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野良猫は大通りから人気の無い裏通りへと走ってしまった。ぼくは、勢い込んで灰色の裏通りを追い掛け回す。くぐもった灰色の裏通りで、息苦しさを覚え始めた頃には、野良猫はとっくに裏通りを広大な湖へと抜けてしまった。
ぼくは、ムキになって大急ぎで裏通りから銀色の湖の畔まで走る。野良猫はこちらを向いて「ふぎゃ!」と鳴いてから、工場地帯へと湖を駆け回っていった。それから、ぼくはその中央にある湖面に聳える橙色の工場地帯まで野良猫を追い掛け回すはめになった。
湖面まで銀色の砂粒が敷き詰められ、空気も工場地帯さながらの淀んだ空気ではなく。スッキリとした白い微風そのものだった。灰色の裏通りで息苦しさを覚えたぼくには、一服の清涼剤だった。
湖面をこれでもかと、野良猫を追い掛け回しながら、ぼくはふと気が付いた。
そうだ! ここなんだ!! 銀色の砂粒だ?!
「あれ? あなたは?!」
「?!」
ぼくは、野良猫を追い掛け回すのを止め。声のする方へ振り向いた。そこには、絶世の美しい女性が佇んでいた。
「はあ……今日の夢はほんとに不思議ねえ。だって、今でも夢の中なのよ。きっと私はまだ布団の中で、そして、これから夢の延長線上で仕事に行くんだわ~。……きっと、疲れているのよねえ。私……」
「……?」
ぼくは、一旦。湖面から戻って、もしやと思った。湖の畔で片手で銀色の砂粒を掬ってみる。
右手いっぱい銀色に染まり、サラサラと砂粒が指の隙間から落ちていく。
と、同時にぼくの右手も音も無く砂粒と一緒に粉々に落ちていく。
「そうだね……。今ではこっちが現実の世界……本当の世界なんだ……」
見ると、ぼくの肩、足、腹部、それから顔、そして、やはり体全体が銀色の砂粒のように……。
畔に咲く白いブバルディアへと跡形もなく崩れ去っていった。




