大物からの依頼
バカップルは依頼で外に出ていた。2人はとあるモンスターの討伐を行っているのだ。
「結構厄介な依頼でしたねー」
「ああ。まさかこんなことになるなんて思ってもなかったな」
バカップルは巨大なモンスターの群れの中央にいる。その巨大なモンスター、グレイパウアーという熊型のモンスターは、雄たけびを上げて一斉にバカップルに襲い掛かった。
「飛びますよ」
「頼む」
シュウを掴んだクリムは魔力を使って高く飛び上がり、群れから離れた場所へ着地した。
「クリム、魔力を溜めていてくれ。それまで俺が援護する」
「分かりました‼」
シュウは左手に銃を装備し、グレイパウアーに目がけて発砲した。シュウが銃を撃ったことを察したグレイパウアーの群れは、紫色に変色した爪を振り回して飛んでくる弾丸を弾き落とした。
「意外とやるようだな」
「ですねー。では、次は私の番です」
クリムは自分の目の前に魔法陣を発し、群れに向けて移動させた。
「私が作った炎の魔法陣、フレイムサークル。結構魔力を込めたから、破壊力は抜群ですよ」
クリムがこう言った直後、魔法陣は激しい音を立てて破裂し、グレイパウアーの群れを一掃した。
「終わりましたね」
「ああ。やっぱりクリムは強いな」
「えへへー」
シュウに頭を撫でられ、クリムは上機嫌だった。
その後、依頼を終えたバカップルは報告するため、ギルドのカウンターへ向かった。その時、バカップルは見知らぬ顔の男性がカウンター内をおろおろしているのを目撃した。
「何ですかねあの人?」
「依頼に来たと思うけど」
会話を耳にしたのか、見知らぬ男性はクリムに近付いた。
「もしかして、賢者のクリム様ですか?」
男性はクリムに顔を近づけ、険しい顔でこう聞いた。
「は……はい。そうですが……」
「よかった。丁度いいタイミングで戻ってきたのか……」
「オイおっさん、何の話か教えてくれよ」
シュウの言葉を聞き、男性は失礼しましたと頭を下げ、咳ばらいをして話を始めた。
「私は製薬会社、ボーレの会長秘書、ダスヤと申します」
「仕事の話ですね。それに、私並の強さじゃないと解決できない難しい仕事」
クリムがこう言うと、ダスヤは少し口を閉じた。黙ったままでは話が進まないと考えたシュウは、溜息と共にダスヤにこう言った。
「仕事の話はまずギルドを通してください。そこから俺達戦士達に話が通りますので」
「そうですか……では、失礼します」
その後、ダスヤはカウンターへ戻り、受付嬢と話を始めた。話をするダスヤの姿を見ながら、シュウは呟いた。
「何の依頼なんだ?」
「おそらく、結構ややこしい依頼だと思いますよ。先輩、これを見てください」
シュウはクリムが手にするスマホの画面を見た。そこには、ボーレについての記事がいくつか乗っていた。
「へー、新しい薬を作ってるのか」
「私の予想ですが、多数のライバル会社がこの薬を狙っているんだと思います。一度、修行時代の時に聞いたことがあるんですよ、ボーレが全ての病に対して効果がある薬を作っていると」
「それを狙って、ライバル会社が暗躍しているってわけか」
「ですね。でも、この話も大分前なので、別の話と言う可能性もあります」
会話をしていると、チャイムで二人の名が呼ばれ、面会室へ向かった。面会室、2人が座る目の前にダスヤが座っていた。
「では改めて仕事の話を聞きましょう」
「はい。あなた達に依頼したい仕事は、我が社の製薬センターの護衛です」
「……新薬の研究の護衛ですね」
「はい。多数のライバル会社が、我が社が開発したナデモースを奪おうとしています。これまで、無数の戦士達に護衛の仕事を依頼して、何とか守れましたが……相手もかなり手ごわい戦士を雇ったせいか、徐々に護衛が難しくなっております。なので……歴代最強と呼ばれた賢者様にお願いしようと思い、ここへ来ました」
話を聞き、クリムは少し考えた後でこう聞いた。
「期間はどのくらいですか?」
「薬の開発及び特許取得まで。大体2週間近くかかる予定です。あくまでも予想ですが、それより早く終わる可能性もあります」
「ライバル会社について、一体いくつの会社がナデモースを狙っているんですか?」
「そこまでは分かりません。中小企業はもちろん、大企業クラスと言われる会社からも狙われていますので」
「ほうほう……」
クリムは頷いた後、シュウに近付いた。
「この依頼、どうしますか?」
「クリムが出るんだったら、俺も行く」
「分かりました。では、条件として私の彼氏であるシュウ・バイソンも同行、及び信頼できる戦士も同行の許可をお願いします」
「了解しました」
と言うわけで、次の仕事が決まった。シュウは話を聞き、大きな仕事を抱えたなと呟いた。
会話後、シュウとクリムは廊下を歩きながら話していた。
「他に誰を連れてくんだ?」
「ラックさんとシュガーさんはどうでしょうか?」
「今あの2人は別の仕事に行ったからなー。ジャック先輩とミゼリー先輩に頼もうかな……」
「話は聞いたぜ、シュウ」
この時、後ろの扉にいたジャックが声をかけた。
「先輩」
「ボーレからデカい仕事を受けたんだって?俺も手伝わせろよ」
「ジャック、たった今賭け事で負けたからお金が欲しいのね」
ジャックの後ろにいたミゼリーがこう言うと、ジャックはずっこけてしまった。
「何だよ、あの勝負見てたのかよ」
「インチキ失敗して逆に負けるとは、あんたアホね」
「うっせー‼」
「よかった、2人に今度の仕事に同行を願おうとして探してたんですよ」
「お手伝い、できますか?」
シュウとクリムがこう聞くと、ジャックとミゼリーはいい返事で答えた。
翌日。4人を迎えるために村の入口に巨大なリムジンが入って来た。
「でっけーリムジン」
「賢者の里のリムジンよりでかい」
シュウは珍しそうにリムジンの周りを見回し、クリムは賢者の里の事を思い出していた。
「おい、落ち着けよ」
「ふふ。いくら強くても、やっぱり子供ね」
バカップルの様子を見たジャックとミゼリーが、笑いながらこう言った。その後、車にいた運転手が、4人の乗るように促した。
「では、あなた方をボーレ本社へとご案内します。ここから本社までは片道3時間程なので、到着までゆっくりしてください」
運転手がこう言うと、リムジンは発車した。ジャックは車内を見回し、小さく呟いた。
「ゆっくりしてくださいって言っても……」
足元は超高級カーペット。クマの頭も付いている。さらに、今座っている椅子は高級な黒革を使っている。普通の車のものとは手触りが違う。さらに、目の前のテーブルにはところどころ宝石が埋め込まれていて、その上に乗っているのは1本何万ネカもするワインがあった。
「これ……飲んでもいいのかしら」
ミゼリーがワインを凝視しながらこう呟いた。
「仕事があるんだから、飲むんじゃねーよ」
ミゼリーからワインを遠ざける中、バカップルでひとつの椅子に座り、イチャイチャしていた。
「お前らも仕事なんだからイチャイチャするなよ……」
バカップルのキスシーンを見ながら、ジャックは深いため息を吐いた。




