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3年という歳月は長いのだろうか。それとも、短いのだろうか。風に煽られた前髪を押さえながら、リュカは目を細めつつも眼下に広がる光景を眺めて考えた。
案内された見張り台からは城下町がよく見える。自慢出来るような広さの領土ではない、と言っていた通り、確かにこじんまりとした街が城の正面側に広がっている。もっとも、こじんまりというのは南の帝国等と比べて、という意味であり、街道沿いの街や村に比べれば十分に広い。そしてかの帝国のような洗礼された華やかさこそないものの、あそこにはない活力があった。
街を囲む城壁より先へと視線を向ければ右手側には森が、左手側には田畑が広がっている。そのどちらもが、この夏の日差しに負けず青々としていた。農業に関しては全くの素人と言っていいリュカにすら今年は豊作であろうことが予想できる。
賑やかで、穏やかで、平和だ。とてもではないが、3年前まで戦争をしていた国には見えない。
こんな風に平和になるまでに3年もかかった。3年しかかかっていない。どちらと見なすべきか、とリュカは改めて思った。
リュカが今いるこの国は2年ほど──宣誓前の期間も含めれば5年ほど──続いた独立戦争に勝利し、正式に国として認められてからまだ3年しか経過していない、この世界でもっとも若い国だ。現在のところは領土も小さく、特記すべき資源や産物もない。中央からすればとるに足らない辺境の弱小国であるこの国の名は『アビナ』と言った。
独立した詳しい経緯がなんだったかを、興味の無いリュカは知らない。風の噂で、元々この地方を治めていた国のやりかたについて行けなくなったとか、そういった事を聞いた気がする。アビナの独立にならってその他の国も独立を宣言し、そのまま独立を保っている地域もあれば他国へと吸収されてしまった地域もある。独立を保っている地域は、現在の所は名目上アビナの配下にあることになっている、らしい。
そんな生い立ちを持つこの国の人々は、城内の人間も含め概ね大らかで人の良いもの達ばかりであった。こんな風によそ者であるはずのリュカを簡単に受け入れるあたりが良い例だろう。それで良いのか、とむしろこちらが心配になって尋ねれば、彼らは笑ってこういった。
「この国の連中は、よそ者の寄せ集めみたいなものだから」
生まれも育ちもバラバラだった人間達が、王を中心としてあつまり、そうして一からこの国を作り上げたのだ。よそ者も何も無い。この国に来た時点で皆が家族同然だと、誇らし気に語る。お人好しもここまで極まれば、笑う気にもならなかった。
そしてリュカと言えば、根っからの根無し草だ。どこかに定住し、家を持つという考えが頭の中にない。この国にだって、次の旅への資金稼ぎで寄ったにすぎない。
それでも、と、リュカは考える。
(いつか定住するなら、こんな国がいい)
人々の親切に触れ、心からそう思っていた。
──あいつに会うまでは。
昔書いたものを修正しつつ、終着点も見えないまま走りだしてしまいました。最終的にラブラブに、なれればいいね、みたいな。
不定期更新になると思いますが、よろしくお願いします。




