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寝たふりして机に突っ伏していると近くから僕の配信について感想を言い合う美少女たちの声が聞こえてくるんだが!?〜あれ、僕をいじめてた彼はどうなったんだろう〜  作者: マグローK
第一章 VTuber雲母坂キララはじまり編

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第18話 私を参謀役にしてください!

「こんにちはー! みんなに届ける明けの明星! どうもー雲母坂キララでーす!」


 僕はようやく思考を整理できた。色々と言い訳を並べてみたが、自分の声を出されているし、身バレしたってことだ。


 大切な話ってのはそのことに気づいた庄司さんからの、なんだ?


「これはどういうことかしらねぇ?」


 助けられたと思ったら脅されている? 現状はそんなところだ。


 だが、理由がわからない。


 ただわかるのは、どうやら助けられたというのは僕が一人舞い上がっていただけということだけだ。


 ならば、今回の出来事は、僕をいじめる上位者の首をすげ変わるだけということだろう。


「ねぇ。どうなの?」


 庄司さんはなにか言ってくる。だが、言葉なんて耳に入ってくるはずもない。


 今までで一番キツい仕打ちが待っているのかもしれない。


 意識せず呼吸が速くなり、浅くなる。


 助けられたと思ったら次のいじめっ子になることは前にもあった。それを僕はどうして忘れてしまっていたんだろう。


 自分が嫌になる。でも、なにか。なにかしないと。


「昼間」


 僕の口から声が出ていた。


「なに?」


「昼間の会話も、ただの遊び、今のための準備だったってことなの?」


「ええ。そうね。昼間は試すようなことをしてごめんなさい。でもあれは、確証を得るためだったの」


「あれで、僕がキララだって確証を?」


「完全に得られたわ」


 昼間の時点でもう、準備は終わっていたのだ。どこから漏れたかは知らないが、庄司さんは僕が雲母坂キララだと気づいていた。そして、キララを広めた。


「はあ」


 終わった。僕の人生、終わった。


 このまま現実と仮想のギャップにクラスを巻き込んだ壮絶ないじめを超えたなにかへと発展するんだ。


 以前よりも激しいいじめに僕は突き落とされたんだ。


「えっと……」


 庄司さんに聞こえるほどのため息だったのか、庄司さんは引いている。


 いや、なんだか表情がかげっているように見える。


 まずい、ここで相手の機嫌を損ねるのはまずい。


 そうだ。助けてくれたのは事実だ。僕をどうしたいのか、今のところまだわからないし、悪いようにしないことを願ってもう少し対話をしてみよう。


「こんな展開は嫌だったわよね」


 先に言葉を発したのは庄司さんだった。


「う、うん。でも、い、一応は感謝してる。庄司さんがいなければ僕は大神くんに殴られていただろうし」


「そうよね」


「庄司さんの目的はなに?」


 まずった。


 思考の余裕がなくて直球で聞いてしまった。


 だが、かげって見えた表情が嘘のように、庄司さんは顔をかがやかせた。準備していたのかと思うほどまぶしい笑顔。


 それは、庄司さんがキララについて話している時の顔でもある。


 どうして今。


「目的はただ一つよ」


「なに?」


 僕はごくりとつばを飲んだ。


「私をキララちゃんの参謀役にしてください!」


 キレイな土下座だった。


 脅されているのは僕のはずなのに、あの庄司さんが僕に頭を下げている。


 この人、なんて言った?


「さ、さんぼう?」


 言ってることがわからない。どうして、さんぼう?


 さんぼうってあれか? 参謀か?


 作戦とか考えるあの参謀のことか?


 なんで脅してまでそんなことを。だまされているのか?


 疑いの目を庄司さんの後頭部に向けていると、庄司さんが涙目になりながら僕のことをゆっくり見上げてきた。


「ダメ……かしら」


 そして、スマホのスピーカーを最大音量にすると、さっきの音声の再生ボタンに指を重ね。


「ダメならこれを」


「わ、わかった。わかったから。落ち着こう庄司さん。そして、庄司さんの願いを受け入れよう。今日から庄司さんはキララの参謀だ。だから顔を上げて。そしてスマホをしまって」


 早口でまくし立てる。


 バレないようにやってきたのだ。あんなのがバレた日には生きていけない。


 とにかく命をおびやかされているようなものだが、殴られるよりは多分マシなはずだ。参謀の方が。きっと。


 だが、庄司さんはなかなか立ち上がらない。


「ほ、本当に? 本当の本当に?」


「本当に。本当の本当に、だから。あの、スマホはいったんしまってくれないかな? 心臓に悪い」


「わかったわ」


 冷静に音を消したあとで、庄司さんはスマホをしまってくれた。


 ほっと息を吐き出せた。


「よ、よかった」


 この場はとりあえず大丈夫なはずだ。


 そう思っていると、庄司さんは僕に背を向け立ち上がった。かと思うと、急にかがみ込んだ。


 え、なにする気?


「やっ…………たー!」


 庄司さんは突然、その場で大ジャンプした。


 呆然と見てしまう。というか、あんなことするんだと驚かされる。


 だが、僕はそれと同時に、自分自身を見ているような気持ちにもなった。


 庄司さんが飛んでいる姿。それが、僕が登録者のお祝いを視聴者のみなさんとしたあの時の自分と重なって見えた。


 心から喜んでいるのがわかった。


「ふふふ。うふふふふふ」


 めずらしく、周りも気にせず笑っている様子を見ていると、庄司さんも普通の女の子なんだと思えてくる。


 それと同時に、僕が不利な立場のはずなのにいいことをした気分にもなってくる。


「参謀になってなにをするつもりなのかはわからないけど、僕のいじめを止めて、僕を脅して、そこまでしないとダメだったの?」


 もっとやり方があった気がするのだが。


「こうでもしないと、もし頼んで受け入れてもらっても隣に立てないと思って」


 どれだけキララをすごいと思っているのだ。


 まあ、急に頼まれても受け入れられなかったのは事実だろう。でも、ここまで用意周到にやられると、逆に僕が引け目を感じるのだが。


 それは、お互い様なのか。


「そうだ。そもそもその音声はどこで手に入れたの?」


「日向さんに教えてもらって、木高くんのお家まで行って、友だちの庄司ですと名乗って正直にお母様に頼んだらやってくれたわよ?」


「ああ……」


 もしかしたらネットでと考え、聞いたが、素直に答えてくれるとは。


 そして、うちの母か。あの母ならやる。やりかねないじゃない。絶対にやる。絶対だ。


 高校の友だちなんて一人も紹介していない。


 それで、女の子の友だちがわざわざ家まで頼みに来たら、引き受ける。うちの母はそういう人だ。


 さすがに相手が大神くんならわからないが、庄司さんならダメだ。絶対やる。


「ってことは、ネットで拾ったとかじゃなくて、元から僕が雲母坂キララなんじゃないかって気づいてたってこと?」


「観察していて怪しかったからね。でも、私がキララちゃんを好きだったのはなのはたまたまよ?」


 もうどこまでが本当なのか。


 しかし、怪しかったからってそこまでやるか?


 キララのことになるとバカにでもなるのか?


「これは一応聞いておかないとなんだけど」


「なにかしら。確かにバラされたくなかったら言うことを聞きなさいって話だけど、私も頼む立場だから私にできることならなんでもやるわよ?」


 と言いつつ自分の体を抱きしめないでほしい。


 別にそういうことを頼もうってんじゃない。


 しかし、本当にいつもと雰囲気が違う。


 キララのことになるとバカになるって予想は本当かもしれない。


 じゃなかった。


「庄司さんは僕をいじめるつも」


「ないわよ! あるわけないじゃない!」


 脅してるのに?


「疑ってるわね? 確かに、途中からちょーっとだけ、楽しくなってきちゃったけど、私はお願いする立場だから。いじめるなんてキララちゃんの中の人にできるわけないでしょ」


「あんまり中の人とか言われたことないけど」


 まあ、これが人に物を頼むやり方かよって言いたいけど、仕方ない。


 聞こえないように、僕は大きなため息をついた。


 どうしよう。喜んでいいのかな。


 信頼の証ってことなのか。庄司さんは手を差し出してきた。


「怜でいいわよ。これからよろしく。木高くん」


「よろしく庄司さ」


「れ・い」


「よろしく怜さ」


「れ・い」


「はい。よろしく怜……」


「よろしい。こちらこそよろしく」


「なんだか恥ずかしいから庄司さんで」


「ダメよ!」


 急に大声。


「キララちゃんに庄司さんなんて呼ばせるわけにはいかないわ! 私はキララちゃんの参謀でしかないんだから。もっと私はぞんざいに扱ってくれていいから。そばにいさせてくれるだけでいいんだから」


「わ、わかったから」


 熱く語りながら、僕に顔を寄せてくる庄司、怜さ、怜にヒヤヒヤさせられながら、僕はそっぽを向いた。


 僕は怜の言うとおりただの中の人だが、怜の懇願に圧倒され、結局怜と呼ぶことを強制された。


「僕は影斗でいいよ。呼び捨てでいい。中の人だから」


 仕返しに言うと。


「わかったわ。キララちゃんの頼みじゃ逆らえないもの。よろしく、影斗」


 同一視されてるような言葉。そして、自分で言ったが、怜は動じた様子もなく言ってのけた。僕の方はやっぱりこそばゆい。


 これで、怜は僕の参謀ってことになったらしい。


「それじゃ準備してくるから、明日、楽しみにしててね」


「へい」


 その日はグループでなく、個人のチャットを交換して解散となった。


 助けて、日向。

いつも読んでくださりありがとうございます。


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