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有名資産家からの依頼

 ある休日の日、バカップルは外で日向ぼっこをしていた。


「いやー、いい天気ですねー」


「ああ。こうしていると、時間が経つのを忘れるな」


 互いに抱きながらこう話していると、突如影が現れた。


「おーい、依頼だぞバカップルー」


 ティラが笑いながら、近付いてきたのだ。雰囲気を壊されて、少し不機嫌なクリムは頬を膨らませながら廊下を歩いていた。


「ったく、イチャイチャすんだったらいつでもできるだろうが。それに、依頼は明日からだよ」


「で? 何ですかその依頼って?」


「資産家、モリスからの依頼だ」


「あのモリスからですか?」


 この話を聞き、シュウは声を出して驚いた。モリスはそれなりに有名な金持ちの資産家で、たまにテレビに出演している。シュウの資産家に対するイメージは強欲でいつも葉巻を加え、下品な笑い声をあげているというイメージだったが、モリスは上品で言葉遣いも正しく、人として品のある人物に見えていた。


「どんな依頼ですか?」


「三十年前に沈んだララバイソングっつー船を見つけたから、それを調べてほしいってさ」


「ララバイソングですか……」


「ま、明日になったらこっちに来て詳しい事を説明するだろ。とにかく依頼があるってことを頭に入れておけよ」


 と言って、ティラは去って行った。その後、バカップルは村の図書館へ行き、ララバイソングについて調べていた。


「聞いたことがあるのか、そのララバイソングって」


「チュエールで賢者修行をしていた時、歴史の勉強で少し学びました。ララバイソングは三十年前に嵐に遭遇して沈没し、中にいた人達が皆行方不明になっています」


「そんな船を何で……」


「それは分かりません。もしかしたら、その中に何かがあるかもしれません」


 その後、バカップルはララバイソングについて調べ始めたが、特にめぼしい情報はなかった。


「何もありませんでしたね……」


「だな。だけど、俺自身あまりこの事件について知らなかったから、改めて知る事が出来たよ」


「そうですか。それならよかったです。私の行動が無駄にならなくてよかった」


「大丈夫だよ、お前の行動は全部無駄じゃないから」


「せんぱーい」


 その後、図書館内で抱き合うバカップルを見て、呆れた役員がこう言った。


「イチャイチャするのはよそでやってもらいませんかねぇ?」




 翌日、カウンターにはシュウとクリムとティラ、そしてラックが立っていた。


「ラックも来るんだな」


「ティラさんに誘われだんだ」


「一緒に頑張りましょう」


 そんな話をしていると、ティラは三人にモリスが来たと合図をした。しばらくすると、一台の高級車がギルドの前に停車し、中からスーツ姿の男性が現れた。その顔を見て、シュウはこの人がモリスだと察した。


「初めまして、私が依頼人のモリスです」


「私はティラ。で、こっちが魔法剣士のラックで、このバカップルが今有名なシュウとクリム」


「師匠、何ですかその紹介の仕方は?」


「本当だから仕方ねーじゃん」


「ま……まぁ詳しい話は車の中でしましょう」


 その後、車に乗り込んだシュウ達は、中でモリスの話を聞いていた。


「ご存知かと思いますが、今から三十年前、ララバイソングという船が嵐に遭遇して沈没してしまいました」


「それとあなたにどんな関係が?」


 クリムがこう尋ねると、モリスは咳ばらいをしてこう言った。


「あの船の中には私の友人が乗っていたんです。生きて帰ると約束したのに……」


 そう言うと、涙を流し始めたのか、嗚咽し始めた。


「失礼。彼の遺品を手にするため、これまでララバイソングを探してきました。それがこの前、やっと見つけたのです」


「だけど、今は海のモンスターの住処になってるのか?」


 ティラの言葉を聞き、モリスははいと返事をした。


「船を引き上げようとしたのものの、中にいるモンスターによって妨害され、失敗してしまいます」


「今回の依頼は、そのモンスター退治ですね」


 ラックがこう言うと、シュウはそうだなと呟いた。


「すみません、こんな難しい依頼を皆様にしてしまって……」


「大丈夫です。私達に任せてください」


 クリムは笑顔でモリスにこう言った。その笑顔を見て、モリスは少し心が和らいだ。




 二時間後、シュウ達は沈没したララバイソングがあるとされるファネル海近くに来ていた。だが、そこにはすでに何人かのダイバーがいた。


「なんか変な人たちがいるけど」


「沈没したララバイソングの宝を狙ってる連中ですね」


「それと、話題作りの為に動画のネタにしてる奴」


 シュウの視線の先には、変な格好で変なテンションの男がいた。手にカメラを持っているため、シュウはそう思ったのだ。


「まーったく、馬鹿が海を舐めやがって。死んでも知らねーぞっと」


 ティラは欠伸をしながらこう言った。酒を飲もうとしているのだが、シュウがその手を阻んだ。


「師匠、今から海に潜るんですから、酒を飲むとか止めてください」


「大変な事になっても知りませんよ」


 と、マジな顔をしたバカップルを見て、ティラは渋々酒を諦めた。


「皆様のダイバースーツは私達の方で用意してあります。それと、海中用の武器と装備もありますので、そちらをお使いください」


「ありがとうございます。何から何まで」


「いいえ、私達にできることをやったまでです」


 その後、シュウ達はダイバースーツに着替えるため、更衣室へ向かった。

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