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苛立ちの中で

 シュウはこれまでの人生の中で一番苛立っていた。コンリはクリムの事が気に入ったのか、やたらとシュウの横にいるクリムに話しかけている。クリムはシュウの手を握り、コンリの言う事を無視しているが、それでもコンリは話しかけてきている。


「すみません、今は仕事中なのでプライベートな会話は……」


「黙れ‼ たかがギルドの戦士が私のやり方に文句を言うな‼」


 タルトがコンリを止めようとしているのだが、それでもコンリは止まらなかった。本当にこいつの脳天に一発弾丸を打ち込んでやろうか? シュウは心の中でこう言った。


 車での移動は数時間で終わり、シュウ達はコンリの事務所兼住宅へ入った。政治家の事務所だけあって、廊下や部屋などは綺麗に掃除されていた。


「では、今から私は仕事をしますので、護衛をよろしくお願いします。クリムちゃんとリナサちゃんは私の傍で。後の輩はどっか行け」


「そうはいきません」


「護衛の依頼をする以上、4人でしっかり行わないといけませんので」


 と言って、シュウとタルトは無理矢理コンリの仕事部屋へ入った。その後、シュウ達が護衛をする中、コンリは仕事を始めた。仕事と言っても、会議の打ち合わせや今後の予定の話し合いである。時折コンリが下品な目つきでクリムを見つめたが、それに気付いたシュウが殺意の眼差しを度々送っていた。そんなことは多々あったが、物騒なことは起きていなかった。


「何もないね……」


「だが、油断してたらどこからか奇襲されるだろう」


「まぁ、あんな奴が殺されても私達は関係ないけど」


「リナサ、物騒なことを言うな。苛立ってるのは分かるけど」


 この言葉を聞き、タルトはリナサがコンリの事を心底嫌っていることを把握した。まぁ、スケベかつロリコンで、時折いやらしい目でクリムを見つめている。誰だってそんな気分になるなとタルトは思った。


 数時間後、仕事を終えたコンリはクリムの方を見てこう言った。


「仕事は終わったし、クリムちゃん。一緒にご飯でも」


「俺も一緒に行きます。ゴチになります」


 シュウはこう言いながら、コンリの前に立った。その目からは、クリムに手を出したらマジでぶっ殺す。と言いたそうなオーラが出ていた。それを察したコンリは悲鳴を上げながら後ろに下がった。


「分かった。君も同席して構わない」


「あざーっす」


 というわけで、シュウ達はコンリのおごりで食事に向かう事になった。事務所から出る時、ブツブツ文句を言っているコンリを遠くから何者かが見ていた。シュウはそれに気付き、銃をこっそりと構えていた。だが、その者はシュウの動きに気付き、去って行った。




 レストランにて。タルトの横に座っているコンリは渋い顔でパンを食べていた。クリムとリナサの間に挟まれるように座っているシュウは、先ほどの事をクリムに話していた。


「クリム、何者かがあのロリコン爺を見ていたぜ」


「私も気付きました。ただ、先輩が銃を構えていたので出番はないと思いましたが」


「何? 気配に気づいたのに手を出さなかったのか?」


 コンリが机をたたきながらシュウに問い詰めると、シュウはため息を吐きながら答えた。


「いいかロリコンクソ爺」


「段々私に対しての暴言が酷くなっていくな」


「黙れ。いいか? あんたを見ていた奴がゴシップ記事を取るつもりで潜んでいた記者の可能性がある。遠くから見ていたってだけで裏ギルドの連中とは限らないんだよ」


「追いかけようとしても、相手はお兄ちゃんの動きを見てすぐに逃げたし」


 リナサがシュウの言葉に続けてこう言った。それから、クリムが水を飲んで言葉を続けた。


「こっちも何にも罪のない人を間違えて攻撃したら、逆に騒動になってしまいます。そのあたりは慎重にやらないといけないので」


「そんな事があったら、私が守ってやるさ」


「あなたの力でどうにかしたら、各地から叩かれ、他のギルドに多大な迷惑を掛けます」


 タルトは茹でたニンジンを食べ、こう言った。シュウ達の言葉を聞き、コンリはため息を吐いた。


「全く……面倒な組織だなぁ……」


「面倒なのはあなたの方です」


「仕事前にあんたの事を調べた。あんたには敵が多すぎる。その中に命を奪いたいって思う奴もいるかもしれない」


「なら、そいつらを逮捕すればいいじゃないか?」


「その人たちが行動しないと捕まえられない」


「とにかく……今回の食事は特例としますが、これからは野外で宣伝する以外は自宅で待機していてください」


 食事を終えたタルトがこう言うと、渋い顔でコンリは了解と呟いた。




 その後、事務所に戻って来たシュウ達は、護衛をタルトとリナサに任せて外に出た。


「大体この辺りだったな」


「はい」


 バカップルは先程の人物がいた場所を調べていた。茂みが多々あり、姿を隠すのはうってつけの場所だった。


「何か証拠があればいいんだけど」


「そこまで間抜けな人じゃないみたいですね。何もないです」


「だな」


 バカップルは捜索を終えて事務所に戻ろうとした。その時、事務所の前に二台の黒い自動車が停車した。


「待ってください先輩。魔力を感じます」


「まさか……」


「そのまさかです」


 クリムがこう言った直後、車の中から武器や魔力を解放した男達が車から降りてきた。

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