ランコが迷子
まだ咳が続く日々です。接客業には辛いですね。
「さて、マチミヤ地区まで来たはいいけど、兄貴の場所がさっぱりわからないな!」
腰に手を当て堂々と言い放つレイミーに、呆れ顔な僕とランコだが、相変わらず隣にいるフムは表情を崩さず無表情だ。
レイミーは遠出という事でまた今回も馬鹿でかいリュックサックを背負ってきた。
「準備はしておいて損はない!」
レイミーは、自信満々にそういうが女子が背負っているとは思えないくらいパンパンに膨らんだ大きなリュックを亀みたいに背負っていて心配になる。
「そもそもマチミヤ地区っていっても広いしなぁ...」
マチミヤ地区を見回すが、とても広い商業地区という感じだ。
田舎で暮らしてきた僕にとって沢山のビルや店、人、まさしく発展地区。
とてもドキドキした。
「すごいわ....こんなに人が生きている場所があるなんて」
若干人間離れした発言をしたランコも僕と同じ気持ちなのだろう。
目がキラキラしている。
「まぁボクは出張で行くことも多かったからね。だから場所も知っていたわけだ。ランコは引きこもりだし、アーサーもどうせ引きこもりだろう?どうだい都会というのは」
「地球には人がこんなに生きているなんて知らなかったよ」
素直な意見を口にしたがランコみたいな事を言ってしまった。
「はは、まぁこれ以上地球には人間が生息しているわけだがね?まぁここは発展地区だから。さて、これだけ人が沢山いる中でボク達はどうやって人を探そうか」
それは本気で僕達が考えないといけない事だ。シトさん達もそうだし、シトさん達が探している人物も探さないといけない。
シトさん達が探している人物に関しては僕達は見た目すらわからないからな。
ほぼ探すのは不可能だ。
「でも割と大人数の子供達と顔色の悪い男一人、いやでも目立つような気がしないか?」
レイミーは腕を組んで考えるが、だいぶ失礼な事言ってないか?それ。
そんな事よりなんだかいい匂いがする。
都会だと食べ物も変わったものが多いのだろうか。
なんてぼーっと考えてしまうのは、フムが帰ってきて少しだけ切羽詰まっていた状況が和らいだからかもしれないな。
「せめてシトさんが今どこにいるかさえわかればいいんだけど」
「そうだな....この広い街で迷子の子供を探すようなものだかな」
僕は、ふと気がついた。
気がついてしまった。
「ねぇ、レイミー」
「なぁ、アーサー」
僕とレイミーは冷や汗を流しながら顔を見合わせた。
「ランコはどこだ?」
「ランコはどこへ行った?」
フムは、僕の後ろにべったりくっついているのだが、ランコは全く見当たらなかった。
「ランコは、さっきいい匂いがしたからフラフラそっちへ行っちゃった」
「何で止めなかったんだ!」
「ランコがすぐ戻ってくるから二人を見張っててって。余計な事すると怒られるだろうから内緒って言われた」
「ふむ....話には聞いてたけどいつのまにかすごく仲良くなってるようだな」
「でも、戻ってこないね。すぐ戻ってくるって言ってたのに」
「まさか......誘拐!?」
レイミーが当然物騒な事を言い出したのでフムも僕もびくりとした。
誘拐....ランコは可愛いからな。それはあるかもしれない。これだけ人がいれば悪い事を考える人もいるかもしれないし。
「どうしよう......とりあえず周辺を探そう。確かにさっきいい匂いがした気がするが今は全くしない。移動販売かもしれない」
レイミーがリュックサックから小型のコンピューター端末を取り出した。
「これで周辺の移動販売を調べよう」
近くのベンチに座ってレイミーが端末を操作していた。
「フムちゃんに、人を探索する機能とかついてないの?」
「フムは常にマスターと一緒にいるからそんな機能は必要ないの」
なんて二人で話しているが、僕は落ち着いて座ってなんてられなかった。
もし変な人達にランコが誘拐されていたら。変な奴らに人体実験されていたら。
あの子供達の顔が浮かぶ。
そういう奴がこの街にはいるんだ。
絶対にそんな事がないとは言えないというだけで、額からは冷や汗が出て周りをキョロキョロと見回してしまう。
「ランコは、どこへ行ったんだ?」
そわそわして周りを見回していると、向こう側の通路にランコらしき女の子の後ろ姿が見えた。
青い髪に、白いワンピース。間違いなくランコだ!
「ランコ!」
僕は、彼女の背中を追いかけた。
反対通路まで走ったが、運悪く信号は赤。
すぐ反対側にランコがいるのに。
僕の目の前でランコは信号の前を通り過ぎた。僕には気がついてないみたいだ。
「こんな時に!」
だが、ランコが歩いていた姿を見て安心していた。
レイミーが言っていたみたいに誘拐されていたわけじゃなかったんだな。よかった....。
長い長い信号を待って僕は彼女を追いかけた。
「ランコ!ランコ!」
だが声をかけてもなかなか気がつかない。
幸いにもすぐ追いついたので、彼女の肩に手を置く。
「おい!ランコ!」
「ひゃっ!」
ランコはゆっくりといや恐る恐ると言った感じで僕を振り向いた。
何だか様子が変だ。
「どうしたんだ?ランコ」
「ランコ.....ランコ?」
ランコの顔をしているのにランコと何だか雰囲気が違う。
だが、確かに見た目はランコだ。
「いや.....何でもない。あたしに何か用?」
「用も何も...突然いなくなったのはランコの方だろう?」
「え....あ、あぁ、そうだ。そうだぜ。へへ。じゃなかった。そうだったね。で、どこに行くんだっけ?」
明らかにおかしい。
確かに見た目はランコなのに、全くの別人と話しているみたいだ。
「何言ってんだよランコ。早くランコの妹のレイミーを探しに行かないとだろ?」
僕は、試しにカマをかけてみた。
さて、どうでるんだ?
「そうだな。大事な妹のレイミーを探しに行かなくちゃな!」
こいつ......。
ランコと全く同じ見た目で声も一緒なのに何者なんだ?
偽物?何でランコのフリをしているんだ?
「なぁ」
僕は、そいつの腕を掴んだ。
「なんだよ」
そいつは眉をひそめて僕を見た。
「お前は誰だ?」
ランコのふりをしている時点で絶対におかしいし、怪しい。
たまたまそっくりさんだったら人違いだというはずだ。
「.....な、何言ってるの?」
「とぼけるんじゃない。お前はランコじゃないだろう?」
「.....な、何を言ってんだよ!どこからどう見てもあたしはランコじゃねーかよ!」
「だから正直驚いている。見た目はランコなのに中身は別人みたいなんだ」
「.....どこが違うってんだよ」
「いやまずその喋り方から違うよ。ランコはもっと女の子らしい喋り方するよ。そんなヤクザみたいな喋り方しないよ」
「ヤクザ!?おいお前!女の子に向かってヤクザはないだろー?」
ぷんすこ怒り出した偽物は僕をビシッと指差して頬を膨らませる。
「人の通行の邪魔だから止まらないでよ。あと大きな声出すと目立つから」
「お前があたしを怒らせたんだろー!こらー!」
そう言って余計に頬を膨らませる偽物。
悪い奴じゃなさそうだな。
そんな印象はあるが、何か企んでいるのかもしれない。怪しいのに変わりない。
「おー!よかった!ランコに会えたのか?」
「マスター!」
レイミーとフムが小走りで僕達に近寄ってきた。
僕達に囲まれた偽物はぐぬぬと悔しそうな顔をして踵を返して逃げ去ろうとしたのを僕は見逃さずがっちり腕を掴む。
「離せ!はーなーせー!」
バタバタ人が見ている前で子供のように暴れる偽物に、レイミーもフムも違和感を覚えたようで、
「ランコ.......?」
と、二人とも首を傾げていた。
そりゃそうだ。
「お前は誰だ?何でランコになりすましている!」
「うるさい!離せ!入れ替わったんだよ!」
「入れ替わっただぁ!?」
暴れながら言う偽物に、僕は思わず素っ頓狂な声を上げていた。
本日も読んでくださりありがとうございます。
ヒロインやサブキャラが好きなのでそっちに魂を吹き込みすぎて主人公のキャラが薄くなってしまうのが悩みなので、作品を重ねるごとに課題を見つけて面白い作品が書けるようになりたいです




