希少な薬草
「結構楽な依頼でしたね」
「まぁ、畑を守るだけだったし」
バカップルが会話をしながらギルドに帰ってきた。バカップルは、畑の近くで発生した害虫とモンスターを倒してほしいという依頼を受け、すぐに終わらせてきたのだ。
「私の魔法で作った特製虫よけ対策があれば、当分虫は畑に近付けません」
「流石クリム。ほんと、魔法の天才だよ」
「もっと撫でてくださ~い」
頭をシュウになでられて上機嫌なクリムは、カウンターで見知らぬ男性とともにいるシュガーを見つけた。
「シュガーさんだ」
「で、誰と話してるんだ?」
「知り合いじゃないんですか?」
「ああ。知った顔じゃない」
その後、シュガーと話している人物が気になったバカップルは、シュガーに近付いた。バカップルに気付いたシュガーは、急いで駆け付けた。
「探してたんだよ~。ちょっと難しい依頼が入ったから助けに来てほしいの」
「急な依頼か。大丈夫だよ」
「どんな依頼なんですか?」
「それは私が話そう」
と、見知らぬ男性がバカップルに近付いて会釈をし、こう言った。
「私の名はサイナ。薬草に関しての仕事をしている」
「サイナ……サイナ・タブラリですね」
「おお、賢者であるあなたに名前を覚えられているとは、とても光栄です」
ここまで話で聞いていたのだが、シュウには全くわからなかった。
「で……どんな人なんだ? 何か有名みたいだけど」
「薬草に関して滅茶苦茶詳しい人だよ。薬草の図鑑や本もたくさん出してるの。私もこの人の本を参考に薬を作ったりしてるんだよ」
「へー、その手の世界じゃ有名人なんだ」
シュウは感心しながら、サイナを見ていた。
「話がそれたね。サイナさんからの依頼は、ハリアの村近くにある希少な薬草を採ってきてほしいんだって」
「薬草採集ですか。で、どのあたりにあるか分かりますか?」
クリムがこう聞くと、サイナは地図を広げてシュウ達に見せながら、説明をした。
「私が探しているシロドク草はこの山の頂上付近にあります。ただ、ある場所が崖の近くになり、とても危険な場所です」
「それで、最近ちょっと大きな鳥型のモンスターがいるって話だし、今は滅茶苦茶危険なんだよ。だから私達に依頼をしてきたんだよ」
説明を終え、シュウはクリムの方を見て、すぐに答えを出した。
「よし、俺達もその依頼を受けるよ」
それから数分後、シュウ達は依頼場所となる近くの山に来ていた。依頼に参加しているメンバーは、シュウとクリム、シュガーだけだ。
「ごめんね、依頼が終わってすぐに新しい依頼を頼んじゃって」
「気にしなくていいよ」
「たいして疲れてませんので」
「そう? ならいいけど」
そんな会話をしながら、三人は山を登っていた。しばらく歩いていると、突如大きな影が三人の上を通り過ぎた。
「……まさかあれが例のモンスターかな?」
「かもしれませんね。鳥獣で、かなりでかいと話を聞きました」
「頂上に行くまでに遭遇しないといいけど」
「だな。戦ってる最中に希少な薬草が灰になったら大変だ」
会話を終え、三人は急いで頂上へ向かって行った。
頂上へ向かう中、いろんなモンスターがシュウ達に襲い掛かった。が、どれもこれもシュウ達の猛者的オーラを感じ、すぐに逃げてしまった。
「喧嘩を売ろうとしたら、私達の強さを察して逃げる奴が多いですね」
「それだけ俺達が強くなったかもな」
シュウは思った。これまでいろんな依頼をこなしてきた。そのせいで、いつの間にか自分達がレベルアップしているのだと。
その後、シュウ達は頂上にたどり着く事が出来た。
「あのモンスターに遭遇しなくてよかったな」
「はい。さて、あの薬草を探しましょう」
話をして、三人は崖の方へ向かい、ロープを使って降りて行った。
「この辺って言ってたよな?」
「そうだよ。私の記憶だと、この辺りに薬草があるから、その中にシロドク草があるかも」
「混じってるんですね。探すのに苦労しますか?」
「多分ね」
その時だった。突如鳥のような鳴き声が響き渡ったのだ。
「チッ、やな時に会っちまったな……」
シュウは銃を持ち、シュガーに先に行くように伝えた。クリムは魔力を使って空を飛び始め、周囲を見回した。
「来ますよ、先輩‼」
「クリム、俺の所に来てくれ」
話を聞き、クリムはすぐにシュウの近くへ戻ってきた。それと同時に、巨大な鳥型モンスターが姿を現した。
「うわー、クチデカクルーだ」
シュガーがモンスターを見て呟いた。クチデカクルーは鳥のモンスターの一種。小さい物から巨大な物まで存在する。小さい物だと大した戦闘力はないが、巨大な物になると口から火を吐いたり、頑丈な爪やくちばしで獲物を攻撃するという獰猛なモンスターだ。しかし、動きがワンパターンですぐにわかりやすいから、よくモンスター狩りの対象にされている。一応鳥なので、こいつの肉も調理すれば食べられる。
相手は大したことのない巨大モンスター。しかし、シュウの体はロープでつながっている。銃を使おうにもうまく使えないのだ。ここは私がやるしかない。クリムは魔力を開放し、すぐに戦えるように備えた。




