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栞  作者: 向井達
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夢

痛く綺麗な子と火葬場の庭で出会った。

その火葬場はとても広くて高いところにあった。蕎麦の花が午後の風に揺れていた。


彼女は、そこが火葬場だと知らなかった。

ただそこから下の国道を眺めていた。

彼女が誰なのかもそこにいる理由もわからない。

私は向こうの煙突から伸びる煙が

人みたいに臭かったから、

ここは骨を燃やす場所だと気がついた。


私は夜の神社を見に行こうと誘った。

夜の、潮が満ちた時、湖の真ん中まで

船頭の後ろに乗って。

神社は中洲にある。

彼女は頷いた。


気づけばあたりは真っ黒くなっていた。

俺は船頭に800円手渡して

向こうに小さく見える、茂みの中の鳥居の

篝火に向かって船に揺られた。

水面に白い影が落ちた。


船が鳥居に着いた時、夜は更けていた。

そこで初めて十九時までに戻る約束を思い出した。


岸に戻るのにどれくらいかかりますか。


朝になるだろう。

船頭は深い編笠の間から答えた。


俺は彼女をひとり神社に残して、

湖に飛び込んだ。

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