襲撃者の登場‼
バカップルは急いで事務所へ向かった。二人の接近を知った黒い自動車から降りた男が気付き、慌てて銃を乱射した。
「馬鹿‼ コンリに気付かれるだろうが‼」
横にいた別の男が、大きな声で銃を乱射した男に注意をした。その音を聞いたのか、入口から剣を持ったタルトが現れた。
「何だ貴様ら!?」
「クソッ、気付かれた‼」
男達は急いで黒い自動車に戻ろうとしたのだが、クリムが魔法でタイヤを凍らせてしまい、車は発進できなかった。
「ナイスだクリム」
シュウは銃を持って車に近付き、銃をガラス窓に押し付けてこう言った。
「さっさと出て来い。でないと撃つ」
車内にいる男達は銃を向けられ、怯えた表情をしていた。その時、クリムの叫び声がシュウに聞こえた。
「先輩‼ 後ろから変なバイクが来ています‼」
「なっ!?」
後ろを見ると、そこには大きな何かを背負ったライダーがシュウに向かって走って来ていた。スピードを落とさないところを見ると、シュウは自分を跳ね飛ばすだろうと察した。
「俺を引き飛ばそうと思ったが……頭はよさそうじゃないな」
呆れて呟いた後、シュウは銃を構えてバイクのタイヤを狙って撃った。タイヤは激しい音を立てながらパンクして転倒し、そのまま車に激突した。しかし、ライダーは高く飛び上がって事故から免れていた。
「ひゅー、危ない危ない」
「クタイドさん‼」
「助けに来てくれたんですね」
車内にいる男達がはしゃぐように叫んだ。クタイドと呼ばれた男は、背負った何かを取り出し、包まれている袋を外しながら語り始めた。
「酷い事をするねぇ。俺の大事なバイクが台無しじゃないか」
「うるせー」
「そんなものを俺に向けて……勝ったつもりかね?」
この言葉の後、クタイドの姿が消えた。シュウは防御の態勢を取り、クリムはシュウの周りに風を放った。しかし、クリムが放った風はクタイドの居合斬りで消え去ってしまった。
「あの刀……もしかして魔力を消滅させる力が……」
この時、クリムはディアボとの戦いを思い出した。ディアボはクルーガーが作った魔力を消し去る力がある剣でクリムを追い詰めたことがあるのだ。
「そう。クルーガーという奴が作った武器が、一部裏で出回っているんだよ」
「それを手にしたのですね……」
クリムはクタイドとの戦いは不利になると判断し、周囲を見回した。クタイドの登場で車内にいるクタイドの部下らしき男達の勢いが増しており、また事務所に入ろうとしている。すぐに倒しに行きたいが、クタイドはシュウと交戦している。シュウも助けたいし、事務所へ入るのも防ぎたい。悩んでいると、事務所前に移動していた男達が、何らかの力で吹き飛ぶ光景が見えた。
「クリムお姉ちゃん、ここは私が守るから安心して」
「リナサちゃん‼」
入り口前にはリナサが立っていた。すでに光魔法を発し、部下達を追い払っていたのだ。その時、入口付近にいたタルトの姿が消えていた。
「あれ? タルトさんは?」
クリムは呟きながら、周囲を見回した。
剣と銃の戦い。距離によっては有利不利が変わってくる。今の状況、クタイドはシュウに接近している。どれだけシュウが銃を使うために離れたとしても、クタイドは距離を詰めてくる。
「どうした? 仲間の魔法が効かない事を察して逃げてるのか? それとも、アイデアが出来るまでの時間稼ぎか?」
「考えを敵に教える馬鹿がいると思うか?」
「いないねぇ」
「いるぜ。お前の目の前に。教えてやるよ、クリム以外にも頼れる人はいる」
「む?」
この直後、タルトがクタイドの前に乱入し、鋭い一閃を放った。
「クアッ‼」
クタイドはこの一閃を何とか防御したが、刀が一部欠けてしまった。
「貴様の相手は私がしよう」
「お前は……エイトガーディアンのソードマスター、タルト‼」
クタイドは動揺しながら、後ろに下がった。
「シュウ、お前はコンリの護衛に回ってくれ。雑魚の片付けはリナサとクリムちゃんがやるようだ」
「分かった。父さん、怪我しないでね」
「ああ」
会話後、シュウは急いで事務所内へ入って行った。行かすまいと思ったクタイドは刀を握ろうとしたのだが、タルトが攻撃の邪魔をした。
「蹴りって……あんたそれでも剣士かい?」
「悪党相手には手段を選ばんさ」
「仕方ないねぇ。あんたを始末して仕事に取り掛かるしかないねぇ‼」
「やれるものならやってみろ」
タルトは剣を構え、クタイドにこう言った。
事務所内に入ったシュウは、急いでコンリの元へ向かった。
「何じゃ何じゃこの騒ぎは!? 爆発音がしたぞ‼」
コンリの動揺する声が聞こえた。シュウは安堵の息を吐きつつ、コンリの所へ向かった。
「おいロリコンクソジジイ、どこか安全な部屋はどこか教えろ、そこへ連れてく‼」
「地下に避難室がある。そこへ行けば安心だろう」
「分かった。案内してくれ」
「私を前にして移動するつもりか!?」
「俺には銃がある」
シュウは左手の銃を見せて、コンリを安心させようとした。だが、コンリはシュウの腕をまだ信頼してはいなかった。
「本当に大丈夫か?」
「じゃあここで突っ立って死ぬのを待つか?」
「ぐ……ううううううう……分かった。頼むぞ」
「最初から素直になればよかったんだ」
その後、シュウはコンリと共に地下室へ向かった。




