アジトへ殴り込み‼
ギルドでの取り調べ……というか、拷問に近い事をやって情報を聞き出したバカップルは、アジトの場所をタルト達に伝えていた。
「そうか、分かった。乗り込むのは明日にしよう」
『了解。俺とクリムは先にホテルに戻って準備をしてるから』
「ああ。私達も学生達が全員戻り次第ホテルに戻る。じゃ、またホテルで会おう」
会話を終え、タルトはアジトが見つかったことをキャニーとフィアットに伝えた。
「さて、この事件を終わらす時が来たわね」
「腕が鳴るー‼」
やる気満々の二人だったが、タルトは少し落ち着くように伝えた。
同時刻、電話を終えたシュウはクリムの方を向き、準備をしようと言った。その後、シュウは拳銃の整備、クリムは杖の用意と魔力切れになった時に仕える非常食の支度をしていた。
「先輩、準備はどうですか?」
「ああ。ばっちりだ」
シュウは整備を終えた拳銃を手にし、リロードの動きや引き金の硬さなどをチェックしていた。
「うん。いつでも戦える」
「私もオッケーです。明日は暴れますよ~。でもその前に……久しぶりに先輩とシャワーを浴びたいです~」
真面目なことを言っていたクリムだったが、途中で猫を被ったかのようにシュウに抱き着いてきた。
「そうだな。かれこれ三日は一緒に入ってないから、今日は一緒に入ろうな」
「は~い」
その後、このバカップル共は一足先にシャワーを浴びに向かった。
その数分後、キャニーとフィアットが部屋に戻ってきた。
「あ、シュウ君、ここで支度をしていたのね」
キャニーは机の上に置かれている拳銃を見て、すぐにシュウの拳銃だと察した。それを手に取り、どれだけ整備されているかを見た。
「すごい……どの銃も念入りに整備されている。それに……」
キャニーはシュウのバックを見ると、そこには小さな工具箱が置かれていた。入っていたのは、どれもこれも拳銃の小さな部品だった。
「持ち運べるようにしているのね。流石だわ……」
そう呟いていたのだが、シャワー室を覗こうとしているフィアットを見て、呆れてこう言った。
「何スケベ爺みたいなことをやってるの?」
「見てよキャニー。あの二人、私達に気が付かないで熱くイチャイチャしてるよ~」
何やってんだか……心の中で呆れながら、キャニーは自分の銃の整備を始めた。しばらくすると、突如シャワー室から悲鳴が聞こえた。
「おっじゃま~‼ どっきり大成功‼」
「ちょっと、急に入らないでくださいよ‼」
「おわああああああああああああ‼ こっちを見ないで‼」
「お~、シュウ君って顔の割に立派なもん付いてるじゃ~ん。クリムちゃんも意外とナイスバディ」
「そんな事言わないでください、早く出てって‼」
クリムの怒声と共に、フィアットに何かが投げられた。その後、顔に赤い丸が付いたフィアットが顔を出した。
「いだだ~、桶投げられた~」
「当たり前でしょバカ。そんなことをしてる暇があったら準備しなさい」
溜息と共に、キャニーはこう言った。
その一方で、別室で戦いの準備をしているタルトは小さく呟いた。
「いちゃつくのは構わないけど……少しは私に構ってほしい」
翌日、シュウ達は団員に教えられたアジトの場所へたどり着いていた。
「……敵はいますね。魔力をいくつか感じます」
「ボスがいなくても、私達がここを制圧すれば何か動きがあるはずだ」
「よし、それじゃあ行きましょう」
会話を終え、シュウ達はアジトに乗り込んだ。アジトの場所は、小さな港。今は使われていないため、辺りには錆びだらけのコンテナや廃棄処分となったフォークリフトが乱雑に置かれていた。
物陰に隠れながら、シュウ達はアジトへ向かっていた。シュウが上を見上げると、アジトの天井付近に何かを見つけた。
「こんな所に隠しカメラがあるかっての」
そう呟き、シュウは銃を撃って隠しカメラを破壊しようとした。しかし、横にいたタルトがシュウを止めた。
「銃弾が無駄になる。ここは私がやろう」
そう言って、タルトは刀の刃に少量の魔力を込め、小さな刃を放った。すると、小さな刃は隠しカメラと天井をつなぐ支え棒を切断した。支えを失ったカメラは、そのまま地面に激突した。
「行こう」
「うん」
その後、シュウ達はタルトを先頭にし、先へ進んでいった。カメラが壊れたのに気が付いたのか、入ってすぐに団員達がシュウ達を見つけた。
「何だ貴様ら!?」
「まさか……ギルドの連中か!?」
「その通り‼」
すぐにクリムが魔力を開放し、水を凍らせて氷柱にし、それを団員に向けて放って行った。
「私達が来たっての、ばれてるみたいですね」
「上等‼ 私が蹴散らしてやんよ‼」
フィアットは気合を入れ、剣を出した。その直後、前から別の団員が銃を持って現れた。
「侵入者だ‼」
「数名やられている。気を付けろ‼」
と言っていたが、団員が銃を発砲する前に、フィアットは壁を走って団員の後ろに回っていた。
「な!?」
フィアットの動きに気付いて後ろを振り向いたのだが、すでに遅かった。フィアットはハンマーを装備して団員に攻撃をしていたのだ。
「おのれ‼」
別の団員がフィアットに銃口を向けたのだが、キャニーがその団員の足に向けて発砲し、体勢を崩した。
「ナイス援護‼」
キャニーに礼を言いながら、フィアットはその団員に強烈な一撃をお見舞いした。
団員達を倒した後、シュウ達はボスがいる部屋に向かって走り出した。




