複雑化する事件
事務所襲撃の騒動が終わった後、タルトはシェラールのギルドからハヤテとボーノを呼んでいた。二人はシュウ達が倒した敵を車の中にいれた後、タルトにこう言った。
「そんじゃ、取り調べをやってくるから」
「何か分かったら教えるよ。常に携帯を持っていてください」
「ああ。すまないな、面倒なことを押し付けてしまって」
「なーに。丁度こっちも暇だったから、何か仕事がしたかったんだよ」
「取り調べだったら、スネックの奴もできそうだし」
「だな。じゃ、俺達はそろそろ行くから」
会話を終え、ハヤテとボーノは車に乗って去って行った。去っていく車を見て、クリムは少しうなっていた。
「どうしたの? クリムお姉ちゃん」
「あいつらの正体……裏ギルドの連中だと思います」
「俺もそう思う。俺達が強かったにしても、奴らは手慣れた戦闘術を身に着けていた」
「お兄ちゃんと同じことを思ってた。きっと、また襲ってくる可能性もあるかも」
「ええ。狙いは多分……いや、確実にあのロリコン野郎です」
その後、タルトはコンリから聞き取り、シュウ達は事務員や秘書などに話をして情報を集めていた。コンリが誰かから命を狙われているとすれば、きっと理由があるはず。そう思い、行動を始めたのだ。
情報収集から数分後、バカップルとリナサは同じ部屋で情報をまとめていた。
「コンリは数年前、未成年の少女にとんでもない事をやらかして訴えられた。でも、権力と金の力で不起訴に」
「3年前の選挙で不正を働いたって週刊誌がネタにしてた。だけど、本人曰く全くのでたらめで、不正を働いたという証拠は結局見つからなかった」
「うーん……情報をまとめてみたけど、あのロリコン野郎の周りは敵ばっかじゃねーか」
呆れたシュウは溜息と共に横になった。それもそのはず、コンリを恨み、憎んでいる人物の数はかなり多かったのだ。
「こんなに多かったら、誰が命を狙っているのか絞り切れませんよ。賢者の私でも、お手上げです」
「いい歳こいて情けない人もいるんだね……」
クリムとリナサは疲れた体と気持ちを癒すため、シュウの両側に移動した。
「先輩、一緒に寝ましょうよ」
「私も」
「ああ……俺も少し疲れたから、寝たい」
その後、疲れ果てた三人は少し仮眠をすることにした。
そんな中、タルトは一人でコンリと話をしていた。
「全く、こんなに敵だらけじゃあ誰が命を狙っているか分からないじゃないですか」
「誰が私の命を狙うかはどうでもよい‼ お前達が守ってくれるからな。そもそも、お前達に依頼をしたのは守れという依頼だ。私を狙う奴を倒せとは命令していない‼」
「しかし……今後命を狙われた場合」
「お前とその息子が体を張って私を守ればよい。死んでも私を守れ」
コンリは鼻を鳴らし、部屋から出て行った。流石のタルトも、先ほどのセリフを聞いて少々苛立っていた。
「あの野郎、命を何だと思っているんだ。依頼人でなければ、すぐにしょっ引いてやるのに」
苛立ってもしょうがない。タルトは自分にそう言い聞かせつつ、部屋から出て行ったコンリを追って行った。
その頃、ハリアの村にて。
「シュウ君とクリムちゃんがいないと静かだね~」
「騒がしいのはシュウのファンとクリムさんだったからね」
シュガーとラックが廊下で会話をしていた。ラックはシュウが留守のせいでやる気がない女戦士達を見てこう言っていた。そんな中、一人の少女がギルドのカウンターにやってきた。
「女の子?」
「何かあったのかなー」
二人が気にしていると、受付嬢が二人の元にやってきた。
「ラックさん、シュガーさん、あの子の話を聞いてもらってもいいですか?」
「はい」
その後、二人は少女の所へ移動し、話を聞き始めた。
「あなた達に依頼したいのは、私のママに酷い事をした男を捕まえてほしいのです」
「酷い事をした。どんなことをしたの?」
ラックがこう聞くと、女の子は少し間を開けてこう言った。
「ママが言ってたの。まだ未成年の頃、コンリという奴に無理やり襲われたって。それで、ママは妊娠して……私が生まれたの」
この言葉を聞き、シュガーとラックは驚いた。二人もコンリの名前と性癖の事はよく知っている。
「コンリ……あの変態政治家で有名なクソ野郎ですね」
「うん。コンリはママと私を見捨てたの。ママは頑張って私を育てたけど……病気になって……そのまま……うう……私は、おじさんからこのギルドなら必ず助けになるって言われてここに来たの……」
女の子はここまで言うと、母親の事を思い出したのか、大きな声で泣き始めた。その声を聞いたのか、ティラが姿を現した。
「おいおい、ギルドは託児所じゃねーぞー」
「ティラさん、とりあえず話を聞いてください」
「ん?」
ティラはシュガーから話を聞き、舌打ちを鳴らした。
「コンリって奴は知ってる。あの(ピー)、とんでもねーことをやらかしやがったな。テメーの快楽の為に人一人の人生をぶっ壊しやがって」
ティラはこう言うと、女の子にこう言った。
「私に任せな。コンリの野郎は私がぶっ飛ばしてやる。約束だ」
「ありがとう……ありがとうおばちゃん‼」
女の子は笑顔でこう言った。おばちゃんと言われてティラは顔が引きつったのだが、相手は女の子である。手を出したら流石にまずいという事を、ティラは把握している。
「う……うん。任せておきな……その前に、私はおばちゃんじゃないからな」
と、念押しにティラはこう言った。




