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地獄のような生放送

シュウ達がヘリコプターに乗り込み、数分が経過した。


「やっぱり、高性能なヘリでも時間はかかるんですね」


 クリムが時計を見ながら呟いた。それに答えるかのように、フィアットが振り向いた。


「うん。これから現場までは一時間はかかるって」


「一時間……」


 クリムは考えた。この調子で行くと、人質の命が確実に奪われる。早く現場へ行って解決しなければ、人質は助からない。


「魔法で追い風を作ります。それで一気にスピードを上げましょう‼」


「そんな無茶な‼ これでもスピードを出して飛んでるんですよ‼」


 と、パイロットがこう言ったが、フィアットがこう怒鳴った。


「このお馬鹿‼ 早く行かないと人質が殺されるんだよ、そんな事言ってる場合じゃないってば‼」


「し……しかし、墜落する恐れが……」


「魔法で何とかするから大丈夫」


 話を聞いていたリナサは、すでにシートベルトをして準備をしている。


「クリム、どうやって風を出すんだ?」


 リナサと同じようにシートベルトをして、シュウはこう聞いた。


「こうするんです」


 クリムは窓を開け、そこから風を操った。


「さぁ、風を一気に爆発させますよ。ちゃんとシートベルトをして、耐えるようにしてください‼」


「ちょ……ちょっと‼」


「さぁ、一気にレッツラゴー‼」


「はい‼」


 フィアットの声に合わせ、クリムはヘリコプターの後ろに回した風を爆発させた。とんでもない勢いにより、ヘリコプターは物凄く飛び始めた。


「おわああああああああああああああああ‼」


 突如発生したスピード感により、パイロットは慌てていたが、それでも操縦機具から手を離さなかった。逆に、フィアットは声を上げて楽しんでいた。


「やっほー! ジェットコースターみたーい!」


「楽しんでる場合じゃないのに……」


「だな」


 こんな状況の中、冷静であるシュウとリナサはこう言った。




 裏ギルド、野生の咆哮がハチェーズTVを占拠して数分が経過した。


「助けて……助けて……」


「こんな所で死にたくない……」


 人質にされた局員達は、周りにいる銃を持った男達に囲まれていた。局員達の声を聞いて苛立ったのか、団員の一人が上に向かって発砲した。


「泣きわめくんじゃねーぞ、うるせーよ‼」


「何だったら、今すぐぶっ殺してやろうか?」


 その言葉を聞き、局員達はさらに悲鳴を上げた。すると、金色のコートを羽織った大男が足音を立てながら、近付いてきた。


「ボス‼ お疲れ様です‼」


「見回りご苦労さん」


 ボスはこう言うと、人質を見回し、部下にこう言った。


「活きがいい人質はいないな」


「え? 何の事です?」


「そろそろショーの始まりだ。言ったはずだ、10分おきに人質を殺すと」


「ああ、そうでしたね」


「最初だからな……そうだ、やはり平の連中より、いきなり大物をぶっ殺した方がインパクトが大きいか」


 ボスはこう言うと、会長室へ向かった。


「な……何のようだ!?」


 団員達に囲まれている会長が、おどおどしながらボスにこう聞いた。ボスは口にくわえた煙草を近くの高級そうな机に押し付けて煙を消した後、会長の頭を掴んで廊下の外に出て行った。その後、ボスは人質に捕らえている局員達にこう言った。


「今から生放送を行う‼今すぐ準備をし、放送を全国に流すようにしろ‼従わなければ殺す‼」


 ボスの言葉を聞いた後、局員達は急いで生放送の準備を始めた。


「準備が出来ました」


「うむ」


 準備が終わったセットの前に立ち、ボスは放送を始めろと告げた。




 ハリアの村で情報を集めているジャックとラックは、急に流れたテレビの生放送に驚いていた。


「何だ?」


 ジャックがテレビを見ると、映像には会長の頭を掴んだ野生の咆哮のボスが映っていた。


『テレビのご覧の皆様。俺は今現在、ハチェーズTVを占拠している裏ギルド、野生の咆哮のボスのグルザークだ。今から約束通り人質の一人を殺す』


『止めろ‼ 助けてくれ‼』


 会長は暴れながらグルザークの手から離れようとしたが、掴む手は強く、離れることは出来なかった。


『うるせー爺だな。豚みたいに太って。体は立派だが、髪はそうでもないな』


 と、グルザークは会長のカツラを引っぺがした後、会長を地面に叩きつけた。


『た……助けて……』


『無理な相談だ。警察や国がさっさと金や仲間の解放をすれば助かったんだがな。恨むなら、そいつらを恨めよ』


 そう言って、手にした巨大な拳銃の銃口を、会長の頭に押し付けた。


『ヒイイイイイイイイイイイイイイイイイ‼』


『ゴルフで玉を打つのが好きらしいが、こいつで弾を撃たれるのは初めてのようだな。最初で最後だ、よーく感じな‼』


 その後、大きな発砲音と共に、カメラに血が飛び散ったのか、画面が赤くなった。


「野郎……マジでやりやがった……」


「こいつら……狂ってます……」


 生放送で流れた惨劇を見て、二人は言葉を失っていた。




 ギナはそわそわしながらギルドの戦士達が来るのを待った。携帯を見て情報を得ているが、彼はそこで会長の死を知った。


「そんな……」


 絶望していると、人々の声が聞こえた。その声の先には、シュウ達ギルドの戦士の姿があった。


「遅れてすみません」


「今到着しました‼」


「悪人たちをさくっとやっつけるから‼」


「その前に、何が起きているか教えてください」


 ギナはシュウ達の姿を見て、涙を流し始めた。

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