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恋って何?

志織に変なことを質問されてから数日がたち、みさとはもうその質問の存在自体を忘れかけていたころ。みさとは思いもよらぬ物を学校内で見てしまう。それはある日の放課後のこと帰宅部のみさとはオーケストラの練習のあるしずくと別れてから寮までの短い帰路を歩いているとき、同じ学年の花沢智子はなざわともこと一つ学年が下の黄田安こうだあんが仲良く話していた。二人とも寮生で違う学年だが仲がいいと寮内でも有名で、みさとは『仲いいなぁ〜』という感じで横目で二人を見ているとしばらくすると二人が手をつないで歩き出した。それを見たみさとは歩く速度が少し弱まる。女の子どうして手をつなぐことなど断じて犯罪でもないしむしろお互いに仲がよいなら珍しくもないことだが、みさとと同じ学年の花沢はクールキャラでいつも誰も寄せ付けないようなオーラを出している。みさとの知る限り同じ学年の友達は花沢にはいない、その強面の花沢が手を誰かとつなぐ何という光景は少し目を疑う、しかもつなぎ方が指を絡ませた恋人同士のあのつなぎ方だからよりいっそうみさとの戸惑いは膨らんだ。

 花沢と黄田が仲のよい理由の一つが二人とも同じロックバンドが好きで意気投合したらしい、現在ではバンドを組んでいるらしい。そして二人が音楽室に消えて行くのを見送った後にみさとは少し疲れた様子で寮の部屋に戻り制服のままベットに倒れ込む。そして天井を見上げながらこないだの志織の言葉を思い出す。

「本当に…そういうことってあるのかな?」

「何が?」

「うぇ!」

突然声がして飛び起きるとそこには瑞乃がいた。

「そんなに驚いて、かわいぃ〜。自己処理中だった?」

姉のしずくと正反対の性格の瑞乃はしずくの面影を残した顔でセクシーな私服に身を包み、色っぽく笑いながら言う。

「違うから…しずくならオーケストラでいないよ」

「えぇ〜あいつまたいないの?せっかく今日家庭科でマフィンつくったから、あげようと思ったのに」

よく見ると瑞乃の手の中には可愛らしくラッピングされたマフィンがあった。正反対の性格だが瑞乃は姉思いで地味にいい子だとみさとは時々思うのであった。

「これ、みさとちゃんにもあげる♪」

「…あ、ありがとう」

「かわいいー」

と言って瑞乃はみさとを押し倒す、ちなみに瑞乃は柔道をやっているので力ではかなわないとみさとはわかっているので身を瑞乃に委ねるのであった。すると瑞乃はみさとの鎖骨に顔を近づける。

「あの〜やめてくれる?誰かに見られたら恥ずかしいんだけど」

落ち着いた様子でみさとは瑞乃に言う。瑞乃に止まる気配を感じられないのを察したみさとは続けて言う。

「ねぇ、同性愛ってどう思う?」

瑞乃の動きがぴたりと止まってみさとを見下ろす。

「いんじゃない?なんで?」

「別に少し思っただけ」

「もしかしてみさとちゃん私のことが好きなの!?もうぅ、みさとちゃんったらぁ〜」

それはこっちの台詞だと言わんばかりにみさとが全力の抵抗をし始めたとき、瑞乃が視界から消えた。

「いでででで、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃぃ」

「人の部屋で何してんの」

起き上がってみて見るとそこには無表情のしずくが瑞乃の頭を持ち上げぎりぎりと締め付けている。それを見てとっさにみさとも起き上がる。そしてものの十秒で姉妹喧嘩がはじまりみさとはトイレに避難するのであった。みさとはしずくと瑞乃の姉妹喧嘩を過去に一度だけ目にしたことがある。喧嘩というよりは戦争に近い、ひたすら瑞乃が攻撃をしてしずくがそれらをかわしたり防いだりして瑞乃が疲れたところをしずくがたたくという、シンプルなもの。瑞乃がまるで投下された爆弾のごとく激しいしずくに対する攻撃は見ているこっちにも被害が及ぶうえ、しずくもこうなるとみさとのことなど忘れて平気で逃げ回るのでみさとはこういう事態になると、みさとはあとで誰になんと言われようと速攻逃げるのであった。そしてトイレに到着すると同時に志織と会う。鏡を見つめる志織の隣にたちふと思ったことを口にする。

「……ねぇ、志織って何してんのいつも」

「いつもって?」

「放課後とか、暇なとき」

「ご飯作ったり?お菓子食べたり?かな」

「本当にそれだけ?人一倍情報に敏感でこの学校のゴシップなら何でも知っているんでしょう?」

「何も全て一人とは言っていない、私にだってそれなりの友達だっているわよ」

その友達というのが情報収集の材料だったり、情報を集めて来る志織の手足の代わりなのかはわからない。それが本当の友達と呼べるのか、みさとは少し疑った目で鏡で身だしなみを整える志織を鏡越しに見つめる。そしてみさとは先ほど見た放課後の様子を思い出す。そのみさとの様子をみた志織が少しにやけた顔で言う。

「何か私に聞きたいことでもあるの?」

図星をつかれたみさとは少し驚いたように志織を見る。志織は鏡越しにみさと目を合わせる。

「いや、別に。無い。」

「ほんとに?」

こくりとみさとはうなずく。志織はそれを確認すると最後に

「何かあったら何でも言ってね。協力するから、みさとも私の大切な友達の一人だからね」

と言い残してトイレを後にした。そしてみさとも志織の少し不気味な雰囲気から解放されたことに少し安堵し、自室に戻ると部屋ではしずくが静かにパソコンをいじっていた。その以外にも荒れていない部屋の様子にみさとは少し驚いて、事情をしずくに聞いた。

「あれ、瑞乃は?」

「帰った」

「…あの、大丈夫なの?」

「何が?」

少しいつもより冷たいしずくの言い方にみさとは戸惑いを感じながら、こまかいところを追求した。

「つまり、けんかは丸く収まったの?」

「うん、多分?」

それだけ確認するとみさとも制服から私服に着替え始める、着替えている最中にしずくのことが視野に入ったのでみさとはしずくに話しかける。

「今日の練習どうだった?」

「疲れた、先生が休みだったから早く終わってかえって来たの」

「ふ〜ん」

と合図しながら上着から顔を出す。そしてしばらくしてみさとも毎日恒例の今日学校であったことをしずくに話すのであった、しずくも次第にみさとの方を向くようになり笑顔がはじけ始める。そしてふと思い出したことをみさとは言う。

「そうそう、今日の放課後意外な光景を見たの。うちらの学年の花沢さんと一つ下の黄田さんが仲良く手つないでいたんだ」

「うん、あの二人仲いいよね」

「仲いいのは知っていたけど、なんかそういう仲がいいとは違ったっていうかなんて言うか」

言葉に困っているみさとを横目に時計を見たしずくは、特にみさとの話に興味が無いという調子で夕食の時間だということをみさとに告げる。そしてみさともそのしずくの知らせに対して

「今日の夕食なんだろね?」

と言って笑顔でしずくと一緒に食堂に向かうのであった。その時のしずくの顔が何とも言えないような顔をしていたことにはこの時みさとは気がつかなかった。それもそのはずだしずくが自ら自分の顔をみさとに向けないように下を向いて歩いていたから。みさとはそんなしずくの様子を見て自分の話が面白くなかったのか、何かの言葉でしずくを傷つけてしまったのかと思い静かにしずくが醸し出す雰囲気に身を任せるのであった。しずくはそんな思いをみさとにさせているとは知らずにただ顔を目線を出来るだけみさとに合わせないようにもくもくと夕食を食べるのであった。みさとは違う友達としゃべりながら夕食を食べた。食後、みさとがしずくに違う話題で話しかけるとしずくはいつもの調子に戻りながらみさとの話を聞いた。そしていつもの二人に戻ったことを確認したみさとは笑顔でしずくとともに食堂を後にした。

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