潜入する戦士達
シュウ達がハチェーズTVの前に到着したと同時に、一台の車が急ブレーキをかけながら近づいた。
「うわ、何だ何だ!?」
「あの荒い運転……スネックが運転してるのね」
車を見て、リナサが呆れてこう言った。すると、車の中からスネックとボーノが現れた。
「あ? ハリアの村の連中じゃねーか。同じタイミングで着いたか」
「仲間が多い方がいいだろ。こんな事件なんだし」
ボーノがミゼリーに近付いて、話を始めた。その時、ギナはおどおどとしながら近づいた。
「あなたはなんですか?」
「もしかして、この局の人?」
クリムとシュガーがギナに近付いた。ギナは返事をし、二人にこう言った。
「助けに来てくれてありがとうございます。実は先程……銃声が聞こえて……」
「皆、最悪な出来事が起きてしまった……」
シュウが携帯を持ってこう言った。その後、シュウはラックから会長が殺されたこと、その映像が生放送で流れたことを報告した。話を聞き、スネックとボーノは携帯を見て映像を確認した。
「もうネットのニュースに流れてやがる……」
「会長……あんなことをしなければ……」
ギナの言葉を聞き、シュウ達は一斉に振り向いた。
「あの会長、なんかやばい事でもしてたの?」
フィアットが近付いて、ギナに問い詰めた。よそ見をしようとしたのだが、その横にはシュガーが怪しい瞳で睨んでいた。ギナは深呼吸をして息を整え、シュウ達に話を始めた。
「以前、会長が視聴率を取るなら他の局がやらないことをすればいいと言っていました。それで、裏ギルドが犯罪を犯す瞬間を何としても掴めと指示をしました。その後、スタッフたちが裏ギルドの犯罪の瞬間の映像を撮影し、何とか逃げて編集し、放送したことがあります」
「その番組、見たことあるぜ。確かその裏ギルドって、野生の咆哮だったよな」
ボーノの言葉を聞き、クリムはすぐにギナにこう聞いた。
「その番組をやってから、野生の咆哮の団員は捕まりましたか?」
「はい。警察とギルドがその番組を元に団員を捕まえたとニュースを聞きました」
「だからこのテレビ局を狙ったんですね……」
「このテレビ局が流した番組のせいで、捕まった仲間と失敗した仕事の分の金をとるためか」
シュウの言葉を聞き、クリムははいと答えた。時計を見ていたリナサは、シュウの服の裾を引っ張ってこう言った。
「会長がやられてから五分が経つよ」
「急がなければなりませんね。早く潜入し、連中を倒しましょう」
「その役目なら俺達が引き受ける」
と、スネックとボーノが武器を持ってこう言った。それを見て、フィアットが慌てて止めた。
「ちょっと、あんたら分かってんの? 派手に暴れたら、奴らは確実に人質を始末するわよ‼」
「させないから大丈夫よ」
ミゼリーはフィアットにウィンクをし、テレビ局の周りを見回した。
「そこがいいわね」
そう言うと、魔力を開放し、桃色の霧を発生させた。
「何それ?」
「睡眠作用のある霧よ。魔力を上手く使えば、人質以外の連中を眠らせる事が出来る」
「ほへー、そんな事が出来るんだー」
フィアットは目を丸くしながら、感心してこう言った。
「さ、暴れてもいいわよ」
「そうしたい……が、他に誰かついて行ってくれ」
「このデカいビルの中じゃ、二人だけじゃ足りないからな」
クリムは二人の言葉を聞き、なるほどと思った。ハチェーズTVは二十階建てで、物凄く広い面積のある建物。建物内を回るだけで、一日はかかりそうだ。
「なら、私が行きます」
「俺も行く」
と、バカップルがこう言った。バカップルを見て、スネックはにやりと笑った。
「お前ら二人が来てくれるなら心強いぜ」
その後、シュウ達潜入組は建物の死角から潜入、外にいるシュガーとミゼリーは怪我人の手当て、リナサとフィアットは連絡と逃げ出した野生の咆哮団員の処理を担当する事になった。
「誰もいないみたいだな」
「ミゼリー先輩の魔法が効いてると思います」
「すげー姉ちゃんだな。これだけの魔法が使えるなんて」
「私も一応使えますが」
会話をしながら、シュウ達は人質達を探していた。すると、奥からすすり泣く声が聞こえた。
「一応武器を持っていくぞ」
スネックの言われた通りにし、シュウは銃を持ち、クリムは少し魔力を開放していた。先に進むと、そこには取り囲まれた人質達がいた。
「大丈夫だ。俺達はギルドの戦士だ」
「助けに来た。奴らが寝ている隙に早く逃げろ」
「騒ぐと奴らが起きると思いますので、静かに移動をお願いします」
「ありがとうございます」
解放された人質達は、静かに入口へ向かった。
「この調子で開放していくぞ」
と、スネックはシュウ達にこう言った。
その頃、グルザークは下の異変に気付いていた。
「変な臭いがするな……」
その臭いを嗅いだ瞬間、グルザークはめまいを起こした。
「グッ……侵入者が来たな……」
「どうしますかボス? ガスマスクなんて用意してません」
「このまま、俺達は捕まってしまうんでしょうか?」
異変を察した部下が弱気になり、グルザークにこう言った。弱気になった部下を見て、グルザークはため息を吐いた。
「恐れるなバカ者。今すぐサイレンを鳴らせ、それで下にいる連中は起きるはずだ」
「分かりました」
「それからこう伝えろ、侵入者と人質を全員始末しろとな」
グルザークはにやりと笑い、部下にこう指示した。




