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現れた侵入者

 クリム達を乗せたリムジンは、無事にボーレ本社に到着した。


「何もなかったな」


「連中も考えてるんですよ。大きな事件を起こさずに薬を奪いたいから」


「ああ、命を助ける薬を奪うために、命を奪うなんてとんでもねー話だしな」


 バカップルが会話をしていると、ロビーからダスヤが走ってきた。


「皆さん、お待ちしていました」


「どうも。早速仕事の話になりますが、あんたらが作ったナデモースって薬は今どこにあるか教えてくれ」


「はい」


 その後、ダスヤは周囲を見回し、クリム達の案内を始めた。移動を始めようとしたその時、クリムがこう言った。


「一緒に付いて来ている人は社員ですか?」


「はい」


「……ダスヤさん、私の考えですが、もうこの会社の中にスパイがいると思ってください」


 クリムの言葉を聞き、ダスヤは目を開けて驚いていた。


「何驚いてるのよ、あくどい連中は手段を選ばないわよ」


 ミゼリーはため息を吐き、怯えているダスヤにこう言った。会話後、ダスヤは大急ぎで他の社員にどこかへ行くように伝えた後、クリム達をナデモースを置いてある部屋に案内した。


「こちらです」


 頑丈な部屋の中は、たくさんのコンピューターが設置されていた。その中には研究員らしき人物が3人ほどおり、いそいそと体を動かしていた。その部屋の中央にはケースが置かれており、その中にカプセルが置いてあった。


「あれがナデモースですね」


「はい。今現在3錠のナデモースを製造に成功しました。実験も成功しています。後は特許取得まで待つだけです」


「ほう……」


 クリムは周りのコンピューターを見て、ダスヤにこう聞いた。


「この中に重要なデータがあるんですね」


「ええ」


「おっと、これ以上は言わない方がいいですよ。もしかしたら、あなたのポケットの中に盗聴マイクがあるかもしれないから」


 シュウがこう言うと、ダスヤの顔が青く染まった。


「一応念のために用心してください。俺達が入口からここまで来る時、変な輩が来ないように目配りしてたので」


「ありがとうございます……」


 その後、クリム達は部屋から出て、社内にある客用の部屋へ案内された。


「仕事が終わるまで、皆さんはこの部屋をお使いください。何かあれば、これで連絡をします」


 と言うと、ダスヤはクリム達に小さなタブレット端末を渡した。


「これはこの社内専用のタブレットです。緊急事態や連絡をするときに使う物です」


「会社用の連絡道具ってわけだな」


 ジャックはポケットに入れ、クリム達に声をかけた。


「うし。早速これからの事で話をするか」


 その後、クリム達は部屋の中でこれからの事を話し始めた。




 数時間後、先ほどの部屋の前にはシュウとクリムが立っていた。先ほどの話し合いで、二人一組で研究ベアを守る事になったのだ。


「何かあった時大丈夫ですかねー?」


 クリムがシュウに近付き、シュウの腕に抱き着きながら話を切り出した。


「何かあった時って?」


「こんな広い会社じゃあ、どこから侵入者が入ってくるか分かりませんよ。私の魔法でも探知するのに時間がかかりそうです」


「確かにな。でも、ジャックさんもミゼリーさんもその辺は察知してると思うよ」


「そうですか。そういえば、あの二人って強いのですか?」


「うん。ジャックさんとミゼリーさんは俺がギルドに入る前から仕事をしてた。俺より結構経験してるって」


「そうだったんですか」


 クリムは少し驚いた顔を見せた。その直後、部屋の中から研究員が現れた。


「すまない、トイレに行きたいからどいてくれないか?」


「ああ、すみません」


「どうぞ」


 二人は道を開け、研究員を通した。二人は研究員の後をずっと見つめていた。


 研究室から近くのトイレ。先ほどの研究員はそこで用を足していた。


「ふぃ……一体いつになったら研究室にトイレを作ってくれるんだよ、少し離れてるから我慢できないとき辛いんだよ……」


 用を足しながら愚痴をこぼしていると、後ろから窓が開く音がした。音にびっくりし、研究員は後ろを振り向いたが、そこには何もなかった。


「……カラスのいたずらか?」


 そう思い、手を洗うために手洗い場へ向かった。手を洗っている時、研究員は背後から気配を感じた。後ろを振り向くと、そこには黒い服を着て、顔全体を隠すマスクを被った人物がいた。その手には、紐が握られていた。


「なっ!?」


 マスクを被った人物は、ひるんだ研究員の首を手にした紐で縛り始めた。


「が……ががっ……」


 研究員は助けを呼ぶため、音を出そうとしたのだが、なかなか足は動かなかった。


 もうダメか。そう思った時、急に呼吸ができるようになった。


「あ……あれ?」


「あなたは誰ですか?」


 何と、トイレの入口にクリムが立っていたのだ。マスクの人物は舌打ちをし、クリムに向かって突進しようとしたのだが、目の前に電撃が発した。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」


 マスクの人物はクリムが放った電撃によって感電し、その場に倒れた。クリムは倒れたマスクの人物の手足を縛り、タブレット端末で連絡を始めた。


「先輩、不審な人物がいました」


『了解。入口の方は俺が守るから、クリムは社内の警備員にこの事を伝えてくれ』


「はい。先輩も気を付けてください」


 会話を終えた後、クリムは研究員から警備員の場所を聞き、すぐに向かった。その道中、クリムはもう戦いは始まってると心の中で思った。




 同時刻、ジャックは3階のベランダの出入り口の前にいた。大きな欠伸をし、外から様子を見ていた。そんな時、ミゼリーから連絡が入った。


『ジャック、大変よ! 今侵入者が現れたらしいのよ‼』


「で、そいつはどうなった?」


『クリムが倒したから問題ないけど』


「ならいい。俺は俺で見張りを続けている」


『分かったわ。でも、気を付けてね。奴らの仲間がいるかもしれないから』


「了解。お前も気を付けろよ」


 ジャックがそう言うと、通話は切れた。ジャックは溜息を洩らし、ベランダの入口を開けて外に出た。そして、屋上へ向かって高くジャンプをし、屋上に飛び移った。そこには、黒い服を着た怪しい3人組がいた。


「気配もろばれだっつーの」


「な……何だお前は!?」


 男達は現れたジャックに対し、慌てて銃を向けた。それに対し、ジャックは動揺もせずに剣を抜いてこう答えた。


「その質問、そのままお返しするぜ。何者だてめーら?」


 ジャックは魔力を開放し、男達を睨んだ。

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