コンリのライバル
翌日、タルトは大きな欠伸をして目を覚ました。
「呑気に寝れるの、お前さんは……」
ずっと起きていたのか、コンリは真っ赤な目でタルトを睨んでこう言った。
「部屋全体に魔法で作ったセンサーがあります。それがあるのでゆっくり寝ればよかったのに」
「そんなもん不安で仕方ない。部屋中に防犯カメラやブザーは付いておるが、機械はどうしてもあてにできん」
「意外と慎重派なんですね」
タルトはこう言うと、身支度を整えた。コンリも欠伸をしながら起き上がって支度をし、朝食のあるキッチンへ向かった。
「おはようございます。タルトさん」
「おはよう父さん。先に食べてたよ」
「ずっとこのおっさんと一緒だったのね……可哀そう」
キッチンにはすでにシュウ達が集合していた。タルトとコンリは席に着き、目の前に置かれたパンやスープ、目玉焼きやサラダを食べ始めた。が、コンリは食欲が無いのか、すぐにナイフとフォークを机に置いた。
「食べないんですか?」
「食う気にならん。昨日、命が狙われたんだ」
「毎日狙われてると思ったんですがね」
クリムはシュウといちゃつきながらこう言った。その後、コンリはよろよろと立ち上がり、秘書に朝の仕事をすると言った。
コンリが仕事中、シュウ達は仕事の邪魔にならないよう、部屋の外にいた。廊下の前にはクリムとリナサが守っており、シュウとタルトは外で部屋の近くを見回りしていた。
しばらくすると、クリムとリナサの前に手紙を持った役員が現れた。
「どうかしたのですか?」
「コンリさんあてに手紙ですが……また脅迫文らしくて」
「脅迫文?」
クリムは手紙を受け取り、内容を呼んだ。
「次の選挙に出たら命がないと思え……ですか。子供らしい嫌がらせですね」
「心当たりはありますか?」
リナサの質問を聞き、役員ははいと答え、二人に話を始めた。
「証拠はないのですが、コンリさんのライバルであるブランビが怪しいと思います。コンリさんと何度も選挙で争ったのですが、結局コンリさんに票を奪われ落選しています」
「ブランビですか……」
「確か、この人もあまりよくない評判がある政治家ですね」
クリムは思い出しながらこう言った。この言葉を聞き、役員は頷いて返事をした。
「ブランビはライバルの政治家を暗殺するため、裏ギルドに依頼していると噂があります。昨日起きた騒動も、ブランビの仕業だと思います」
「その辺はスネック辺りから話を聞かないと」
リナサは携帯を見て口を開いたのだが、誰からも着信は来ていなかった。
「まだ話を聞きだしてないみたい」
「手伝いに行きたいですが、あの変態ロリコンクソ爺を守らなきゃいけませんですし」
「だね」
二人は会話を終え、再びコンリの守りを続けた。
コンリのライバルである政治家、ブランビの事務所にて。裏ギルドの団員から話を聞いたブランビは、激高してその団員の顔を蹴っていた。
「全くこの役立たずが‼ あの腐れ野郎の命を奪えなかっただと!?」
「向こうはエイトガーディアンを使い、コンリを守っているようで……我々だけでは対処できません」
「そんなこと知った事か‼ どんな状況でも仕事をこなすのが貴様ら裏ギルドじゃないのか!?」
「いくら裏ギルドと言っても、やれることとやれないことがありますよ」
そう言った男が、ブランビの足を止めて団員を守った。
「止めるな、まだ腹の虫は収まっていない‼」
「熱くなりやすい人だ。そんなだからコンリに勝てないのでは?」
「うるさい‼ 私に命令するな‼」
ブランビは男に攻撃しようとしたのだが、突如振り上げた左腕が重くなった。
「な……何だ……」
腕を見て、ブランビは驚いた。彼の左腕の二の腕付近から手首付近まで、いつの間にか凍り付いていたのだ。
「下手したら割れて左腕がなくなっちゃうぜ」
「ぐ……ぐぅ……」
「落ち着いたら氷を溶かしてやるよ」
男はこう言って、傷だらけの部下を抱き上げた。
「あ……ありがとうございます、ナフさん」
「なーに、部下を守るのがリーダーの役目だ。我々ライフブレイカーは他の野蛮な裏ギルドとは違って、紳士的であれと心がけているからな」
ナフは部下を休ませた後、ブランビに近付いて氷を溶かした。
「落ち着いたかい?」
「それなりにな。だが、選挙までもう時間がないんだぞ。どうやってコンリの奴を始末するんだ?」
「手は考えてあります。どの政治家も選挙活動中には、野外で宣伝活動を行います。その隙を狙って……バン‼」
と、ナフは右手で銃の形を作り、撃たれるような真似をした。それを見てナフは不安げにこう聞いた。
「狙撃するのか。うまく行くのか?」
「ライフブレイカーにも優秀な狙撃手がいます。彼なら一発でコンリの頭に風穴を開けることが可能でしょう」
「エイトガーディアンの連中と戦いになったら?」
「ま、それはその時に考えます。ご安心ください。あなたに雇われたって証拠は一切ないようにしますから」
そう言って、ナフは部屋から去って行った。緊張感のないナフを見て、ブランビは大丈夫かと心の中で呟いた。




