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第1話

夏の国シャクドウのリゾート地ワタミ


ーーードーーンッ!


人々がくつろぎ、遊び、争いとは無縁の地であるこの場所で似つかわしくない爆発音が木霊する。


「参ったなー。まさか、テロの現場に出くわすとは思わなかった。」


中年で細身のいかにも紳士然とした男性が、近くで爆発音がなっているにもかかわらず、緊張感がないような様子でぼやく。


男は白木万上(しらき ばんじょう)

春の国シラヌイにある魔術学園オウカの学園長を務めている男で、今日はたまたま学園のスポンサーとの定例会議をすために来ていたのだが、運悪くテロの現場に遭遇してしまっていた。


(私は戦闘力皆無だし、だれか護衛をつけておくべきだったか。しかも)


白木は現在、警備部隊に保護されて非難場所に向かっているところであったが、不運にもテロリストのゲリラ部隊と遭遇し、交戦状態になっていた。


「増援はまだか!」


「こいつらかなりやるぞ!」


「第3部隊負傷者多数!増援要請がでています!」


「こっちも手いっぱいだ!何とか持ちこたえるよう伝えてくれ!」


聞こえてきた会話内容からかなりまずい状況であることが分かる。

実際、テロリストの人数は警備隊の人数よりも多く見え、他のところでも同じ状態であれば警備隊が圧し負ける可能性も十分に考えられる。


(かなり戦況が悪いな。テロリストも意外にやるようだし、かなりまずいかもしれない。)


白木がそう考えながら先ほどの事を思い出す。


(一応、ローズさんはすぐに援軍をよこしてくれると言ってくれていたが。)


知りうる人間の中で、こういった状況では一番頼りになる人間に救援の連絡を送っていたのだが


(近くにちょうど社員がいるからと言っていたがほんとに来てくれるのだろうか。)


と白木が考えていると


「・・・隊長!各交戦箇所においてこちらの部隊が敵部隊を押し返しているとのこと!」


「なに!?先ほどの通信では応援要請が出ていたはずだ!確かな情報なのか!?」


「それが、各部隊に一般の魔術師と思われる人物が戦闘に介入し、敵部隊に決定打を与えて立ち去っているとのことです。」


「各部隊にだと?たまたま居合わせた魔術師が加勢してくれたか!」


リゾート地であるワタミにはあらゆる人間が集まる。

一般人から、魔術師、財界の大物、政治家などあらゆる人間が集まり、非戦闘員は非難しているであろう状況であるが、魔術師が戦闘に参加してくれる可能性は十分にある。


「しかし、この状況で、しかもほぼ同じタイミングで魔術師の加勢がくるものか?タイミングが良すぎる気がするが。」


「・・・それが、各部隊の通信から推察するに、おそらく加勢してくれている魔術師は同一人物ではないかと。」


部下の報告を受け、警備部隊長の顔が驚愕に染まる。


「馬鹿なことを言うな!交戦箇所がどれほど離れていると思っている!?」


警備部隊長が信じられないという気持ちになるのも無理はない。

主な交戦箇所は、ここ第一警備部隊のほかに2か所あり、1か所は商業施設などが集まる商業区域、もう1か所は一般人が多く住まう居住区域となり、今第一部隊がいる行政区域とはそれほど離れているというわけではないが、各交戦場所を移動しようと思えば、最低でも30分以上時間がかかる距離である。


「私も聞き間違えではないかと思ったのですが、各部隊からあげられる魔術師の特徴が全く同じで。」


「くそ、どうなって、、っ!」


警備部隊長が話し終える間もなく、強烈な爆発音が鳴り響く。

突如としてテロリストのゲリラ部隊から爆発が起こったかと思えば、爆発の中から男が出てくる。


「はー、疲れた。これで最後か?」


その男は、少年といっていいような幼さを残している男だった。

外見からして、10代なかばほどの年齢でヤマトの人間に多い特徴である黒髪の男で、戦場であるにもかかわらず緊張感のない様子で警備部隊に歩み寄っていく。


「なあ、あんたが警備部隊の隊長?」


「あ、ああそうだが。」


急に現れた男、しかも少年にしか見えないものが敵部隊を殲滅したこの状況が未だに理解できていな部隊長だったが、声を掛けられ反射的に返事をする。


「ゲリラ部隊はあらかた片づけたから、一般人を避難場所に連れて行って」


ピリリリ


どこからともなく、通信デバイスのコール音が鳴ち響く。


「はい。ああ、社長。ええ、終わりましたよ。ええ、はい、、、ちょっと待ってください。」


通信デバイスで話しているかと思えば、急に警備部隊の後方にいた避難民に声を掛ける。


「えーと。白木さんて人。この中にいますか?」


「え!私が白木だけど。」


「うちの社長から電話を替わってくれって、ローズ・アグリアっていうんですけど。」


白木は現状が理解できていなかったが、少年が言った名前は聞き覚えがあるものであった。


「ローズさんから?ということは君が近場にいる社員ていう。」


「ええ、まあ。はいこれ。」


まさか社員というのが少年とは思わず呆気に取られていたが、デバイスを手渡されたことにより我に返った白木はデバイス越しに相手に話しかける。


「もしもし。ローズさんですか?」


「おお!白木くん、無事だったか!死んでなくて何よりだ。」


ローズ・アグリア。綜合警備会社セプテムの社長であり、白木の古い友人でもある人物である。


「ええ。助かりましたよ、ローズさん。」


「いやなに、近くに理冶(あやと)がいてよかったよ。聞くに、あまりいい状況ではなったようだしな。」


「ええ、危ないところでした。それにしても、理冶君というのですか、彼は。少年のようにしか見えませんが、本当に彼があなたの会社の社員なのですか?」


「ああ、間違いないよ。理冶が12のころからで、今が15だから、もう3年が経つ頃だね。」


「12歳から!?・・・はー、言いたいことはいろいろありますが、私が何を言っても無駄でしょう。」


衝撃的なことを言うローズに白木は驚愕しする。

教職についている人間として、倫理的に少年と言える年齢の子供に仕事を、それも戦闘を生業にしている会社で働らかせていることを咎めたい気持ちもあるが、相手の事を考えると、自分の言うことを素直に聞くわけもなし、それに問題児な人物ではあるが悪い人でないことを理解しているため、喉元まで出かかった言葉をいったん飲み込む。


「まったく。何を考えているのですか。」


「はっはっは!まあこちらにもいろいろあるんだよ。」


「それで?私に話があるのでしょう?」


「さすが、話が早くて助かるよ。実は・・・。


ーーー

ーー





「ということで。たのまれてくれないか?」


「ええ、そういうことであれば、わかりました。引き受けましょう。それでは諸々の手続きはこちらで行いますのでこれで失礼します。」


「ああ。すまないがよろしく頼むよ。」


話が終わった様子で白木がデバイスを理冶に返す。


「話、終わりました?」


「ああ、まあ、君も大変だろうけど、これからよろしく頼むよ。」


「?」


同情するような目で見られ、意味深な事を言われながらデバイスを返してくる白木に対し、理冶は言っていることがよくわからず、首をひねりながらデバイスを受け取る。


「社長?仕事終わったんで、とりあえずそっちに帰ったんでいいですかね?」


「ああ、いや。君には追加で仕事をしてもらいたい。」


「はー?まあいいですけど。なんの仕事です?」


「仕事の内容はーーーーー






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