大きく目を見開いた。
本当に隠し子でランコと双子だったのか!?
「あぁ、そのランコの従兄弟って事になるな。ランコの父親のルーカス・イアンビリーの弟のマーチス・イアンビリーの娘さ」
「レイミー、こんなにランコにそっくりな従兄弟がいたのか?」
こっそり小声で聴くと、レイミーはふるふると首を振った。
「いや、知ってたらその時点でボクは気付くだろう。そもそも従兄弟がいるということさえ聞かされていなかった」
ふむ....何故従兄弟がいるという事を知らされてなかったんだ?
ランコとそっくりなのが何か問題なんだろうか。
「これは、復讐なんだよ」
フォークをかちゃりと皿に置き、ここまで無邪気に話していたマルカだったが、始めて見た。
マルカは悲しい少女の表情を浮かべ告げた。
復讐.....?
「復讐って、どういう事なんだ?ランコと入れ替わったのと関係あるのか?」
「あぁ、父さんはそっちのイアンビリー家に強い怨念じみたものを持ってるから...今頃どうなってるかわからないね。もしかしたら────」
俯いて膝にぎゅっと握った拳を置いたマルカの一言に僕達は凍りついた。
「もう殺されているかもしれない」
本日も読んでくださりありがとうございました。
なんかこの章は全てがクライマックスなので書いてて手が止まらないですね




