セレヴィンの提案
「何故、奴隷商だなんて考えたんだ? ツキハに奴隷商は似合わない。俺は反対だ」
「え……」
ロライアン様に領地の話を聞いた数日後、お休みの日にレヴィさんに相談すると、第一声がそれだった。
は、反対……そんな。
良い案だと思ったのに……どうしよう。
「レヴィさん、どうしても反対? 辛い思いをする子供も、苦しむその親御さんも出さない、良い案だと思ったんだけど……ダメかな?」
「ああ、奴隷商は反対だ。……けど、案事態は良いものだと俺も思うよ。だから、職種を変えないか?」
「職種を? どういう事?」
「ツキハの話を聞いていると、そもそも奴隷商の定義とは違っていると思う。いいかツキハ、もう一度今話してくれた内容を繰り返すぞ?」
「うん?」
首を傾げながらも私が返事を返すと、レヴィさんは指を立てながら話し出した。
「ひとつ、不作で収穫が少なく収入が不十分だった年や、貧しい家の子供が口べらしに売られ、結果酷く辛い目に合うのを防ぎたい。そして一定の期間が過ぎたら買った子供は親元へ返したい。そうだな?」
「うん。それが一番いいでしょう?」
「ふたつ、孤児も引き取って一人立ちするまで養いたい。その為に将来役立つよう、興味のある分野を含め、ある程度教養をつけさせたい。だな?」
「うん。それは親のいる、帰る場所のある子達も、望むのならやらせてあげたいと思ってる」
「みっつ、子供達に教養をつける為の教師役を探して雇いたい、と」
「うん。ただ、教師役ができる人をどうやって探したらいいかで、困ってるんだけど……」
「わかった。なら、職種はやはり奴隷商じゃあないな」
「え……そ、それじゃあ、何?」
断言するレヴィさんに困惑しながらそう聞くと、レヴィさんはにこりと笑った。
「提案だが。学校を作らないか、ツキハ? 昔俺がツキハの世界に行った時、ツキハは昼間学校に行っていただろう? それと同じような、平民の学校を。王都や大きな都市には貴族のは勿論、平民の学校もあるんだが、ロライアン様の領地は、先日聞いた通り農業や狩猟が主な産業の為か、まだないんだ。ロライアン様も学問の大切さは重々承知なさっているから、作りたいとは思っていらっしゃるんだが、領民の理解を得られずにいてな。ツキハが子供達を引き取るついでに学問を教える学校を作ったなら、きっと喜ばれると思う」
「学校……な、なるほど。手に職をつける為の分野を学ぶだけじゃなく、一般教養も教えるんだね。でも子供達を引き取るんだから、寮付きになるよね。となると、結構広い土地が必要になるけど……ロライアン様の住む領都に場所ありそう? レヴィさん?」
「それはロライアン様に相談だな。教師役についても、ロライアン様を頼ってツテをかりよう」
「あ……! そっか、それならちゃんと信頼できる人を雇えるね! うん、いいかも! ……じゃあ後は、ロライアン様にどう対応するか、だね。たとえレヴィさんが話を通すにしても、実際作るのは私だから、ロライアン様なら直接私に会って人となりを確認したいって言うだろうし……う~ん、変装、でバレないかなぁ? レイディアさんみたいに魔法で変身するのは、私にはできないし……」
「ああ、大丈夫だよツキハ。その辺りは俺が上手く話しておく。確実に信頼できる人物だから、と」
「え…………そ、それで、大丈夫?」
「ああ、問題ない」
「そ、そう……? なら、それでお願いしていい……?」
「ああ、わかった。任せてくれ」
レヴィさんはそう言って、自信満々に頷く。
私は僅かな疑問を感じながらも、その自信を信じて任せた。
結果、翌日には、ロライアン様の承認と、教師役を探す事への協力を承諾するという返答、そして土地の候補を見繕うから、その中で好きな場所を使うようにとの伝言を携えてきてくれた。
あまりの早さに驚いて、直接作る人物と会う事もないのに、何をどうやったらこんなに早くあのロライアン様が許可を出されるのかを聞いたけれど、レヴィさんはクスクスと笑うだけで、それを教えてくれる事はなかった。
ロライアンとセレヴィン(+シグルト)の話し合いを次に入れるか入れずに進めるかで迷い中です……。
入れても短いだろうしなぁ……。