バカップルの休日
物騒な仕事を請け負っていることが多いギルドでも、一応休みが決まっている。ただ、戦士ごとに休む日は変わっている。平たく言えば、一週間のうちに二日か三日休むように言われている。ただし、依頼が長く続いた時は終わった翌日から上から言われた日数を休まなければならない。
もちろん、エイトガーディアン達もシュウ達戦士も休む日というのがある。今回は、バカップルの休みの一日をお送りします。
朝。シュウは携帯のアラームで目が覚めた。胸付近で抱き着いて寝ているクリムも、同じ音で目が覚めた。
「……アラーム……消すの忘れてた」
「ですね……」
シュウはアラームを消した後、クリムと共に二度寝した。この日、ユリバナ高等女学院での誘拐事件が終わり、いろいろと資料を書いた後の翌日である。その分疲れがたまっているので、バカップルはやけに眠たそうなのだ。
それから2時間後、クリムが先に目を覚ました。
「もう8時ですか……」
そう呟くと、すやすやと寝息を立てているシュウの顔を見つめた。
「ふふ……寝ている時の先輩って……案外子供っぽくてかわいいんですよね」
その時、シュウが寝返りをしてクリムに抱き着いた。
「せんぱ~い、寝相が悪いですよ~」
小声でこう言っているが、クリム自身もシュウに抱き着いている。その時、シュウが目を覚ました。
「あり? 先に起きてたのか……」
「はい。おはようございます」
その後、二人はおはようのキスをし、欠伸をして起き上がった。身支度を整えて朝食を食べにキッチンへ向かった。
「あら、今日はお休みかい?」
「はい。昨日まで依頼が続いていたので」
「昨日は資料をまとめてただけなんですけど」
「そうかいそうかい。お疲れさん」
キッチンのシェフと会話をしながら、バカップルは同じ献立を選んだ。テーブルに座り、互いに食べさせ合いをしながら、テレビのニュースを見ていた。
「あ、ユリバナ高等女学院の事が流れてますよ」
「ほんとだ」
テレビには、ユリバナ高等女学院の誘拐事件を解決したニュースが流れていた。その映像には連行されるリセットワールドの連中と、連中を連行しているシュウ達の姿もあった。
「俺達の姿も写ってるよ」
「ちょっと恥ずかしいですね。何回かテレビに映った事がありますが、こればかりはどうも……」
その後、朝食を食べ終えたバカップルは部屋に戻り、朝の支度を再開した。
着替えが終わった後、シュウは外を見ながらこう言った。
「たまには村の市場でも行くか?」
「はい‼ 今日はデートですね」
話を聞いたクリムは、ルンルン気分でおしゃれ着を用意した。
ハリアの村は観光名物となるような物はないが、別荘地が近いせいでそれなりに人がいる。それと、森林浴に最適という話を聞いた観光客の為に、いろんな店が村にあるのだ。
「結構人がいますねー」
「丁度休日と重なったな」
混雑する人混みを見て、バカップルはこう会話をしていた。そんな中、バカップルに気付いた観光客の一部が騒ぎ始めた。
「おい、あれユリバナ高等女学院の誘拐事件を解決した戦士じゃないか?」
「あ‼ 最年少賢者のクリム様だ‼」
「きゃああああああああああああああああ‼ カッコイイ子がいるじゃない‼」
この騒ぎがあっという間に広がり、人々はバカップルを囲うように集まってしまった。
「今日はデートなの?」
「バカップルって聞いたけど、本当?」
「かっこいい、付き合って‼」
「あの……すいません……」
「今日はプライベートなので……」
と、人々から離れようとしたのだが、それでも人々はバカップルから離れなかった。
「はぁ……ちょっとした有名人になったな」
「そうですねぇ。テレビの効果ってすごい」
人々にもみくちゃにされながら、バカップルはこう会話をしていた。
その後、バカップルはよく行くカフェとか店に行こうとしたのだが、どこへ行っても人々が集まってしまうため、休むどころではなくなってしまった。
「はぁ~、今日は疲れたな……」
「何もない村だと思ってましたが……別荘地や森を見る人で混雑するってことを忘れてました」
大きなため息を吐くバカップルの前に、誰かが現れた。
「あれ? 何をしてるの~?」
「シュガー、お前も休みだったのか?」
前に現れたのは買い物袋を持ったシュガーだった。袋の中には、何か液体が入った瓶や草が入っている。
「それ、何ですか?」
「この液体はけがの治療用、それと解毒剤に使える薬、あと強い下剤の素材になる薬草だよ」
「最初の二つはいいとして、最後のは何に使うんですか?」
クリムの質問を聞き、シュガーは悪い笑顔を見せながら答えた。
「尋問に使うんだよ」
「お前、一番最悪な尋問を考えたな」
「悪人には基本容赦しないから~」
少しは情けを持ちましょうよと言おうとしたクリムだったが、誘拐事件の時に自分達が行った取り調べを思い出し、言うのを止めた。
「帰るタイミングが一緒になったね。お邪魔じゃなかったら一緒に帰ろ」
シュガーにこう言われ、バカップルは互いの顔を見合わせてこう言った。
「ああ」
「はい。よろこんで」
その後、シュガーを含めて話をしながらバカップルはギルドへ戻って行った。
以上、バカップルのある休みの一日でした。




